送電の学習帳
目次
- 架空送電線路の構成部品
- 電線振動
- 異常電圧
- 誘導障害とコロナ
- 中性点接地方式
- 電線のたるみ
- 地中送電線路→配電の学習帳の「地中ケーブル」を参照
- 送電系統の構成
- 送電線路電圧降下と送電電力
- 短絡容量と低減対策
- 故障電流の検討
- 保護リレー 詳しくはこちら(別ページ)
- 供給支障確率の計算
- 安定度
- P-V曲線(ノーズカーブ)
- 簡易法による潮流計算
- 直流送電
架空送電線路の構成部品
- 電験3種過去問【2022年(後期)電力 問8】(架空送電線路の構成要素)
- 電験3種過去問【2020年電力 問6】(架空送電線路)
- 電験3種過去問【2019年電力 問9】(架空送電線の構成部品)
- 電験3種過去問【2017年電力 問9】(架空送電線と引込避雷器)
- 電験3種過去問【2013年電力 問8】(送電線路の構成要素)
電線
電線には鋼心アルミより線(ACSR:Alminum Conductor Steel Reinforced)が多く用いられる。鋼心アルミより線は、アルミ線を使用することで質量を小さくし、これによる強度の不足を、鋼心を用いることで補ったもの。
多導体・スペーサ
送電線において、1相に複数の電線をスペーサを用いて適度な間隔に配置したものを多導体と呼び、主に超高圧以上の送電線に用いる。多導体を用いることで、電線表面の電位の傾きが小さくなるので、コロナ開始電圧が高くなり、送電線のコロナ損失、雑音障害を抑制することができる。多導体は合計断面積が等しい単導体と比較すると、表皮効果が小さい。また、送電線のインダクタンスが減少するため、送電容量が増加し系統安定度の向上につながる。
スペーサは負荷電流による電磁吸引力や強風などによる電線相互の接近・衝突を防止したり、サブスパン振動対策として用いられる。
多導体送電の利点
超高圧送電に多く用いられる多導体送電線には、単導体送電線に比べて種々の利点がある。単導体送電線と合計断面積が等しい多導体送電線について、この多導体送電線の利点は以下。
- 電流容量
- 表皮効果が小さくなり、また放熱が良くなるので、熱的許容電流容量が増加する。
- 固有送電容量
- 送電線インダクタンスが減少し、また静電容量が増加するため、固有送電容量が増加する。
- コロナ放電
- 導体表面の電位傾度を減少できるので、ころな開始電圧が高くなり、コロナ損失、雑音障害を防止できる。
- 系統安定性
- 送電線インダクタンスが小さくなるので、同期安定度が向上する。
がいし
更に詳しく➡がいし(碍子)について
がいしは、電線を鉄塔などの支持物から絶縁して保持する装置。
送電用がいしの種類
三種ポイント➡懸垂がいしと長幹がいしの特徴をよく理解しておく
懸垂がいし
高電圧送電線では笠状の懸垂がいしが広く用いられ、絶縁強化を図るには、がいしを直列に連結する個数を増やす方法や、がいしの表面漏れ距離を長くする方法が用いられる。
耐汚損設計において、がいしの連結個数を決定する場合には、送電線路が通過する地域の汚損区分と電圧階級を加味する。
長幹がいし
懸垂がいしと異なり、棒状磁器の両端に連結用金具を取り付けた形状(棒状)の長幹がいしは、雨洗効果が高く、塩害に対し絶縁性が高い。
その他のがいし
表面漏れ距離の長い耐霧がいしや耐塩がいし等がある。
がいしの塩害対策
三種ポイント➡塩害と、それにより引き起こされる障害を理解しておく。塩害対策も把握しておく。
風雨などによって、がいし表面に塩分等の導電性物質が付着することを、がいしの塩害という。
がいしの塩害が発生した場合、がいしの絶縁が低下して漏れ電流の発生により、可聴雑音や電波障害が発生する場合があり、最悪の場合フラッシオーバが生じ、送電線故障を引き起こすことがある。
がいしの塩害対策として、以下が挙げられる。
- 塩害の少ない送電ルートの選定
- がいしの絶縁強化
- がいしの洗浄
- がいし表面へのはっ水性物質(シリコンコンパウンド)の塗布の採用
アークホーン
がいしの両端に設けられた金属電極をいい、雷サージによるフラッシオーバの際生じるアークを電極間に生じさせ、がいし破損を防止するものである。
架空地線に直撃雷があった場合、鉄塔の電位が上昇し、鉄塔から電線への逆フラッシオーバを起こすことがある。この時にアークホーンにフラッシオーバを誘導することで、がいしの絶縁破壊を防ぐことができる。
アーマロッド
電線の振動疲労防止やアークスポットによる電線溶断防止のため、クランプ付近の電線に同一材質の金属を巻き付けるものである。
電線が振動すると、支持点のクランプ取付け部付近で繰り返し応力を受けて素線切れを起こし、断線が発生する。これを防止するためにクランプ部にアーマロッドを巻きつけ、クランプ部の補強を行う。
ダンパ
電線が風の影響で振動したり、着雪の重みでねじれたりするのを防止するため、ダンパ(重り)を取り付ける。
トーショナルダンパ
トーショナルダンパは、ダンパの重りがねじれ(tortional)運動をすることによって、送電線に生じる微風振動を抑制するものである。
ねじれ防止ダンパ(カウンターウェイト)
ねじれ防止ダンパは、着雪防止が目的で電線に取り付けられ、難着雪リングと併用される。
電線に湿った雪が付着すると、電線の“より”に沿って雪が回転移動をしながら成長する。雪が全体に付着した電線は重みでねじれやすく、雪の回転成長を促すため、ねじれ防止ダンパで、電線のねれを防止する。難着雪リングは雪の回転移動を防止する。
着雪防止によって、ギャロッピングによる電線間の短絡事故などを防止することができる。
相間スペーサ
強風などによる電線相互の接近及び衝突を防止するため、電線相互の間隔を保持する器具として取り付けるものである。
スパイラルロッド
低騒音化や難着雪化のため、電線にらせん状のワイヤー(スパイラルロッド)を巻きつける。
架空地線
送電線への雷の直撃(直撃雷)を避けるために設置される裸電線を架空地線という。
架空地線は雷害に対し静電遮へい効果によって、誘電雷を防止させ、直撃雷防止の効果を得る。また、電線との電磁的結合によって電線上の進行波を減衰させ、通信線に対する電磁誘導障害をすくなくする効果もある。
架空地線の導電率が高いほど、遮へい角が小さいほど、塔脚の接地抵抗が低いほど、遮へい率が大きくなる。塔脚接地抵抗が高いときは埋設地線(カウンターポイズ)を施設する。
架空地線にはその内部に光ファイバケーブルを実装したもの(光ファイバ複合架空地線)もあり、各種情報伝送システムに利用されている。
埋設地線(カウンターポイズ)
塔脚の地下に放射状に埋設された接地線(地表面下数十cmのところに金属裸線数本を地表面に沿って数十mにわたり放射状などに広げて埋設し、塔脚に接続するもの)、あるいは、いくつかの鉄塔を地下で連結する接地線をいい、鉄塔の塔脚接地抵抗を小さくし、逆フラッシオーバを抑止する目的等のため取り付けるものである。
避雷器
発電所や変電所などの架空電線の引込口や引出口には避雷器が設置される。
避雷器は、雷、回路の開閉などに起因するサージ電圧がある値を超えたときに、サージ電圧を抑制して電力設備の絶縁破壊事故を防ぐものである。
避雷器は、過電圧サージに伴う電流のみを大地に放電させ、過電圧を抑制して、電気施設の絶縁を保護し、かつ、(サージ電流に続いて交流電流が大地に放電する)続流を短時間のうちに遮断して、系統の正常な状態を乱すことなく、現状に復帰する機能をもつ装置である。
