配電の学習帳
目次
配電系統
6.6kV配電系統
従来からの6.6kV高圧配電方式には、放射状方式(樹枝状方式)、ループ方式(環状方式)などがある。
ループ方式は結合開閉器を設置して線路を構成するので、放射状方式よりも建設費は高くなるものの、高い信頼度が得られるため負荷密度の高い地域に用いられる。
通常、6.6[kV]の三相3線式を用いるが、都市周辺などのビル・工場が密集した地域の一部では、電力需要が多いため、さらに電圧階級が上の22[kV]や33[kV]の三相3線式が用いられることもある
放射状方式(樹枝状方式)
放射状方式は、配電用変圧器ごとに低圧幹線を引き出す方式で、構成が簡単で保守が容易なことから我が国では最も多く用いられている。樹枝状方式の高圧配電線で事故が生じた場合、事故が発生した箇所の変電所側直近及び変電所から離れた側の区分開閉器を開放することにより、事故が発生した箇所を高圧配電線系統から切り離す。
低圧バンキング方式
バンキング方式は、同一の特別高圧又は高圧幹線に接続されている2台以上の配電用変圧器の二次側を低圧幹線で並列に接続する方式で、低圧幹線の電圧降下、電力損失を減少でき、需要の増加に対し融通性がある。しかし、低圧側に事故が生じ、1台の変圧器が使用できなくなった場合、他の変圧器が過負荷となりヒューズが次々と切れ広範囲に停電を引き起こすカスケーディングという現象を起こす可能性がある。この現象を防止するためには、連系個所に設ける区分ヒューズの動作時間が変圧器の一次側に設けられる高圧カットアウトヒューズの動作時間より短くなるよう保護協調をとる必要がある。
20kV級配電系統
電力需要の拡大に対処するため、最近の配電方式は20kV級地中配電方式と20kV級架空配電方式が採用される。
6.6 kV の配電線に比べ電圧対策や供給力増強対策として有効なので、長距離配電の必要となる地域や新規開発地域への供給に利用されることがある。
各種需要家への電力供給は、特別高圧需要家へは直接に、高圧需要家へは途中に設けた配電塔で 6.6 kV に降圧して高圧架空配線路を用いて、低圧需要家へはさらに柱上変圧器で 200~100 V に降圧して、行われる。
20kV級地中配電方式
地中配電系統で使用するパッドマウント変圧器(地上用変圧器)には、変圧器と共に開閉器などの機器が収納されている。
架空配電系統と比較した、地中配電系統のメリット・デメリットは以下のとおり。
(メリット)
- 都市の美観が向上する。
- 同一ルートにケーブルを多数条施設可能なため、都市部など高需要密度地域への供給が可能となる。
- 暴風雨、雷、火災などの災害に対して信頼性が向上する。
- 設備の安全性が向上する。 など
(デメリット)
- 建設費が高額
- 新設や増設などの需要変動への即応が困難
- 事故復旧・改修に時間がかかる。 など
スポットネットワーク方式
スポットネットワーク配電方式は、複数の配電線から分岐線をいずれもT引き込みし、それぞれ受電用断路器を経てネットワーク変圧器に接続される。各低圧部はネットワークプロテクタを経て並列に接続し、ネットワーク母線を構成する。
スポットネットワーク方式は、供給信頼度の高い方式であり、一般に、高圧又は特別高圧側は多回線で供給するため、ネットワーク変圧器一次側の単一母線故障時でも(供給路の1回線が停電しても)無停電供給が可能である。ただし、ネットワーク変圧器二次側のネットワーク母線で故障が発生したときは受電は不可能となる。
負荷密度が極めて高い大都市中心部の高層ビルなど大口需要家への供給に適している。この方式は、一つの需要家に3回線で供給されるのが一般的である。
機器の構成は、特別高圧配電線から断路器、ネットワーク変圧器及びネットワークプロテクタを通じて、ネットワーク母線に並列に接続されている。
また、ネットワークプロテクタは、プロテクタヒューズ、プロテクタ遮断器、電力方向継電器で構成され、逆電力遮断特性、差電圧投入特性、無電圧投入特性の三つの特性を備えている。
スポットネットワーク方式は、一般的に20kV級電源変電所から3回線の配電線から受電する方式であり、都市部の高層ビルや大工場等の大容量で高信頼度が求められる地域に適用される。このスポットネットワーク方式では受電用遮断器を省略し、変圧器の二次側にネットワークプロテクタを設置し、各種事故に対して事故区間を的確に切り離し、負荷には無停電で供給を行うことができる。したがって保護装置が複雑で建設費が高くなる一方、一次側配電線又は変圧器が事故停止しても、設備容量を常時供給する容量の1.5倍で設計しておけば残った設備により無停電で供給できるので、供給信頼性が高い。
スポットネットワーク方式は、22kV~33kVの同一変電所から標準3回線の配電線により常時並列で需要家に電力供給を行う方式である。この方式は、供給信頼度が高く、都市部の高層ビルや大工場などのように極めて高度に集中化した大容量負荷部に適用するもので、その他の配電方式と比べて、電圧低下、電力損失などが少ないことが特徴として挙げられる。
