// google adsence用 火力発電の学習帳 | 電気主任技術者のいろは

火力発電の学習帳

2024年2月11日

タービン発電機

 火力発電所に用いられるタービン発電機は原動機である蒸気タービンと直結し、回転速度が水車に比べ非常に高速なため2極又は4極の回転界磁形三相同期発電機が広く用いられている。大きな遠心力に耐えるように、直径が小さく軸方向に長い横軸形の円筒機を採用し、その回転子の軸及び鉄心は一体の鍛造軸材で作られる。

タービン発電機は、上述の構造のため界磁巻線を施す場所が制約され、大きな出力を得るためには電機子巻線の導体数が多い、すなわち銅量が多い、いわゆる銅機械となる。

汽力発電所のタービン発電機は、水車発電機に比べ回転速度が高くなるため、機械的強度を要求されることから、回転子の構造は円筒形にし、水車発電機よりも直径を小さくしなければならない。このため、水車発電機と同出力を得るためには横軸方向に長くすることが必要となる。

 発電機の大容量化に伴い冷却方式も工夫され、大容量タービン発電機の場合には密封形水素冷却方式が使われている。

過去問題:
電験3種過去問【2012年電力 問2】(タービン発電機の特徴)
電験3種過去問【2016年電力 問2】(水車発電機とタービン発電機の特徴)
電験3種過去問【2022年(前期)電力 問2】(火力発電所のタービン発電機)

タービン発電機の励磁方式

 交流励磁機方式は、発電機の界磁巻線へ直流電流を供給する励磁電源供給機器として、交流の励磁用同期発電機(交流励磁機)を使用するものである。交流励磁機の励磁電源には他励方式と分巻方式があるが、他励方式では、主発電機、交流励磁機と同一軸上に設置された副励磁機の出力を整流し、交流励磁機の励磁電源に使用する。
 主発電機と同一軸上に回転電機子形発電機と回転整流器を取り付け、スリップリングを設けずに直接発電機の励磁電源に使用する方式をブラシレス励磁方式という。
 静止形励磁方式は、励磁用電源供給機器として励磁用変圧器または励磁用変流器を使用するもので、サイリスタを用いた整流器で点弧角を調整して直流出力電圧を変化させて、発電機の界磁電流を制御する。サイリスタ励磁方式には、サイリスタのみで構成される均一ブリッジ形と、サイリスタとダイオードとを組み合わせて構成される混合ブリッジ形がある。

火力発電所の熱サイクル

  • A→B:給水が給水ポンプによりボイラ圧力まで高められる断熱圧縮の過程である。
  • B→C:給水がボイラ内で熱を受けて飽和蒸気になる等圧受熱の過程である。
  • C→D:飽和蒸気がボイラの過熱器により過熱蒸気になる等圧受熱の過程である。
  • D→E:過熱蒸気が蒸気タービンに入り復水器内の圧力まで断熱膨張する過程である。
  • E→A:蒸気が復水器内で海水などにより冷やされ凝縮した水となる等圧放熱の過程である。

再生再熱サイクル

  •  再生サイクルは、タービン内の蒸気の一部を抽出して、ボイラの給水加熱を行う熱サイクルである。
  •  再生サイクルは、復水器で失う熱量が減少するため、熱効率を向上させることができる。
  •  再生サイクルによる熱効率向上効果は、抽出する蒸気の圧力、温度が高いほど大きい。
  •  再熱サイクルは、タービンで膨張した湿り蒸気をボイラの再熱器で加熱し、再びタービンに送って膨張させる熱サイクルである。
  •  再生サイクルと再熱サイクルを組み合わせた再熱再生サイクルは、ほとんどの大容量汽力発電所で採用されている。

タービン

  •  復水タービンは、タービンの排気を復水器で復水させて高真空とすることにより、タービンに流入した蒸気をごく低圧まで膨張させるタービンである。
  •  背圧タービンは、タービンで仕事をした蒸気を復水器に導かず、工場用蒸気及び必要箇所に送気するタービンである。
  •  反動タービンは、固定羽根(静翼)で蒸気圧力を膨張・減圧させ、蒸気が回転羽根に衝突する力と回転羽根(動翼)から排気するときの力を利用して回転させるタービンである。
  •  衝動タービンとは、蒸気が回転羽根(動翼)に衝突するときに生じる力によって回転させるタービンである。
  •  再生タービンは、ボイラ給水を加熱するため、タービン中間段から一部の蒸気を取り出すようにしたタービンである。