避雷器は電力系統を地絡状態に陥れることなく過電圧の波高値をある抑制された電圧値に低減することができる。この抑制された電圧を避雷器の制限電圧という。
避雷器規格では、避雷器の保護性能を評価するために、8/20μsの雷インパルス電流が公称放電電流として定められている。この電流が流れるときの避雷器の両端子間に発生する電圧を制限電圧といい、値はその避雷器が保護する機器や設備の耐電圧レベルよりも低くなければならない。
酸化亜鉛形避雷器
避雷器には、非直線抵抗特性をもつ炭化けい素(SiC)素子や酸化亜鉛(ZnO)素子などが用いられるが、性能面で勝る酸化亜鉛素子を用いた酸化亜鉛形避雷器が、広く用いられている。避雷器に非直線の電圧ー電流特性を持つZnO素子を組み込むことで、サージ電圧抑制後の通常電圧による続流を遮断して系統をもとの状態に復帰させる。
酸化亜鉛形避雷器(ギャップレス避雷器)の特徴と、それによるメリットをまとめると以下。
- 直列ギャップがないため放電電圧ー時間特性に関係する課題がなく、機器絶縁に対する保護レベルが向上する。
- 微小電流から大電流サージ領域まで高い非直線抵抗特性を有することで過電圧を抑制することができる。
- 素子の単位体積当たりの処理エネルギーが大きいので、従来に比べ寸法の小型化と構造の簡素化が実現できる。
- 並列素子数を増加することにより、許容される吸収エネルギーの増加が図れ、サージに対する耐量が向上する。
- 無続流のため、多重雷などに対する動作責務に余裕があり温度上昇が少なく、機器の長寿命化が期待できる。
- 降雨等による汚損及び洗浄時の不均一電位分布などの問題がなく、局部アークの発生を抑制することができる。
一般に発変電所用避雷器で処理の対象となる過電圧サージは、雷過電圧と開閉過電圧である。避雷器で保護される機器の絶縁は、当該避雷器の制限電圧に耐えればよいこととなり、機器の絶縁強度設計のほか発変電所構内の機器配置なども経済的、合理的に決定することができる。このような考え方を絶縁協調という。
発変電所ではギャップレス避雷器を用いることが主流であるが、配電用や直流電気鉄道の電線路のがいし保護に用いられる避雷器では、万一ZnO素子が短絡状態になっても送電が可能なように、直列ギャップ付き避雷器も多く使用されている。
- 電験3種過去問【2017年電力 問9】(架空送電線と引込避雷器)
- 電験3種過去問【2015年電力 問7】(避雷器)
- 電験3種過去問【2011年電力 問10】(避雷器の役割)
- 電験2種過去問【2022年電力管理 問2】(ギャップレス避雷器の特徴と絶縁設計時の留意点)
- 電験2種過去問【2017年機械 問2】(電力用避雷器)
ギャップ付き送電用避雷装置
近年、抵抗接地系の送電線にギャップ付送電用避雷装置が広く設置されてきている。これは、落雷による送電線トリップを極力防止するために設置される。
この装置の作動メカニズムは、雷サージ過電圧の侵入時にギャップ付送電用避雷装置の気中ギャップがフラッシオーバして放電電流が流れた後、系統電圧による電流(続流)を避雷要素部の酸化亜鉛素子の特性により非常に小さく抑えて、ほとんど半サイクル以内に気中ギャップで消弧することにより、送電線トリップを防止するものである。
図1に示す酸化亜鉛型の避雷要素部と直列ギャップから構成される77kV用ギャップ付送電用避雷器装置のⒶとⒷが、図2の77kV送電線のⒶ:➀、Ⓑ:➁に接続される。その理由は質量のある避雷要素部を常時無課電で安定的に取り付けるためである。
送電線のねん架
架空送電線におけるねん架とは、送電線各相の作用インダクタンスと作用静電容量を平衡させるために行われるもので、ジャンパ線を用いて電線の配置を入れ替える。
電線振動
電線振動の原因と対策
電験3種過去問【2010年電力 問10】(架空電線の振動)
電験3種過去問【2015年電力 問8】(架空電線の振動)
電験3種過去問【2022年(前期)電力 問10】(架空送電線の振動)
微風振動
穏やかで一様な風(毎秒数m程度)が電線に直角に当たると、電線の風下側に空気のうず(カルマン渦)を生じ、これにより電線に揚力が生じ、上下振動が発生する。これを微風振動という。
電線の直径が大きい割に重量が小さいほど、径間が長いほど、電線の張力が大きいほど発生しやすい。
微風振動が続くと、電線は支持点のクランプ取付け部付近で繰り返し応力を受けて素線切れを起こし、断線が発生する。
対策として、振動を防止するためダンパを取り付けて振動エネルギーを吸収させることが効果的。この振動によって電線が断線しないようにクランプ部にアーマロッドを巻きつける。
サブスパン振動
サブスパンとは、複導体や多導体の1相内のスペーサとスペーサの間隔のことで、サブスパン振動とは、これら導体の固有振動数が共振して発生するもの。風速が数~20m/sで発生し、10m/sを超えると振動が激しくなる。
サブスパン振動対策としては、スペーサの位置等を工夫することが効果的である。
ギャロッピング
着氷雪などによって、電線の断面が円形でなくなった電線に水平風が当たると、電線に揚力が働き複雑な振動が生じる。これを、電線のギャロッピング現象という。単導体より多導体、また太い電線に発生しやすい。相間短絡などの事故をおこすことがある。
対策として、ダンパを取り付ける、相間スペーサを取り付ける方法などがある。難着雪のためスパイラルロッドを巻きつけるなど。
スリートジャンプ
氷雪付着による電線のたるみ増加や、氷雪脱落時の電線の跳ね上がり(スリートジャンプ)による混触や短絡を起こすことがある。
対策としては、電線の弾性のちいさいものを用いる、張力を大きくとる、支持物が長径間になることを避けるなどがある。場合によっては電線配置を水平方向へずらしオフセットを増すこともある。難着雪のためスパイラルロッドを巻きつけるなど。
異常電圧
送配電系統の運転中には、様々な原因で、公称電圧ごとに定められている最高電圧を超える異常電圧が現れる。このような異常電圧は過電圧と呼ばれる。過電圧の波形的特徴から、外部過電圧(雷)や開閉過電圧はサージ性過電圧と呼ばれ、一線地絡やフェランチ効果に伴う過電圧は短時間交流過電圧と呼ばれる。
外部過電圧
外部過電圧は主に自然雷に起因し、直撃雷、誘導雷、逆フラッシオーバに伴う過電圧などがある。このうち一般の配電線路で発生頻度が最も多いのは誘導雷に伴う過電圧である。外部過電圧は架空地線や避雷器といった避雷装置を用いて対策を行っている。
電力系統の過電圧には、雷撃により発生する雷過電圧、遮断器の開閉操作に伴い発生する開閉過電圧、一線地絡事故や負荷遮断により発生する短時間交流過電圧がある。
これら三つの過電圧を比べると、一般的に、過電圧の電圧値の大きさの関係は{短時間交流過電圧 < 開閉過電圧 < 雷過電圧}であり、過電圧の継続時間の長さの関係は{雷過電圧 < 開閉過電圧 < 短時間交流過電圧}である。
過電圧の発生を防止又は過電圧の大きさを抑制するために、以下の対策が行われている。
- 雷過電圧に対しては、避雷器や架空地線を設置する。
- 開閉過電圧に対しては、遮断器に抵抗投入・抵抗遮断方式を採用する。
- 短時間交流過電圧に対しては、分路リアクトルを設置して対地充電電流を補償する。
直撃雷