また、1回線の配電線又はネットワーク変圧器が事故停止しても、残りの変圧器の過負荷運転で最大需要電力を供給できるよう変圧器容量を選定している。ここで、変圧器の過負荷耐量としては、経済性を考慮して少なくとも定格容量の1.3倍とすれば、最大負荷状態でも年間数回までであれば各回8時間程度の連続運転により、健全な設備から無停電で供給を継続することができる。※経済性を考慮した変圧器の単器容量選定方法は、連続定格運転後、8時間130%程度の過負荷運転を想定した計算式を電験1種過去問【2021年電力 問4】で解説しています。
この方式では、ネットワークプロテクタが必要であり、一般的に遮断器、ヒューズ及び保護リレーから構成されており、次の三つの特性をもっている。
- 逆電力遮断特性
- 一次側配電線が停電すると、停電しない配電線に接続された変圧器があるので、ネットワーク側から停電した配電線に接続された変圧器を介して一次側へ逆に電流が流れるので、これを遮断する機能
- 無電圧投入特性
- ネットワーク側(低圧側)に電圧がかかっていない状態で、一次側配電線が充電されると閉路する機能
- 過電圧投入特性(差電圧投入特性)
- ネットワーク側および変圧器二次側ともに電圧があるとき、一次側配電線を充電した場合、変圧器側から負荷側に向かって電流が流れる条件にあるとき、その変圧器を並列投入する機能
- 逆電力遮断により、プロテクタ遮断器が開放され、かつネットワーク母線が充電されている状態で、プロテクタ遮断器の変圧器側の電圧がネットワーク母線側の電圧より高く、かつ適正な位相にあるとき、その差電圧と位相差を検出してプロテクタ遮断器を投入する特性をいう。
負荷に大きな回生電力を発生する回転機があると逆電力によりネットワークプロテクタが不必要な動作をするおそれがある。この対策として、多回線同時に逆電力が発生した場合は保護リレーをロックするとか、ダミー負荷で回生電力を消費するなどの方法がある。
本線予備線方式(常用予備切換方式)
本線予備線方式は、2回線の異なる配電線に接続し、停電時に常用予備切換をする方式である。通常あらかじめ定められた常用線から受電しているが、配電系統が事故停止した場合、需要家内事故でないこと、及び予備線に電圧があることを条件に、受電用遮断器又は断路器を手動又は自動で切り換える。そのとき一定時間の停電を伴う欠点があるが、スポットネットワーク方式より簡単な設備構造となる。
低圧ネットワーク方式(レギュラーネットワーク方式)
低圧ネットワーク方式は、複数の特別高圧又は高圧幹線から、ネットワーク変圧器及びネットワークプロテクタを通じて低圧幹線(低圧配電線路)に電力を供給する方式である。特別高圧又は高圧幹線側が1回線停電しても、低圧の需要家側に無停電で供給できる信頼度の高い方式であり、大都市中心部で実用化されている。
スポットネットワーク方式が一つの大口需要家に供給しているのに対して、低圧ネットワーク方式は一般需要家を含めた複数の需要家に供給するものである。
低圧ネットワーク方式では、供給信頼度を高めるために低圧配電線を格子状に連系している。
- 一般的に、ネットワーク変圧器二次側に、保護装置としてネットワークプロテクタが設置されており、ネットワーク変圧器一次側の遮断器やヒューズを省略することができる。
- 低圧配電線路を格子状に接続したネットワークから、各需要家に供給する。
- 樹枝状配電線路と比較して電圧変動や電力損失を小さくすることができる。
- 建設費が高くなるので、大都市のような需要家の多い地域で用いられる。
20kV級架空配電方式
架空配電系統では保安上の観点から、特別高圧絶縁電線や架空ケーブルを使用する場合がある。
1000V以下の配電方式
単相2線式
単線2線式は、一般住宅や商店などに配電するのに用いられ、低圧側の1線を接地する。
単相3線式
単相3線式は、変圧器の低圧巻線の両端と中点から合計3本の線を引き出して低圧巻線の中点から引き出した線のを接地する。変圧器の低圧巻線の両端と中点から3本の線で2種類の電圧を供給できる。
(1)単相100V及び単相200Vの2種類の負荷に同時に供給することができる。
上図のように、100V/200Vの2種類の負荷に電源を供給できる。
(2)許容電流の大きさが等しい電線を使用した場合、電線1線当たりの供給可能な電力は、単相2線式よりも大きい。
上図のように、単相3線式と単相2線式の抵抗R[Ω]に、1線あたりの許容電流を流し、I2R[W]となる電力を供給する場合を考える。ただし、1線の許容電流I[A]であるとする。
単相2線式では、電線1線当たりの供給電力P2[W]は
\(\displaystyle P_{2}=\frac{I^2R}{2}\)[W]
単相3線式では、電線1線当たりの供給電力P3[W]は
\(\displaystyle P_{3}=\frac{2I^2R}{3}\)[W]