ボイラ設備

ボイラを水の循環方式によって分けると、自然循環ボイラ、強制循環ボイラ、貫流ボイラがある。

ボイラの構成装置

ドラムとは、水分と飽和蒸気を分離するほか、蒸発管への送水などをする装置である。

過熱器とは、ドラムなどで発生した飽和水蒸気を乾燥した蒸気にするものである。

再熱器とは、一度高圧タービンで仕事をした蒸気をボイラに戻して再加熱し、再び中圧・低圧タービンで仕事をさせるためのもので、熱効率の向上とタービン翼の腐食防止のために用いられている。

節炭器とは、煙道を通る燃焼ガスの余熱を利用して、ボイラ給水を加熱し、熱回収することによって、ボイラ全体の効率を高めるための熱交換器でである。

空気予熱器とは、火炉に吹き込む燃焼用空気を、煙道を通る燃焼ガスの排熱によって加熱し、ボイラ効率を高めるための熱交換器である。

蒸気ドラムは、内部に蒸気部と水部をもち、気水分離器によって蒸発管からの気水を分離させるものであり、自然循環ボイラ、強制循環ボイラに用いられるが貫流ボイラでは必要としない。

通風装置は、燃焼に必要な空気をボイラに供給するとともに発生した燃焼ガスをボイラから排出するものである。通風方式には、煙道だけによる自然通風と、送風機を用いた強制通風とがある。

安全弁は、ボイラの使用圧力を制限する装置としてドラム、過熱器、再熱器などに設置され、蒸気圧力が所定の値を超えたときに弁体が開く。

自然循環ボイラ

汽水ドラムを有し、高温ガスから熱を吸収した水管内の汽水混合体と、火炉外部に設置された降水管内の水の密度差から生じる循環力を利用してボイラ水を循環させながら蒸気を得るボイラ。

ボイラ給水ポンプで供給される給水は煙道ガスの余熱を利用した節炭器で加熱され汽水ドラムに入る。水は火炉外部に設置された降水管によりボイラ下部に導かれて火炉内の水管(水冷壁)で燃焼ガスと熱交換し、水と蒸気の混合物になって汽水ドラムに戻る。汽水ドラムでは水と飽和蒸気を分離し、過熱器で飽和蒸気を過熱し蒸気タービンに供給する。分離された水は飽和蒸気になるまで循環する。

自然循環ボイラは臨界圧力より低い亜臨界圧での適用となる。
理由は、水管内の汽水混合体と降水管内の水の密度差は圧力が高くなると減少するため、蒸気圧力を高くするほど密度差のみで十分な循環力を得ることは難しくなるため。このため、自然循環式の高圧大型ボイラにおいては、ボイラ高さを高くするとともに循環経路をできるだけ直管で構成し、水管径を比較的太くして管内抵抗を減少させることで循環力を確保する必要がある。更に、臨界圧力(22.06[MPa])以上の圧力では水と蒸気の区別がなくなり、密度差もほとんどなくなることから循環させながら蒸気を得ることはできない。

制御・保護装置

  • 負荷の緊急遮断等によって、ボイラ内の蒸気圧力が一定限度を超えたとき、蒸気を放出させ機器の破損を防ぐ安全弁が設置されている。
  • ボイラの水の循環が円滑に行われないとき、水管の焼損事故を防止するため、燃料を遮断してバーナを消火させる燃料遮断装置が設置されている。
  • 蒸気タービンの回転速度が定格を超える一定値以上(定格の110%超)に上昇すると、自動的に蒸気止弁を閉じて、タービンを停止する非常調速機が設置されている。
  • 蒸気タービンの軸受け圧力が低下したとき、タービンを停止させるトリップ装置が設置されている。
  • 発電機固定子巻線の内部短絡を検出・保護するために、比率差動継電器が設置されている。
  • ターニング装置は、タービン停止中に高温のロータが曲がることを防止するため、ロータを低速で回転させる装置である。
  • 調速装置は、蒸気加減弁駆動装置に信号を送り、蒸気流量を調整することで、タービンの回転速度制御を行う装置である。