電線路に直接落雷すること。
誘導雷
直撃でなくても電線路の近くに落雷すれば、電磁誘導や静電誘導で雷サージが発生することがある。これを誘導雷と呼ぶ。
内部過電圧
内部過電圧の代表的なものとしては、遮断器や断路器の動作に伴って発生する開閉過電圧や、一線地絡時の健全相に現れる過電圧、さらにはフェランチ現象による過電圧などがある。
開閉過電圧
開閉過電圧は、遮断器や断路器などの開閉操作によって生じる過電圧である。
フェランチ効果
フェランチ効果とは受電端電圧の方が送電端電圧よりも高くなる現象である。
長距離線路や電力ケーブルなどの対地静電容量が比較的大きな線路で送電する場合、受電端が開放し無負荷、又は深夜の軽負荷時などに負荷電流が小さくなると、送電端の電圧より受電端の電圧が大きなる。この現象を、発見者の名をとってフェランチ効果という。この現象は、送電線のこう長が長いほど著しくなり、短距離送電線路よりも、長距離送電線路の方が発生しやすい。
フェランチ効果発生時の線路電流の位相は、電圧に対して進んでいるので、受電端に分路リアクトルなどの電力用リアクトルを接続し、線路に流れる電流を遅らせることにより抑制できる。
フェランチ効果による進み電流は、発電機の増磁作用による自己励磁現象を引き起こし、発電機の端子電圧を危険な電圧まで上昇させてしまうなどの弊害がある。
送電線路の再閉路方式
再閉路
架空送電線は特に距離が長く、事故発生件数も多い。送電線事故の大半は雷による1線地絡故障であり、落雷による気中フラッシオーバに起因する。事故区間を高速に遮断し、いったん系統から切り離すとアークは自然消滅して、フラッシオーバが消滅する。このとき絶縁は回復し、架空送電線は通電可能な状態となる。その後に送電を再開すれば、異常なく電力送電を継続できる場合が多い。このように、事故区間の遮断の後、一定時間(長くて1分程度)を経て、遮断器を投入する。これを再閉路という。送電線の再閉路は、この特性を利用して、故障送電線をできる限り速やかに自動復旧させて電力供給の安定性を損なわないようにしたものである。
再閉路方式には、故障相と無関係に三相を遮断し再閉路する三相再閉路、平行2回線送電線の故障時に故障相のみを遮断し少なくとも二相が健全の場合に再閉路する多相再閉路がある。
再閉路方式には時間の面から、無電圧時間を1秒程度以下とする高速度再閉路方式と1分程度の低速度再閉路方式がある。再閉路方式は、遮断器の性能や保護方式の故障検出性能とのシステム的な協調が重要であり、適用する送電系統に応じて最適な方式を選定する必要がある。
架空送電線の絶縁設計
架空送電線への雷撃に対しては、架空地線などの避雷対策を講ずるものの、フラッシオーバ事故を皆無にすることは事実上不可能である。架空送電線の絶縁設計においては、系統に発生する内部異常電圧によるフラッシオーバ事故を起こさないようにするのが標準的である。次の問に答えよ。
- 内部異常電圧とは何か、具体的な例を三つ挙げて説明せよ。また、それぞれの内部異常電圧の特徴と異常電圧の大きさを左右する要因について説明せよ。
内部異常電圧とは、外部より侵入する雷電圧(外雷又は外部異常電圧と呼ぶ。)と区別して、電力系統の内部的原因によって生じる異常電圧のことを意味し、開閉サージ、1線地絡時の健全相電圧上昇や負荷遮断時の異常電圧などがある。
開閉サージは、遮断器の開閉操作によって生じ、最大数ミリ秒程度継続する過渡的異常電圧である。開閉サージの大きさは、送電線のこう長や高さなどを送電線路の静電容量の大きさ、再閉路時の残留電圧の有無などにより左右される。
1線地絡時の健全相電圧上昇は、1線地絡事故時に健全相に発生する商用周波数の過電圧である。電圧の大きさは、中性点接地方式などによって左右される。
負荷遮断時の電圧上昇は、遮断器などで負荷遮断時に発生する商用周波数の過電圧である。電圧の大きさは、負荷遮断前の潮流、発電機の定数、送電線の静電容量などによって左右される。 - 154 kV 以下の電圧階級における磁気がいし一連個数の決定法について説明せよ。
がいし一連個数を決定する場合にも、内部異常電圧によってフラッシオーバが発生しないようにするという原則が有効である。154 kV 以下の電圧階級では、開閉サージ電圧波高値とがいし連の注水時の開閉サージ耐電圧特性及び持続性異常電圧実効値とがいいし連の注水時の商用周波数耐電圧特性の二つから所要連結個数を計算する。両者の計算結果を比較すると後者の絶縁裕度の方が大きく、がいし個数は通常全て開閉サージによって決まる。
実際には、保守用にがいしを通常1個多く設けることとして最終的な一連個数が決定される。また、臨海部などで塩害が甚だしい場合など、汚損条件下では耐圧特性が低下するので考慮が必要である。
近距離線路事故遮断(SLF)は、遮断器に近く、およそ数 [km] から 10 [km] 位までの範囲の距離で起こった線路事故(通常は1線地絡事故を対象)時の電流を遮断する現象である。
近距離線路故障電流遮断時には、電流遮断後の過渡回復電圧は端子短絡故障(BTF)に比べ低いが、開放状態にある遮断器線路側端子と地絡点との間の線路上で往復反射現象を起こすため、遮断器極間には電源電圧のほかに、この往復反射現象による三角波形の電圧が印加される。このようにして発生した過渡回復電圧の、特に初期の部分の立ち上がりが急峻であり、遮断器極間の絶縁回復速度との競合という面から見て、遮断条件は非常に厳しいものとなる。
開閉過電圧の抑制対策
500kV 送電線では、開閉過電圧が送電鉄塔の大きさを決める大きな要因である。この開閉過電圧を抑制するために、変電所の機器で採用している対策を述べる。
送電線に発生する開閉過電圧を抑制するため、500kV 変電所に設置される送電用の遮断器に、抵抗投入方式を採用している。投入抵抗値は 1 000 [Ω] が用いられ、開閉過電圧は 2 [p.u.] 以下に抑制されている。最近では、変電所の送電線回路に高性能避雷器を併用する場合も多く、より効果的に送電線に発生する開閉過電圧の抑制が行われている。
誘導障害とコロナ
誘導障害
送電線と通信線が接近交差している区間が長くなると、通信線に対して静電誘導あるいは電磁誘導などの誘導障害を及ぼすことがある。
誘導障害により通信線路に対して電圧が誘導され、通信設備やその取扱者に危害を及ぼすおそれがある。
- 架空送電線路の電圧によって、架空送電線路と通信線路間のキャパシタンスを介して通信線路に誘導電圧を発生させる静電誘導障害
- 架空送電線路の電流によって、架空送電線路と通信線路間の相互インダクタンスを介して通信線路に誘導電圧を発生させる電磁誘導障害
架空送電線路が十分にねん架されていれば、通常は、架空送電線路の電圧や電流によって通信線路に現れる誘導電圧はほぼ0Vとなる。
電磁誘導障害
電力線に流れる電流により、磁束が生じ、これにより通信線などに商用周波数の誘導電圧が生じる。電力線と通信線との相互インダクタンスM[H/m]によって生じる誘導障害を電磁誘導障害という。
地絡事故などにより生じる零相電流で生じるものを異常時電磁誘導電圧、電力線に流れる高調波電流により生じるものを誘導雑音電圧という。
電磁誘導は、送電線に過大な地絡故障電流が流れたときに、通信線に大きな電磁誘導電圧を生じ、通信線の作業員への危害や通信機器を破壊する障害を与える恐れがある。
