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電験1種過去問【2013年電力管理 問3】

2024年2月17日

【変電所】遮断器動作に関する各種事象《論説問題》

 遮断器は電力系統の運用の中で重要な役割を果たしている。定常時に通電すると共に、系統事故時においては、事故電流遮断、抵抗投入などによる開閉過電圧の抑制や再閉路による電力系統の安定度向上などの役割を果たす。
 遮断器に関連する次の項目について、具体的に説明せよ。

  1. 直列機器としての電流協調:
     遮断器が閉路の状態で、➀定常及び過負荷運転時、➁系統事故時において、遮断器に流れる電流の許容値に関する定格をそれぞれ一つ挙げ、直列機器の運用に支障がないように、遮断器が電流面で協調を図るべき事項(電流協調)について簡潔に説明せよ。
  2. 事故電流の遮断現象:
     近距離線路故障遮断(SLF)について、遮断現象を説明せよ。
  3. 送電線事故時の系統安定度の向上:
     図の電力相差角曲線を用いて、2回線送電線で1回線3相地絡事故を遮断器で除去し、再閉路によって、安定度が向上されるケースについて、動作点の動きを説明せよ。なお、Pは2回線送電中の電力相差角曲線とし、事故発生前は電力 PM を送電し、相差角 δ₀ の交点 a で運転されている。
解答と解説はこちら

解答

公式標準解答

1.  直列機器としての電流協調:
 遮断器が閉路の状態で、➀定常及び過負荷運転時、➁系統事故時において、遮断器に流れる電流の許容値に関する定格をそれぞれ一つ挙げ、直列機器の運用に支障がないように、遮断器が電流面で協調を図るべき事項(電流協調)について簡潔に説明せよ。

➀ 定常及び過負荷運転時の電流協調
 遮断器の定常運転中に連続的に流れる電流の許容値は、「定格電流」で表される。例えば、500 [kV] や 275 [kV] の送電線用遮断器では 2 [kA] から 8 [kA] である。
 過負荷時の遮断器の電流容量は、直前の通過電流が定格電流以下であれば、短時間の過負荷は可能である。この際、遮断器の温度上昇の時定数は、油入変圧器に比べると小さく、直列機器として許容できる過負荷電流及び時間は、遮断器で決まるので、遮断器の定格電流は、油入変圧器などの過負荷運用の支障にならないように選定することが必要である。

➁ 系統事故時の電流協調:
 系統の短絡や地絡事故時に流れる事故電流の許容値は、遮断器などの直列機器では「定格短時間耐電流(定格短時間電流でも正解とする)」で表される。事故継続時間中、閉路している遮断器も含めて、直列機器は定格短時間耐電流に耐えなければならない。
 定格短時間耐電流は、定格遮断電流と同じ値が標準として規定される。例えば、500 [kV] や 275 [kV] では、50 [kA] や 63 [kA] が多く採用されている。また、継続時間は、最終段保護による事故除去時間も考慮し、2秒と規定している。
 特に直接接地系では、地絡や短絡事故時には事故電流が大きく、変圧器巻線などへ大きな電磁力が発生することから、事故除去が遅れると過熱損傷の恐れがある。このため、保護・制御装置の信頼度向上を図り、遮断器による確実かつ早期の事故除去により、事故の局限下を図る必要がある。

2.  事故電流の遮断現象:
 近距離線路故障遮断(SLF)について、遮断現象を説明せよ。

 近距離線路事故遮断(SLF)は、遮断器に近く、およそ数 [km] から 10 [km] 位までの範囲の距離で起こった線路事故(通常は1線地絡事故を対象)時の電流を遮断する現象である。
 近距離線路故障電流遮断時には、電流遮断後の過渡回復電圧は端子短絡故障(BTF)に比べ低いが、開放状態にある遮断器線路側端子と地絡点との間の線路上で往復反射現象を起こすため、遮断器極間には電源電圧のほかに、この往復反射現象による三角波形の電圧が印加される。このようにして発生した過渡回復電圧の、特に初期の部分の立ち上がりが急峻であり、遮断器極間の絶縁回復速度との競合という面から見て、遮断条件は非常に厳しいものとなる。

3.  送電線事故時の系統安定度の向上:
 図の電力相差角曲線を用いて、2回線送電線で1回線3相地絡事故を遮断器で除去し、再閉路によって、安定度が向上されるケースについて、動作点の動きを説明せよ。なお、Pは2回線送電中の電力相差角曲線とし、事故発生前は電力 PM を送電し、相差角 δ₀ の交点 a で運転されている。

 2回線送電線の1回線三相地絡事故時における高速度再閉路実施時の系統安定度向上の例を示す。図に示す電力相差角曲線で、P は1回線送電中、P は2回線送電中、PF は事故発生中の送電電力曲線を表す。
 電力 PM を送電し、電気角 δ₀ の交点 a で運転されている平常時から、事故が発生すると、送電電力は瞬時に点 b へと変化し、さらに発電機が加速することにより、相差角 δ は増加する。相差角 δc のところで事故回線の両端の遮断器が遮断したとすると、送電電力は点 e に変化する。さらに相差角 δ は増加するが、相差角 δR で遮断器が再閉路すれば電力曲線は再び P となって点 g に変化し、δm まで加速後、減速して点 a に戻り安定状態になる。
 電力相差角曲線においては、事故除去されるまでに動いた δc までに系統に与えられる加速エネルギー分が面積 a b c d で表され、事故除去後の減速エネルギーが d e f g h i に相当する。

解説

 遮断器に関連した一連の問題です。一種としては妥当レベルの問題です。系統安定度に関しては、一種受験者にとっては易しい内容といえます。横断的に複数の知識を問う問題で、文字数制限もないため、問題の的を得た解答をしっかり書けるように練習が必要です。


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