非常用電源設備

火力発電所において外部の交流電源が喪失した場合でもユニットを安全に停止させるための非常用電源として直流、交流電源が設置されている。
直流電源として蓄電池が使用され、その負荷としては、重要な保護・制御電源、及び必要最小限の非常用電動機負荷がある。
蓄電池の容量は停電中に供給する負荷並びに停電の継続時間を想定し、更に経年変化、温度変化、電圧降下を勘案して決定される。
交流電源については、主にディーゼル発電機やガスタービン発電機が設置され、その負荷としては、タービン油ポンプ、ターニングギアモータ、密封油ポンプなどがある。

復水器

復水器は蒸気タービン等で仕事を取り出した後の排気蒸気を冷却して凝縮させる装置である。

  • 汽力発電所で最も大きな損失は、復水器の冷却水に持ち去られる熱量である。復水器によるエネルギー損失は熱サイクルの中で最も大きい。
  • 復水器の冷却水の温度が低くなるほど、復水器の真空度は高くなる。
  • 汽力発電所では一般的に表面復水器が多く用いられている。
  • 復水器の真空度を高く保持してタービンの排気圧力を低下させることにより、発電所の熱効率が向上する。
  • 復水器の補機として、復水器内の空気を排出する装置がある。

汽力発電所の熱効率

汽力発電所における、熱効率の向上を図る方法として、

  • タービン入口の蒸気として、高温・高圧のものを採用する。
  • 復水器の真空度を高くすることで蒸気はタービン内で十分に膨張して、タービンの羽根車に大きな回転力を与える。
  • 節炭器を設置し、排ガスエネルギーを回収する。
  • 高圧タービンから出た湿り飽和蒸気をボイラで再熱し、再び高温の乾き飽和蒸気として低圧タービンに用いる。
  • 高圧及び低圧のタービンから蒸気を一部取り出し、給水加熱器に導いて給水を加熱する。

熱効率に関係する運転項目

 化石燃料を使用する現用の汽力発電方式で、蒸気タービンとボイラの効率に影響する運転時の管理項目は「蒸気温度・蒸気圧力」以外には以下がある。(効率を高める制御方法と、損失の増加や設備への影響などの問題点)

  1. 「ボイラ排ガス中の酸素濃度」(=過剰空気率)
     過剰空気率が適正であるときは燃料が完全燃焼するため効率が高まる。大きすぎるとボイラ内の燃焼温度が下がり、排ガス損失が増加する。小さすぎると不完全燃焼となり未燃損失が増加する。
  2. 「空気予熱器出口排ガス温度」(=排ガス温度)
     空気予熱器で燃焼用空気を予熱すれば炉内温度が高くなり、燃料の蒸発量、燃焼速度が増加するため、燃料が完全燃焼し効率が高まるとともに、排ガスの熱を利用して空気を加熱することで効率は上昇する。また、排ガスの熱を利用し、節炭器で給水を加熱すると効率を向上することができる。排ガス温度が高くなると排出エネルギーが増加し、低すぎると空気予熱器や節炭器の低温部腐食が多くなる。
  3. 「復水器真空度」(=真空度)
     復水器の真空度を増加させればタービン出口蒸気の排気圧が低くなり排出エネルギーが小さくなるため、タービンの熱落差を増加させることとなり、効率は向上する。真空度を高めれば効率は上昇するが、復水が過剰に冷却されるため、効率は低下する。他にも真空度が高いことによるタービン振動の増加も懸念される。

火力発電所の各種計算

発電端熱効率の計算

発電端熱効率ηは、発電機の発電端電力量の熱量QGと使用燃料の発生熱量QFとの比で表され、

\(\displaystyle η=\frac{Q_G}{Q_F}\times100[%]\)

発電端電力量(発電機出力の電力量)\(\displaystyle W_G\)[kW・h]であれば

発電機の発電端電力量の熱量QG

\(\displaystyle Q_G=W_G \times3600\)[kJ]

燃料の発熱量H[kJ/kg]、燃料消費量B[kg]とすると、使用燃料の発生熱量QF

\(\displaystyle Q_F=B\times H\)[kJ]

また、ボイラ効率ηB、タービン効率ηT、発電機効率ηGとすると、発電端効率ηは、

\(\displaystyle η=η_B\timesη_T\timesη_G\)