例えば、一線地絡事故に伴う電磁誘導障害の場合、電源周波数をf[Hz]、地絡電流の大きさをI[A]、単位長さ当たりの架空送電線路と通信線路間の相互インダクタンスをM[H/m]、架空送電線路と通信線路との並行区間長をL[m]としたときに、通信線路に生じる異常時電磁誘導電圧の大きさは2πfMLI[V]で与えられる。
電磁誘導軽減対策としては下記などがある。
- 遮へい通信ケーブルを使用する
- 通信ケーブルの地中化
- 通信線の同軸ケーブル化や光ファイバ化
- 通信用アレスタの適用
- 電力線と通信線の間に導電率の大きい地線を布設
- 架空地線の低抵抗化による遮へい効果の向上
- 故障時間を短縮化することによる誘導障害影響の低減
- 中性点の接地抵抗を大きくして、地絡電流値を適切な値に抑制する
静電誘導障害
送電線の近傍に導体があると、送電線と導体間の静電結合により、導体には静電誘導電圧が生じる。電力線と導体間の静電容量によって生じる誘導障害を静電誘導障害という。
静電誘導は送電線と通信線の相互の位置によって定まるため、送電線のねん架が不十分のときは常時においても通信線に静電誘導電圧が生じ通信障害となる。
静電誘導を低減するための対策としては、送電線地上高の増加や、遮へい設備の施設、2回線垂直配列の送電線では逆相配列の採用が行われる。
静電誘導軽減対策としては、送電線下の電界強度を下げるため以下がある。(送電線下の地上1mの電界強度は30V/cmと定められている)
- 鉄塔を高くして送電線の地上高を高くする
- 送電線の下に、接地された遮へい線を張る
- 2回線送電ではたがいを逆相配置とする
- 通信線の同軸ケーブル化や光ファイバ化
コロナ
コロナとは部分放電現象であり、送電電圧を高くすると送電線表面の電界強度がある限度を超えると、導体周囲の大気をイオン化させ、音や青色の光を放つ放電である。イオン化された大気には生成された空間電荷が異動を繰り返すことで、磁界及び電界を形成する。これらは、短時間に進展と消滅を繰り返し、流れる電流はパルス的になる。送電線にコロナが発生すると、
- コロナ損や電線のオーム損の電力損失を生じる
- 送電線に流れるパルス電流により、線路近傍のラジオやテレビに受信障害を与え、これをコロナ雑音と呼ぶ
- 放電により可聴音であるコロナ雑音が生じ、特に降雨時に多く発生する
コロナ軽減対策
多導体方式では、同符号の電荷が複数の導体に分散することで、電線周囲の電界強度が単導体よりも低くなり、単導体と同一断面積とすると、電線の実効的な直径が大きくなり、コロナ損が減少する。電界強度が低くなることから、コロナ開始電圧が高くとれるほか、送電容量が大きくできるなどの理由によりコロナ対策として多導体方式が採用される。
線間距離を大きくするなどの対策もとられている。コロナ放電は、雨の日や、気圧が低くなるほど起こりやすい。
- 電験3種過去問【2023年(前期)電力 問9】(コロナ損に関する記述)
- 電験3種過去問【2019年電力 問10】(コロナ損に関する記述)
- 電験3種過去問【2014年電力 問9】(送電線路のコロナ放電)
中性点接地方式
電線の1線地絡時、健全相に現れる過電圧の大きさは、地絡場所や系統の中性点接地方式に依存する。直接接地方式の場合、非接地方式と比較すると健全相の電圧上昇倍率が低く、地絡電流は大きくなる。
電力系統に1線地絡故障のような不平衡故障が起こると変圧器や回転機の三相巻線のY結線の中性点接地を経由して大地を帰路とする地絡電流が流れる。中性点と大地との接地インピーダンスを小さくすると、地絡電流を検出する保護リレーの動作が確実となり、健全相の電位上昇を抑えることができて、機器の絶縁レベルを軽減できる。その反面、近辺での通信線路に発生する電磁誘導電圧が大きくなる。
一方で、接地インピーダンスを大きくすると、1線地絡故障の場合には、健全相の対地電圧は相電圧の\( \displaystyle \sqrt3\)倍まで上昇するとともに、長距離線路では対地静電容量が大きいために間欠アーク地絡が発生して機器の絶縁を脅かす過渡的異常電圧が生じることがある。
- 中性点接地の主たる目的は以下
➀地絡事故が発生したときに健全相の電圧上昇を抑制する。
➁地絡事故が発生したときに保護リレーを確実に動作させる。
➂地絡事故時の事故電流を抑制して電磁誘導障害を軽減する。
➃鉄共振・アーク間欠地絡などの不安定現象を抑制する。
非接地方式
33kV以下の高圧配電系統に適用される。
1線地絡時、健全相に高い電圧が現れるため、高電圧、長距離送電には不向き。
一線地絡事故が発生したときは事故電流がほとんど流れないため、線間電圧は事故の影響を受けない。このため、事故相が大地電圧となり中性点電圧が事故相の分上昇し、健全相の相電圧は線間電圧がそのまま反映されることになる。すなわち、事故後の健全相の相電圧は電源電圧が対象三相の場合は事故前の√3倍となるが、更に大きな電圧が発生する場合もある。
一線地絡事故が発生した場合、中性点に電流が流れないため、事故電流は健全相と対地間の浮遊容量を介して流れる小さな電流となる。一線地絡事故が発生したときは事故電流が小さく、通常の運用電流以下であるため、過電流リレーや方向距離リレーによる事故検出は不可能であり、地絡過電圧リレー、地絡方向リレーにより検出される。
一線地絡事故が発生したときは大地帰路電流が小さいため、他の通信線などへの誘導障害はほとんど起こらない。
配電の学習帳にも非接地方式の解説あります。
抵抗接地方式
154kVの送電系統に適用される。
抵抗接地系統では事故点までの線路、中性点接地抵抗、事故点抵抗による閉回路が構成されるため、大きな電流が流れる。接地電流検出は過電流リレーや方向距離リレーを含む各種のリレーが機能する。
一線地絡事故が発生したときは、中性点の電圧上昇は事故電流と中性点接地抵抗の積によって与えられる値となるため、健全相の相電圧上昇は、接地抵抗値を小さくすることで抑えられる。
一線地絡事故が発生したときは、大きな事故電流が大地帰路電流として流れるため、誘導障害が発生する可能性がある。
直接接地方式
1線地絡時、大きな地絡電流が流れるため、通信線への電磁誘導障害の影響が最も大きい。一方で健全相の対地電圧の上昇は少ない。電圧及び送電線地上高が高く、市街地を通ることも少ない基幹送電系統に採用される。
消弧リアクトル接地方式
線路を遮断せず、そのまま電力の供給を続けることができる。
1線地絡時に故障点から大地を通って、対地静電容量に流れ込む電流を打ち消すようなインダクタンスをもつ消弧リアクトルを中性点に設置し並列共振回路とすることで、地絡故障時のアークを早期に消弧し、送電の継続を可能とする。
抵抗接地方式について、直接接地方式と比較した場合の長所、短所
(長所)
- 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ、地絡故障時の電流が小さいため、通信線に対する電磁誘導障害が少ない。
- 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ、地絡故障時の電流が小さいため、機器や故障点に与える機械的ショックが小さい。
- 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ、地絡故障時の過渡安定度が大きい。
(短所)
