// google adsence用 電験3種過去問【2011年電力 問15】 | 電気主任技術者のいろは

電験3種過去問【2011年電力 問15】

2022年4月24日

【火力発電】火力発電所の燃料消費量と必要空気量の計算《計算問題》

 定格出力500[MW]、定格出力時の発電端熱効率40[%]の汽力発電所がある。重油の発熱量は44000[kJ/kg]で、潜熱の影響は無視できるものとして、次の(a)及び(b)に答えよ。
 ただし、重油の化学成分を炭素85.0[%]、水素15.0[%]、水素の原子量を1、炭素の原子量を12、空気の酸素濃度を21[%]とし、重油の燃焼反応は次のとおりである。

\(\displaystyle C+O_2→CO_2\)

\(\displaystyle 2H_2+O_2→2H_2O\)

(a)定格出力にて、1時間運転したときに消費する燃料重量[t]の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)10
(2)16
(3)24
(4)41
(5)102

(b)このとき使用する燃料を完全燃焼させるために必要な理論空気量[m3]の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
 ただし、1[mol]の気体標準状態の体積は22.4[l]とする。
 ※理論空気量:燃料を完全に燃焼するために必要な最小限の空気量(標準状態における体積)

(1)5.28×104
(2)1.89×105
(3)2.48×105
(4)1.18×106
(5)1.59×106

解答と解説はこちら

解答

(a):(5)
(b):(4)

解説

(a)定格出力にて、1時間運転したときに消費する燃料重量[t]の値を求める。

定格出力500[MW]で1時間運転したときに発生する熱量QG[J]は、

\(\displaystyle Q_G=500\times10^6\times60\times60\)

\(\displaystyle =1800\times10^9\)[J]

使用燃料による熱量をQF[J]とすると、発電端熱効率η[%]は以下で与えられる。

\(\displaystyle η=\frac{Q_G}{Q_F}\times100[%]\)

\(\displaystyle 40=\frac{1800\times10^9}{Q_F}\times100\)[%]

\(\displaystyle ∴Q_F=\frac{1800\times10^9\times100}{40}\)

\(\displaystyle =4500\times10^9\)[J]

\(\displaystyle =4500\times10^6\)[kJ]

消費した燃料重量MF[kg]は、

\(\displaystyle M_F=\frac{4500\times10^6}{44000}\)[kg]

\(\displaystyle =102.3\times10^3\)[kg]

\(\displaystyle =102.3\)[t]

 

(b)このとき使用する燃料を完全燃焼させるために必要な理論空気量[m3]の値を求める。

重油使用量は、前題より102[t]=102×103[kg]であった。重油に含まれる炭素の質量MC[kg]、及び水素の質量MH2O[kg]は、化学成分比より

\(\displaystyle M_C=102\times10^3\times0.85\)

\(\displaystyle =86.7\times10^3\)[kg]

\(\displaystyle M_{H_2}=102\times10^3\times0.15\)

\(\displaystyle =15.3\times10^3\)[kg]

1[mol]の物質量からなる二酸化炭素分子CO2は、\(\displaystyle C+O_2→CO_2\)より

1[mol]の炭素Cと、1[mol]の酸素分子O2が反応している。

1[mol]の定義より、1[mol]の炭素Cは、その原子量に単位グラムをつけた質量となる。

つまり、1[mol]の炭素Cは12[g]である。

したがって、1[kmol]の炭素Cの質量は12[kg]である。

使用燃料中の炭素の質量は、MC=86.7×103[kg]であったので、このとき使用された炭素の物質量NC[kmol]は

\(\displaystyle N_C=\frac{86.7\times10^3}{12}\)

\(\displaystyle =7.225\times10^3\)[kmol]

つまり、このとき同じ物質量7.225×103[kmol]の酸素分子O2が燃焼反応に使用されたことになる。

同様にして、

1[mol]の物質量からなる水分子2H2Oは、\(\displaystyle 2H_2+O_2→2H_2O\)より

1[mol]の水素分子2H2と、1[mol]の酸素分子O2が反応している。

水素分子2H2は、4個の水素原子Hが含まれる。

水素の原子量は1であるので、1[mol]の水素分子2H2は4[g]である。

したがって、1[kmol]の水素分子2H2の質量は4[kg]である。

使用燃料中の水素の質量は、MH2=15.3×103[kg]であったので、このとき使用された水素分子の物質量NH2[kmol]は

\(\displaystyle N_{H_2}=\frac{15.3\times10^3}{4}\)

\(\displaystyle =3.825\times10^3\)[kmol]

つまり、このとき同じ物質量3.825×103[kmol]の酸素分子O2が燃焼反応に使用されたことになる。

重油の燃焼に使用された酸素量は、二酸化炭素への反応時に使用された酸素分子の物質量と、水への反応時に使用された酸素分子の物質量を合計したものであるので、

酸素物質量\(\displaystyle =7.225\times10^3+3.825\times10^3\)

\(\displaystyle =11.05\times10^3\)[kmol]

1[mol]の気体標準状態の体積は22.4[l]であるので、

酸素量\(\displaystyle =22.4\times11.05\times10^3\)[kl]

\(\displaystyle =247.52\times10^3\)[m3]

必要な酸素量は、247.52×103[m3]であるが、空気中の空気の酸素濃度は21[%]であるので、必要な理論空気量は

理論空気量\(\displaystyle =\frac{247.52\times10^3}{0.21}\)[m3]

\(\displaystyle =1179\times10^3\)[m3]

\(\displaystyle =1.18\times10^6\)[m3]