燃料消費量と化学反応量の計算

燃料の重油の化学成分を炭素85.0[%]、水素15.0[%]とすると、燃料消費量B[kg]のとき、

消費した燃料中の、炭素の量は0.85×B[kg]、水素の量は0.15×B[kg]

燃料が完全燃焼したときの、化学反応式は下記で与えられる。

\(\displaystyle C+O_2→CO_2\)

\(\displaystyle 2H_2+O_2→2H_2O\)

水素の原子量を1、炭素の原子量を12、空気の酸素濃度を21[%]としたときの、

燃焼に必要な空気量[m3]を問われる。

1molの標準状態の気体が22.4Lであることを利用して計算を行う。

二酸化炭素量の計算

炭素Cの原子量は12、酸素Oの原子量は16であるので、二酸化炭素CO2の原子量は

\(\displaystyle 12+2\times16=44\)

原子の質量は、原子量に比例するので、

炭素Cの原子量12に対して、二酸化炭素CO2の原子量44が発生する。

1日の炭素消費量MC[kg]とすると、二酸化炭素の重量の値MCO2[kg]は

\(\displaystyle M_{CO_2}=M_C\times\frac{44}{12}\)[kg]

タービン効率

タービン効率ηT[%]は、タービンに供給されるエネルギーWTi[kJ]とタービン出力エネルギーWTo[kJ]の比で表される。

\(\displaystyle η_T=\frac{W_{To}}{W_{Ti}}\times100\text{[%]}\)

タービン熱消費率

タービン熱消費率は単位発電端電力量WG[kW・h]当たりに、タービンに供給されるエネルギーWTi[kJ]で表される。

\(\displaystyle η_T=\frac{W_{Ti}}{W_{G}}\times100\text{[kJ/(kW・h)]}\)

発電機効率

発電機効率ηG[%]は、タービン出力PT[MW]に対する発電端出力PG[MW]の比であるので、

\(\displaystyle η_G=\frac{P_{G}}{P_{T}}\times100\text{[%]}\)

送電端電力量

送電端電力量W[MW・h]は、発電端電力量WG[MW・h]から所内率x[%]を差し引いたものであるので、

\(\displaystyle W=W_{G}\times(1-\frac{x}{100})\text{[MW・h]}\)

復水器冷却水流量

復水器冷却水の流量Q[m3/s]のとき、海水の比熱容量をC[kJ/(kg・K)]、海水の密度をρ[kg/m3]とすると、冷却水の温度がθ[K]上昇したとき、1秒間あたりに冷却水が奪う熱量Wは以下となる。

\(\displaystyle W=QθCρ\text{[kJ/s]}\)

環境対策

火力発電所で発生する大気汚染物質について、その発生原因と対策装置(設備)及びその原理には以下のようなものがある。

煤じん

発生原因

燃料に含まれる灰分が燃焼することで生成される

対策装置(設備)

電気集じん機(煤じん除去装置)を使用する

原理

(電気集じん機)煤じんを帯電させて静電気力により排ガスより分離捕集を行う

補足

電気集じん器は、電極に高電圧をかけ、ガス中の粒子をコロナ放電で放電電極から放出される負イオンによって帯電させ、分離・除去する。

火力発電所で発生する灰じんなどの微粒子は、電気集じん装置により除去される。典型的な電気集じん装置は、集じん電極である平板電極の間に放電電極である線電極を置いた構造である。電極間の高電圧によって発生したコロナ放電により生じたイオンで微粒子を帯電させ、クーロン力によって集じん電極で捕集する。集じん電極に付着した微粒子は一般的に、集じん電極を槌でたたいて取り除く。

窒素酸化物(NOx)

発生原因

燃焼空気中の窒素が高温条件下で酸素と反応して生成される
燃料中に含まれる窒素分が燃焼により酸化され生成される

対策装置(設備)

低NOxバーナー、排ガス混合法、ボイラ二段燃焼、脱硝装置を使用する

原理

(低NOxバーナー)燃焼方法(燃焼温度低下)の改善により生成量を減らす
(排ガス混合法)ガス混合機により排ガスを燃焼空気に混合して低酸素燃焼を行う
(ボイラ二段燃焼)バーナー周りの空気比を下げNOxの生成を抑制させ未燃分を後流から注入した空気で再燃焼させる
(脱硝装置)アンモニア還元法にて還元剤としてアンモニアを加え混合したのち触媒層に通すことでNOxとアンモニアが還元反応して窒素と水蒸気に分解される