- 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ、地絡時の健全相の電圧上昇が大きく線路や機器の絶縁レベルを高くとる必要がある(低減できない)。
- 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ、接地機器の価格が高い。
- 抵抗接地方式は事故時の地絡電流を抑制するので、地絡リレーの事故検出機能は直接接地方式に比べ低い。
- 電験2種過去問【2023年電力管理 問5】(中性点接地方式の特徴)
- 電験2種過去問【2021年電力 問4】(中性点接地方式の特徴)
- 電験2種過去問【2018年電力管理 問6】(送配電系統の中性点接地方式)
- 電験2種過去問【2011年電力管理 問2】(中性点接地方式の特徴)
架空送電線の電線の太さ
電線のたるみと実長の計算
電線のたるみD[m]と実長L[m]は次式で求められる。ここで、電線の径間S[m]、電線の水平張力T[N]、電線1mあたりの自重W[N/m]。
\(\displaystyle D=\frac{WS^2}{8T}\)
\(\displaystyle L=S+\frac{8D^2}{3S}\)
電線の実長L[m]のとき、温度変化による電線長L’[m]は、1[℃]あたりの線膨張係数をα、温度差をt[℃]とすると
\(\displaystyle L’=L(1+αt)\)
- 電験3種過去問【2021年電力 問16】(架空送電線の温度変化による実長と水平張力)
- 電験3種過去問【2017年電力 問8】(架空電線の張力計算)
- 電験3種過去問【2012年電力 問13】(送電線のたるみ計算)
電柱支線にかかる張力
電線の電柱を支える支線にかかる張力は、電線の張力のベクトル和を支えるものとなる。
- 電験3種過去問【2021年法規 問11】(架空電線の支線の引張強さと素線条数の計算)
- 電験3種過去問【2019年電力 問13】(電柱支線の張力計算)
- 電験3種過去問【2013年電力 問9】(架線支線の張力計算)
地中送電線路
配電の学習帳の「地中ケーブル」を参照
送電系統の構成
送電系統の構成は、ループ系統と放射状系統に大別される。それぞれの特徴を、(1)安定度及び電圧安定性、(2)信頼度、(3)潮流運用、(4)短絡電流の観点から対比する。
(1)安定度及び電圧安定性
ループ系統では、
・送電ルートが複数あるため、安定度、電圧安定性が高く、送電可能電力(送電能力)が大きい。
放射状系統では、
・送電ルートが一つしかないため、安定度、電圧安定性はループ系統ほど高くなく、送電可能電力(送電能力)も大きくない。
(2)信頼度
ループ系統では、
・片方のルートが使えなくなっても、残りのルートで送電でき、信頼度が高い。
・保護システムが適切でないと、事故が系統全体に波及し、広域停電に至る可能性がある。
放射状系統では、
・ルート断により下位系統への送電が完全にできなくなるので、ループ系統ほど信頼度は高くない。
・回線数を増やすことでルート断を防ぐ、あるいは、構成上はループ系統とし、常時運用は放射状系統で事故時に系統切換えを行うことで、信頼度低下を抑えることができる。
・事故が系統全体に波及することはない。
(3)潮流運用
ループ系統では、
・ループ間の潮流を制御することが難しい。
・片方のループが使えなくなったとき、潮流分布が大きく変化する。
放射状系統では、
・潮流制御の必要がない。
・事故時を含み、潮流状況の把握が容易である。
(4)短絡電流
ループ系統では、
・短絡電流が大きくなりやすく、上位定格の遮断器の採用、あるいは、高インピーダンス機器、限流リアクトルなどの採用、上位電圧、母線分割の採用による系統分割などの抑制策が必要となることがある。
放射状系統では、
・短絡電流はループ系統ほど大きくならない。
送電線路電圧降下近似値と送電電力
送電線路の電圧降下
実際の送電線の電圧降下は、線路上に負荷が分散しており複雑であるが、簡単のため線路末端に負荷が集中しているものとして考える。
交流三相3線式1回線の送電線路があり、受電端に遅れ力率\(\theta\)[rad]の負荷が接続されている。送電端の線間電圧を\(V_s\)[V]、受電端の線間電圧を\(V_r\)[V]、その間の位相差角は\(\delta\)[rad]であるとする。
1相分の送電端相電圧を\(E_s\)[V]、受電端相電圧を\(E_r\)[V]とし、線路の抵抗とリアクタンスをそれぞれr,xとする。送電線路に電流I[A]が流れたとき、ベクトル図は下のようになる。
ベクトル図より、
\(E_s=E_r+rI\cos\theta+xI\sin\theta+j(xI\cos \theta-rI\sin\theta)\)[V]
一般的に、δは小さいので、上式の虚数部を無視でき、次式が得られる。
\(E_s=E_r+rI\cos\theta+xI\sin\theta\)
\(=E_r+I(r\cos\theta+x\sin\theta)\)
\(=E_r+IZ\)[V]
ここで、\(\displaystyle Z=r\cos\theta+x\sin\theta\) [Ω]を電圧降下等価抵抗と呼ぶ。
\(\displaystyle E_s-E_r=rI\cos\theta+xI\sin\theta\)
\(\displaystyle E_s-E_r=\frac{rP}{3E_r}+\frac{xQ}{3E_r}\)
\(\displaystyle V_s-V_r=\frac{rP}{V_r}+\frac{xQ}{V_r}\)
四端子定数
線路定数が対称であるとき、\(\dot{A}\dot{D}-\dot{B}\dot{C}=1\)であり、以下が成り立つ
T形等価回路
\(\dot{A}=1+\frac{\dot{Z}\dot{Y}}{2}\),\(\dot{B}=Z(1+\frac{\dot{Z}\dot{Y}}{4})\),\(\dot{C}=\dot{Y}\),\(\dot{D}=1+\frac{\dot{Z}\dot{Y}}{2}\)
π形等価回路
\(\dot{A}=1+\frac{\dot{Z}\dot{Y}}{2}\),\(\dot{B}=\dot{Z}\),\(\dot{C}=Y(1+\frac{\dot{Z}\dot{Y}}{4})\),\(\dot{D}=1+\frac{\dot{Z}\dot{Y}}{2}\)
- 電験1種過去問【2022年電力管理 問2】(四端子定数を用いたフェランチ効果の検討、π形等価回路)
- 電験1種過去問【2016年電力管理 問2】(四端子定数、T形等価回路、送電端から供給される無効電力)
- 電験1種過去問【2013年電力管理 問4】(π形等価回路、調相設備容量計算)
送電線路の送電電力計算
上記と同様に、1相分の送電端相電圧を\(E_s\)[V]、受電端相電圧を\(E_r\)[V]とし、線路の抵抗は無視し、リアクタンスxのみとする。送電線路に電流I[A]が流れたとき、ベクトル図は下のようになる。
1相分の有効電力\(P_r\)[W]は
\(P_r=3E_rIcos\theta\)[W]
ベクトル図より、\(E_s\sin\delta=xI\cos\theta\)であるので、
\(\displaystyle P_r=\frac{3E_rE_s}{x}\sin\delta\)[W]
ここで、送電端線間電圧を\(V_s\)[V]、受電端線間電圧を\(V_r\)[V]とすると
\(V_s=\sqrt3E_s\),\(V_r=\sqrt3E_r\)であるので、三相有効電力\(P\)[W]は
\(\displaystyle P=\frac{V_rV_s}{x}\sin\delta\)[W]
- 電験1種過去問【2020年電力管理 問2】(送電線の送電電力計算、抵抗とリアクタンス)
- 電験1種過去問【2019年電力管理 問4】(送電系統の送電電力と電圧計算)
- 電験1種過去問【2018年電力管理 問5】(受電端電圧計算、三相短絡時受電端電圧計算)
- 電験1種過去問【2010年電力管理 問6】(系統末端電圧と負荷無効電力計算)
- 電験1種過去問【2009年電力管理 問5】(発電所の連系、連系点電圧の導出、力率による影響)
送電容量
送電線路により送電できる有効電力の最大値(本問題では「送電容量」という)は様々な制約を考慮して定められているが、それぞれの制約によって、送電容量を増加させるための対策は異なる。
電線温度の制約で定まる送電容量を増加させる方法としては、断面積が大きい電線や耐熱性の高い電線を用いることで、電線の許容電流を大きくする方法がある。
送電線路に多導体を採用すると、断面積の合計値が同一である単導体の送電線路に比べ、送電線路のリアクタンスが減少することから、過渡安定性、定態安定性(小じょう乱同期安定性)、電圧安定性の制約から定まる送電容量も増加する。送電線路のリアクタンスを減少させる方法としては、多導体の採用のほかに、並列して使用する回線数を増やす方法や、直列コンデンサの採用も考えられる。
電圧階級を上げると、電線温度の制約によって定まる送電容量は電圧に比例して増加する。また、ある位相差角のときに送電できる有効電力が電圧の二乗にほぼ比例することから、電線階級を上げることにより、過渡安定性、定態安定性(小じょう乱同期安定性)の制約から定まる送電容量も増加させることができる。
送電電圧と送電電力
三相3線式送電線路で、高い電圧が採用される理由を考察する。送電線は単導体一回線とし、送電線端線間電圧をV、線路電流をI、送電端力率をcosφ、送電端送電電力をP、Pに対する線路の電力損失の割合である送電損失率をλ、送電距離をL、電線1条の抵抗と断面積をRとA、全電線合計の質量をG、その質量密度をσ、その体積抵抗率をρとする。また、線路は抵抗とリアクタンスのみで表現され、三相が平衡しており、表皮効果を無視すると次式が成立する。なお、単位系はすべてSI単位系で表示されているものとする。
\(P=\sqrt3VI\cos\varphi\) …①
\(\displaystyle\lambda=\frac{3RI^2}{P}\) …②
\(\displaystyle R=\frac{\rho L}{A}\) …③
\(G=3\sigma AL\) …④
式①と④より、
\(\displaystyle\frac{P}{G}=\frac{VI\cos\varphi}{\sqrt3\sigma AL}\) …⑤
であるから、式⑤を二乗し、式②、③を代入すると、
\(\displaystyle\frac{P^2}{G^2}=\frac{V^2\lambda P\cos^2\varphi}{9\sigma^2\rho AL^3}\) …⑥
さらに、式⑥に式④を代入すると、式⑦が得られる。
\(\displaystyle P=V^2G\lambda\frac{\cos^2\varphi}{3\sigma\rho L^2}\) …⑦
よって、距離、質量及び電力損失率が同じ送電線を利用すると、送電電力は線間電圧の二乗に比例することになる。
電力円線図
ある送電線路において、送受電端電圧を一定にして、有効電力を変化させる場合、無効電力は電力沿線図の円周上の決められた値をもつ。
電力円線図の最大の利点は、有効電力と無効電力およびそのときの位相角の関係や、必要な調相無効電力などをビジュアル的に理解することができることである。
送電系統の損失低減対策
送電系統の電力損失は線路の抵抗損と変圧器の銅損及び鉄損が主なものである。このため、電力損失の低減には、線路電流の減少と電線、変圧器の電気抵抗の低下が有効であり、具体的な電力損失の低減対策としては次の方法がある。
- 送電電圧の昇圧
- 電力用コンデンサの設置
- 電線の太線化、こう長の短縮、回線数の増加
- 需要地近辺に変電所を導入
- 変圧器の鉄心に方向性けい素鋼板、アモルファスなどの材料の採用
- 並列運転している変圧器の台数制御
電力系統の短絡容量と低減対策
同期発電機の増加や送電線の新増設等により、系統容量の増大や系統連系が密になることによって、系統事故発生時の短絡電流が大きくなる。短絡電流の増加により、送変電機器の損傷増大や、周辺通信線への電磁誘導障害が考えられるため、以下のような短絡電流抑制対策を施す必要がある。
- 現在採用されている電圧より上位の電圧の系統を作り、既設系統を分割する。
- 発電機や変圧器のインピーダンスを大きくする。
- 送電線や母線間に限流リアクトルを設置する。
- 系統間を直流設備で連系する。
- 変電所の母線分離運用を行う。
電力系統の短絡容量PS[MV・A]は、単位法における基準容量をPB[MV・A]、故障点からみた電源側の%インピーダンスを%ZSとすると、\(\frac{100}{%Z_S}\times P_B\)によって計算され、電力系統に連系する同期発電機の減少に対して短絡容量は小さくなるという関係にある。
短絡容量が大きくなり、遮断器の遮断容量を上回るようになると、故障電流を遮断できず、機器の損傷や広範囲・長時間の停電を引き起こすおそれがあることから、遮断容量の増加や短絡容量抑制対策が実施される。
短絡容量抑制対策としては、変圧器のインピーダンスを増加させたり、系統と系統の連系点に直流設備を設置したりするといった設備上の対策のほか、電力系統を分割運用するという運用上の対策もある。ただし、設備コストの増加や、系統構成によっては同期安定性や電圧安定性の低下に繋がる可能性があることから、これらの点を考慮する必要がある。
故障電流の検討
- 電験2種過去問【2021年電力管理 問3】(単位法を用いた三相回路の故障電流)
- 電験1種過去問【2020年電力管理 問5】(発電機母線の三相短絡電流計算、遮断電流の設計、1線地絡電流計算)
- 電験1種過去問【2010年電力管理 問3】(地絡方向リレー、地絡電流及び地絡点による動作範囲の計算)
対称座標法による故障計算は一種の内容になります。
保護リレー
保護リレーの役割
保護リレーは、電力設備における事故などの異常状態を検出し、その部分を系統から切り離すよう指令を出す機器である。
- 保護リレーが具備すべき条件
- 選択性
保護対象区間の事故などの異常状態だけを識別し、必要最小限の範囲の遮断で事故区間を停止して、その他の設備を不必要に遮断させない能力を有すること。 - 信頼性
誤動作・誤不動作は許されず、正動作・正不動作が要求されること。無保護区間がないようにし、また保護区間外事故で誤動作することのないように保護協調をとる。具体的には複数のリレーの組み合わせ、二重化、後備保護の設置などがある。 - 動作感度