補足

排煙脱硝装置は、窒素酸化物をアンモニアにより除去する。接触還元法は、排ガス中にアンモニアを注入し、触媒上で窒素酸化物を窒素と水に分解する。

二段燃焼法は、燃焼用空気を二段階に分けて供給し、燃料過剰で一次燃焼させ、二次燃焼域で不足分の空気を供給し燃焼させ、窒素酸化物の生成を抑制する。

排ガス混合(再循環)法は、燃焼用空気に排ガスの一部を再循環、混合して酸素濃度を下げ、窒素酸化物の生成を抑制する。ボイラにおける酸素濃度の低下を図ることは、窒素酸化物低減に有効である。

硫黄酸化物(SOx)

発生原因

燃料中に含まれる硫黄分が燃焼することで生成される

対策装置(設備)

脱硫装置を使用する

原理

(脱硫装置)石灰石ー石膏法にて排ガス中の亜硫酸ガスを石灰(石灰スラリー)に吸収させ亜硫酸カルシウムとして除去する。これを空気で酸化することで石膏が生成される

補足

燃料として天然ガス(LNG)を使用することは、硫黄酸化物による大気汚染防止に有効である。

排煙脱硫装置は、硫黄酸化物を粉状の石灰と水との混合液に吸収させ除去する。湿式石灰石(石灰)ー石こう法は、石灰と水との混合液で排ガス中の硫黄酸化物を吸収・除去し、副生品として石こうを回収する。

 排煙脱硫装置は排ガス中に含まれる硫黄酸化物を除去する装置であり、発電用ボイラにおいては、石灰石などアルカリ剤のスラリーを排ガス中に噴霧して、石こうを副生品として回収することができる湿式法が一般的に用いられている。
 吸収塔で脱硫された排ガスは、水分を多く含み冷却されているため、煙道などを腐食させやすく、そのまま大気に放出されると、拡散能力が低く白煙も発生するため、ガス-ガスヒータで再加熱してから煙突より放出される。

コンバインドサイクル発電

 ガスタービン発電と汽力発電を組み合わせた方式を、コンバインドサイクル発電方式という。

 燃焼用空気は、空気圧縮機、燃焼器、ガスタービン、排熱回収ボイラを経て、排ガスとして煙突から排出される。

発電方式

 図1の発電方式を排熱回収方式とよぶ。図2の発電方式を排気再熱方式とよぶ。
 図2の排気再熱方式は、図1の排熱回収方式と比較して以下のような特徴がある。

  • 発電機を回す動力源として、蒸気タービンのみを利用する既設のコンベンショナル(従来型)火力のリパワリング(出力増強と熱効率改善)に適用できる。
  • プラント出力に対する蒸気タービンの出力の割合が大きい、又はボイラの蒸気発生量が多い。
  • 蒸気タービンの単独運転が可能である(100%容量の押込通風機を設置した場合)。
  • 運転制御系が複雑となる。
  • 起動から定格負荷までの時間並びに定格負荷から停止までの時間が長い。
  • ボイラに使用する燃料はガスタービンと無関係に選択できる。
    などより四つを記載する。

コンバインドサイクル発電の特徴

 コンバインドサイクル発電方式を、ガスタービンを用いない同一出力の汽力発電方式と比較した場合、以下のような特徴がある。

  1.  熱効率が高い。ガスタービン入口温度が高いほど熱効率が高い。そのため、最大出力が外気温度の影響を受けやすい。
  2.  部分負荷に対応するため、運転する発電機数を変えるので、熱効率の低下が少ない。部分負荷に対応するための、単位ユニット運転台数の増減が可能なため、部分負荷時の熱効率の低下が小さい。
  3.  起動・停止時間が短い。起動停止時間が短く、負荷追従性が高い。
  4.  蒸気タービンの出力負担が少ないので、その分復水器の冷却水量が少なく、温排水量も少ない。
  5.  大型所内補機が少ないので、所内率が小さい。
  6.  単位出力当たりの排ガス量が少ない。