系統構成、需要などの運転状況、事故様相などによって変化する事故電流、電圧の大小によって、保護性能に影響を受けないような動作感度を確保できること。 - 動作速度
電力系統の安定度維持、機器破損の回避及び事故拡大防止に必要な高速動作が可能なこと。
- 選択性
主保護とは、ある事故に対しまず動作することが求められている第一の保護で、事故区間だけを選択遮断することを目的としている。何らかの原因で主保護動作に失敗した場合に備え、第二、第三の保護、すなわち後備保護が設置されている。後備保護は主保護による保護が行われないと判断してから保護するため、一般的に遮断時間が遅くなり、また、広範な遮断となる。
重要度の高い基幹系送電線においては、主保護を2組設置し、いずれかのリレーでも遮断器を動作できるようにしている。この2組のリレーは一般的には同じリレーとすることが多い。また、遮断器のトリップ回路も2系統にしている。これらにより送電線事故除去に対し、保護信頼度の向上を図っている。
送電線保護リレー
回線選択リレー方式は、平行2回線送電線路の保護リレー方式として、66~77kV級送電線路を主体に広く採用されている。この方式は、保護対象区間の範囲内の1回線事故の場合に、電源端では事故回線に流れる事故電流が健全回線に流れる事故電流と比べて大きくなること、及び、非電源端では両回線で事故電流の方向が反対になることを利用して事故回線を検出する。
送電線の短絡保護にこの保護リレー方式を適用した、両端が電源端である図の平行2回線送電線路において、A端からの距離の比率がαの地点(A端とB端の間の保護範囲内に限る。)で短絡事故が発生し、A端、B端から短絡電流\(I_{A},I_{B}\)が流入した場合を想定する。また、A端における各送電線の電流\(I_{A1},I_{A2}\)に対する変流器の2次電流を\(i_{A1},i_{A2}\)とすると、A端のリレーに流れる電流\(i_{AR}\)は\(i_{AR}=i_{A1}-i_{A2}\)と表されるものとする。ここで、同じ変流比で\(I_{A},I_{B}\)を変換したものを\(i_{A},i_{B}\)と表すとき、A端のリレーに流れる電流\(i_{AR}\)は\(i_{A},i_{B}\)を用いて\((1-a)\times(i_A+i_B)\)と表される。事故点がA端近傍、B端近傍、及び中間付近の場合で\(i_{AR}\)を比較すると、B端近傍の場合に\(i_{AR}\)が最も小さくなり、これがある一定値を下回るとA端のリレーは動作しない。
距離リレーとは自端の電圧・電流入力により事故検出ができることから保護リレー装置としての構成が比較的簡単で信頼度が高く、系統保護における主保護リレー又は後備保護リレーとして広く使用されている。
また、距離リレーは事故区間の選択が比較的確実で、保護区間に応じた各距離リレーの時限遮断により時間協調がとりやすいことから、送電線や変圧器・発電機などの電力機器の後備保護リレーとして、あるいは系統分離リレーとして幅広く使用されている。
距離リレーは入力電圧の入力電流に対する比、すなわち測距インピーダンスに応動し、測距インピーダンスが動作特性範囲内であれば動作する。
供給支障確率の計算
安定度
過渡安定度
電力系統における過渡安定度の基本的な説明には、図の等面積法が多く用いられる。この図で、短絡等の故障中は発電機の機械入力 Pm が電気出力 Pe より大きいため、この発電機の回転数は増大し、相差角δは増大する。
ついで、一定時間後(相差角 δc )で故障が除去されると、以降、電気出力 Pe が機械入力 Pm を上回り、発電機の回転数は減少し始める。
この間もδは増加するが、図の面積 Vk < Vp であれば、δ が δu に達する前にその最大値に達し、以降、δはその最大値から減少する。すなわち、安定と判定される。
一方、 Vk > Vp であれば δ は δu を超え、以降、δは増大して発散する。この場合は、不安定(脱調)と判定される。
送電線事故時の系統安定度の向上:
図の電力相差角曲線を用いて、2回線送電線で1回線3相地絡事故を遮断器で除去し、再閉路によって、安定度が向上されるケースについて、動作点の動きを説明する。なお、PⅡは2回線送電中の電力相差角曲線とし、事故発生前は電力 PM を送電し、相差角 δ₀ の交点 a で運転されている。
2回線送電線の1回線三相地絡事故時における高速度再閉路実施時の系統安定度向上の例を示す。図に示す電力相差角曲線で、PⅠ は1回線送電中、PⅡ は2回線送電中、PF は事故発生中の送電電力曲線を表す。
電力 PM を送電し、電気角 δ₀ の交点 a で運転されている平常時から、事故が発生すると、送電電力は瞬時に点 b へと変化し、さらに発電機が加速することにより、相差角 δ は増加する。相差角 δc のところで事故回線の両端の遮断器が遮断したとすると、送電電力は点 e に変化する。さらに相差角 δ は増加するが、相差角 δR で遮断器が再閉路すれば電力曲線は再び PⅡ となって点 g に変化し、δm まで加速後、減速して点 a に戻り安定状態になる。
電力相差角曲線においては、事故除去されるまでに動いた δc までに系統に与えられる加速エネルギー分が面積 a b c d で表され、事故除去後の減速エネルギーが d e f g h i に相当する。
発電機の動揺方程式と過渡安定性への影響
図1の1機無限大母線系統における過渡安定性とその向上対策について、以下の問に答えよ。慣性定数をM、発電機の機械的入力をPm、発電機出力をPe、発電機端の電圧をVs∠δ、送電線のインピーダンスをjX、無限大母線の電圧をVr∠0とする。なお、δは[rad]、Mは[sec²/rad]で、その他は[p.u.]で表されている。
発電機の動揺方程式
発電機の動揺方程式の\(\displaystyle M\frac{d^2δ}{dt^2}\)をPm、Peで、PeをVs、Vr、X及びδで表し、送電線で地絡などの故障が起きた直後のPmとPeの変化によるδへの影響は以下のようになる。
発電機の動揺方程式は次式で表される。
\(\displaystyle M\frac{d^2δ}{dt^2}=P_m-P_e\)
また、Peは次式で表される。
\(\displaystyle P_e=\frac{V_sV_r}{X}sinδ\)
Pmは短時間では変化しないが、Peは低下するため加速し、無限大母線の発電機との回転速度に差が生じ、δが拡大する。
過渡安定性が悪化する条件は、
・Mが小さいこと
・初期のδが大きいこと
・Xが大きいこと
である。
過渡安定度向上策(Peの観点)
送電線故障による電力系統の過渡安定性を向上するための具体的な方策について、故障中のPeの観点から示す。
発電機加速の抑制策として、Peを加速時に大きくすること、故障除去を早くすることが必要である。具体的な対策方法は以下が挙げられる。
Peを加速時に大きくする具体的な対策方法
・制動抵抗制御(SDR)
・超速応励磁でVsを高める。
・励磁装置頂上電圧を引き上げる。
・調相設備で発電機と無限大母線の間の電圧を高める。
・以下によるXの低下。
・系統電圧階級の引き上げ
・直列コンデンサの挿入
・多回線化、ループ化、中間開閉所の設置
故障除去を早くする具体的な対策方法
・保護リレー及び遮断器の高速度化
PSS(Power System Stabilizer)
発電機励磁系に超速応励磁装置を用いて過渡安定性を改善する場合、PSSを組み合わせることが多い。
速応励磁を用いた場合,発電機の第1波動揺の抑制には効果があるが,第2 波以降の減衰が悪化する場合がある。PSS はこの減衰を改善することを目的とする。
PSS は,発電機出力,発電機回転数などを入力信号とし,対象とする動揺周期に対し発電機加速(減速)時には励磁を強める(弱める)ように位相と大きさを調整し,動揺を抑制するための自動電圧調整装置(AVR)への補助信号を生成する。
過渡安定度向上策(Pmの観点)
過渡安定性を向上するためのPmに関する具体的な方策として、電源制限による過渡安定性の改善効果を、平行2線送電線に地絡などの故障が発生した場合を示す図2の電力相差角曲線を用いて、説明する。
故障除去後の機械的入力を抑制することで過渡安定性が向上する。
また、電源制限により、周波数の低下や電圧上昇・低下が生じる可能性に留意が必要である。そのため、電制後の需給バランスに配慮した制御や、調相設備などの開閉による無効電力制御を合わせて実施する。
様々な過渡安定度の様相
平行2回線送電線では、2回線×3相の計6相に発生する故障は様々な組み合わせがあるが、超高圧送電線における高速による多相再閉路方式において、同相での2回線地絡故障(1φG2LG)が、1回線3相地絡故障(3φG3LG)よりも過渡安定性が厳しくなる理由を故障中、故障除去後のPeの観点で説明する。
1 線地絡の場合,事故中の正相分等価回路では,事故点インピーダンスとして事故点から見た逆相及び零相インピーダンスが挿入される。一方,3 線地絡時には,等価回路では事故点は短絡される。このため事故中における事故点の正相電圧の大きさは,3線地絡時より1線地絡時の方が大きくなる。これにより1線地絡時の方が,事故中の発電機の送電電力が大きくなり,発電機の加速が抑制されるため,過渡安定性面から見た過酷度合いは小さくなる。
したがって、故障中の電力相差角曲線(Pe)は、1φG2LGの方が3φG3LGよりも大きくなり、加速度領域は小さくなる方向である。
他方、故障除去後の電力相差角曲線(Pe)は1相が欠相状態となるため、1回線3相開放よりも送電電力は低下するため、減速領域は小さくなる方向である。
故障除去は高速(3~4サイクル程度)で行い、再閉路は1秒程度で行うため、1φG2LGの減速領域の減少の影響が大きく、3φG3LGよりも過渡安定性が厳しくなる。
- 電験1種過去問【2022年電力管理 問4】(過渡安定性に関する問題)
- 電験1種過去問【2019年電力管理 問3】(過渡安定性、地絡様相による過酷度合の違い、PSSの基本機能)
- 電験1種過去問【2018年電力管理 問4】(高速再閉路、タービン発電機の挙動計算、軸ねじれ振動の影響)
P-V曲線(ノーズカーブ)
電圧安定性を表す特性として、負荷に供給する有効電力Prと負荷端の電圧Vの関係を表したP-V曲線が一般に用いられ、その形からノーズカーブともいわれる。
電圧安定性
B点より上の領域(高め解側)と下の領域(低め解側)で、受電端電圧の特性が変化するため、B点を臨界点と呼ぶ。
高め解側では負荷を増加させるに従って、受電端電圧が低下する。一方で、低め解側では負荷を増加させるに従って、受電端電圧が上昇する。
系統から見た負荷\(P_L\)の電圧特性としては、次式のように電圧の指数関数で表される。
\(P_L∝V^n\)
n=0は定電力負荷といい、電圧の変化に関係なく一定の電力を消費する。誘導電動機、同期電動機などのモータ負荷やインバータエアコンなどがある。
n=1は定電流負荷といい、負荷電力が電圧に比例する。
n=2は定インピーダンス負荷といい、負荷電力が電圧の二乗に比例する。電灯、電熱器などがある。
負荷が定電力特性である場合、負荷端電圧Vが低下するにしたがって、負荷電流が増加するため、系統に流れる電流との関係が不安定となる場合がある。したがって、高め解側のA点は安定な運転点、低め解側のC点は不安定な運転点となる。
ただし、定インピーダンス負荷、定電流負荷では低め解側でも安定であるので、電圧安定性は、負荷全体に対する定電力負荷の割合が大きい場合に厳しくなる。
調相用コンデンサを負荷端に投入することで、P-V曲線の臨界点を右上方向に移動させることができるが、臨界点の電圧と運転点の電圧が近づいていくことや、電圧変動が大きくなることなどに注意が必要である。
変圧器タップ逆動作現象
負荷消費電力PLは次式で表される。
P–V 特性とPL–V 特性での説明
負荷消費電力と受電端電圧は,上述の P–V カーブと PL–V 特性を表すカーブの交点として定まる。このため,図2に示すように,負荷が比較的小さく( R が比較的大きく),動作点が電圧高め解にあたる場合には,タップ比 n を増加すると負荷消費電力は増大する。抵抗負荷であるため,これは負荷端電圧 VL が上昇することを表している。
しかし,図中に示すように,負荷が大きい( R が小さい)場合に,タップ比 n が大きくなると,動作点は電圧低め解となることがある。電圧低め解では,タップ比 n を増大すると受電端電圧とともに負荷消費電力が減少するが,これは負荷端電圧 VL が低下することに対応する。これが変圧器タップの逆動作現象である。
P–VL 特性と PL–VL特性での説明
負荷消費電力と負荷端電圧は, P–VL カーブと PL–VL 特性を表すカーブの交点として定まる。ここにタップ比 n を変化させた場合,図3のように,P–VLカーブは負荷端電圧がタップ比 n に応じて電圧方向に拡大・縮小した形状を呈する。
負荷が比較的小さい ( R が比較的大きい)場合には,動作点が電圧高め解にあり,タップ比 n を増加すると負荷端電圧 VLと負荷消費電力 PL はともに増大する。
しかし,負荷が大きい ( R が小さい)場合には,動作点は電圧低め解となることがある。この場合,図中に示すように,タップ比 n を増大すると,負荷端電圧 VL と負荷消費電力 PL はともに減少する。これが変圧器タップの逆動作現象である。
簡易法による電力潮流計算
直流送電
洋上風力や離島と本土系統を直流送電で連系する場合には、交流送電における海底ケーブルの充電電流の制約を受けずに送電電力を高めることができ、誘電体損失も小さいという特徴がある。また、架空送電においては、直流は交流に比べ対地電圧を低くすることができ、一般に鉄塔の高さを低くすることができる。例えば、交流送電と直流送電において、送電電力及び送電損失がそれぞれ等しい場合、直流中性点接地2線式(双極式)における送電線の対地電圧は、交流三相3線式の対地波高電圧に比べて\(\displaystyle\frac{\sqrt3}{2}\)倍となる。ただし、各導体の抵抗の値は同じで、交流の場合、力率は1とする。
一方で、交直変換装置を必要とし、交流系統の電圧で転流動作を行う他励式変換器を用いる場合には、常に遅れ無効電力を消費する。このため、交流側には遅れ無効電力を補償する設備が必要である。直流は交流のように電流零点を通過しないため、事故電流を抑制又は遮断するには、交直変換装置の制御により行うか、大容量高電圧の直流遮断器が必要となる。
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