排熱回収形コンバインドサイクル発電の特徴

 天然ガスを燃料とする一軸形コンバインドサイクル(排熱回収サイクル)発電を複数台組み合わせた発電プラントについて、同容量の汽力発電プラントと比較した場合の特徴は以下。

  1. 起動時間
     ガスタービンを使用した小容量機の組合せのため負荷変化率が大きくとれ、また、蒸気タービンの分担出力がプラント全体の\(\displaystyle\frac{1}{3}\)と小さく汽力発電と比べて蒸気タービンが小形となるため、短時間での起動が可能である。8 時間停止後の起動時間は、例えば 1 000 [MW] 級汽力発電プラントで約 3 時間であるが、一軸形コンバインドサイクル発電プラントの場合は1軸当たり約1時間である。
  2. 温排水量
     コンバインドサイクル発電プラントの蒸気タービンの入口蒸気条件は、汽力発電プラントに比べて圧力・温度ともに低くなり、分担出力はプラント全体の\(\displaystyle\frac{1}{3}\)と小さいため、温排水量は汽力発電プラントの 6 割程度となる。
  3. 大気温度と最大出力との関係
     コンバインドサイクル発電プラントはガスタービンを主体に構成されるため、最大出力は大気温度により大きく変化し、大気温度が低いほど出力が大きくなる。
     ガスタービンは、高温域における耐久性の観点から、第一段動翼入口ガス温度の上限を定めて運転される。一方、ガスタービンの圧縮機の吸込空気体積流量は大気温度に関係なくほぼ一定であるため、大気温度が下がって空気密度が増加すると、吸込空気質量流量は増加する。また、大気温度の低下により圧縮機の燃焼用空気の温度が低下するため、ガスタービン入口ガス温度の上限値までの加熱代が大きくなり、吸込質量流量の増加とあいまって、より多くの燃料が投入可能となり、ガスタービン最大出力が増加する。
     蒸気タービンについては、ガスタービン最大出力の増加による排ガス量及び熱量の増大により、排熱回収ボイラでの蒸気発生量が増加し、出力が若干増加する。

コンバインドサイクル発電の熱効率向上

コンバインドサイクル発電の出力増大や熱効率向上を図るためにはガスタービンの高効率化が重要である。

高効率化の方法には、ガスタービンの入口ガス温度を高くすることや空気圧縮機の出口と入口の圧力比を増加させることなどがある。このためには、燃焼器やタービン翼などに用いられる耐熱材料の開発や部品の冷却技術の向上が重要であり、同時に窒素酸化物の低減が必要となる。

コンバインドサイクル発電の熱効率

コンバインドサイクル発電の熱効率をηC
ガスタービン発電の熱効率をηGT
ガスタービン発電の排気が保有する熱量に対する蒸気タービン発電の熱効率をηVTとすると、

\(\displaystyle η_C=η_{GT}+(1-η_{GT})\times η_{VT}\)

ガスタービン発電の熱サイクル

 燃焼器が1組だけのガスタービン発電における基本熱サイクルを単純ブレイトンサイクルといい、基本設備は燃焼器のほかに発電機、空気圧縮機、ガスタービンで構成される。図は単純ブレイトンサイクルの熱サイクル線図で、燃焼器に相当する軌跡は2から3である。燃焼器で発生した高温高圧の燃焼ガスをガスタービンで断熱膨張させタービン軸を回し仕事をする。受熱量を\(Q_1\)、放熱量を\(Q_2\)、各点の温度を\(T_1,T_2,T_3,T_4\)とすれば、理論熱効率ηは次式で表される。

 \(\displaystyle\eta=1-\frac{Q_2}{Q_1}\)

  \(=1-\displaystyle\frac{T_4-T_1}{T_3-T_2}\)

石炭ガス化コンバインドサイクル発電

 石炭ガス化コンバインドサイクル発電は、石炭を部分酸化することにより一酸化炭素や水素を主成分とするガス燃料に変換する石炭ガス化炉、その生成ガスから主としてばいじんや硫黄分などを除去するガス精製装置、その生成ガスを燃料としたガスタービンコンバインドサイクル発電プラントを組み合わせた発電方式である。
 この発電方式は、一般的なコンバインドサイクル発電と同様に、ガスタービンの燃焼温度の高温化により熱効率が向上することから、今後の石炭火力発電の二酸化炭素排出削減方式として期待されている。