つまり、単相3線式での電線1線当たりの供給電力P3[W]は、単相2線式での電線1線当たりの供給電力P2[W]より大きい。
(3)電線1線当たりの抵抗が等しい場合、中性線と各電圧線の間に負荷を分散させることにより、単相2線式と比べて配電線の電圧降下を小さくすることができる。
上図のように、単相3線式と単相2線式の抵抗R[Ω]に、I2R[W]となる同じ電力を供給する場合を考える。
単相2線式では、電線1線当たりの抵抗r[Ω]であるとき、全電圧降下Vr2[V]は
\(\displaystyle V_{r2}=2\times2I\times r=4Ir\)[V]
単相3線式では、電線1線当たりの抵抗r[Ω]であるとき、全電圧降下Vr3[V]は
\(\displaystyle V_{r3}=2\times I\times r=2Ir\)[V](中性線に電流は流れない)
つまり、単相3線式での電線による電圧降下Vr3[V]は、単相2線式での電線による電圧降下Vr2[V]より小さい。
中性線と各電圧線の間に接続する各負荷の容量が不平衡であると、平衡している場合に比べて電力損失が増加する。これは、中性線の電流が増加するためである。
(4)中性線と各電圧線の間に接続する各負荷の容量が不平衡な状態で中性線が切断されると、容量が大きい側の負荷にかかる電圧は低下し、反対に容量が小さい側の負荷にかかる電圧は高くなる。
上図のように、単相3線式配電方式で不平衡負荷が接続されていたとする。
中性線を切り離すと、ac間の200Vが不平衡負荷に印加され、容量の小さい側の負荷に100Vを超える大きな電圧が印加され、容量の小さい負荷には100Vに満たない電圧が印加される。
このような危険な状態となることを避けるため、不平衡負荷とならないように考慮する必要がある。
三相3線式
三相3線式は、高圧配電線と低圧配電線のいずれにも用いられる方式で、電源用変圧器の結線には一般的にΔ結線とV結線のいずれかが用いられる。
V結線
V結線は単相変圧器2台によって構成できるため、Δ結線よりも変圧器の電柱への設置が簡素化できるが、同一容量の単相変圧器2台を使用して三相平衡負荷に供給している場合、同一容量の単相変圧器3台を使用したΔ結線と比較して、出力は\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt3}\)倍となる。
※変圧器の学習帳(V結線)にも記載
三相4線式
三相4線式は、電圧線の3線と接地した中性線の4本の線を用いる方式である。
非接地方式
非接地三相3線式高圧配電方式は回路の中性点を接地しない方式である。
6.6kV高圧配電線路や33kV以下の高圧配電系統では、60kV以上の送電線路や送電用変圧器に比べ、電線路や変圧器の絶縁が容易であるため、故障時に健全相の電圧上昇が大きくなっても特に問題にならない。また、通信設備等への電磁誘導障害を低減させるため、1線地絡電流をが小さい非接地方式が採用されている。
しかし、通常、配電用変電所において配電線保護として零相電圧検出を行うため、零相電圧検出用の計器用変圧器が設置されており、その二次あるいは三次側Δ結線の開放端に地絡方向リレーの適正動作と異常電圧防止を兼ねて数十[Ω]程度の制限抵抗が接続されるので、一次側に換算すると5 000~10 000[Ω]の高抵抗接地となる。
(各種接地方式については送電の学習帳を参照)
配電設備
電験3種過去問【2022年(前期)電力 問13】(高圧配電線路を構成する機材)
配電用変電所
高圧配電線路の短絡保護と地絡保護のために、配電用変電所には過電流継電器と地絡方向継電器が設けられている。
6.6kV高圧配電線に短絡や地絡などの事故が生じたとき、直ちに事故の発生した高圧配電線を切り離すために、遮断器と保護継電器が配電用変電所の高圧配電引込口に設置されている。
電線
電線は、一般に銅又はアルミが使用され、感電死傷事故防止の観点から、原則として絶縁電線である。
避雷器
落雷などによる外部異常電圧から保護するために、避雷器を保護対象機器対して並列に設置する。特性要素を内蔵した構造が一般的で、保護対象機器にできるだけ接近して取り付けると有効である。
避雷器は、襲雷時に、配電用機器を保護するために、機器の破壊電圧より低い電圧で放電を開始し、自動的に続流を遮断させるもので、このことにより、配電線路は絶縁を回復し、襲雷前と全く同じ状態で運転が可能となる。
避雷器の保護効果を高めるため、避雷器の接地は、接地抵抗値をできるだけ低くし、かつ配電用機器の接地と連接接地することが望ましい。さらに誘導雷サージの低減効果を高めるため、架空地線の接地とも連接接地する。
また、常時開放の開閉器については、一般にその前後に避雷器を取り付けることが望ましい。
区分開閉器
通常の負荷電流の開閉を行うもので、短絡電流は開路できない。主に配電線路の事故時の事故区間を切り離すためと、作業時の作業区間を区分するために使用される。区分開閉器として一般にもちいられていたものは油入開閉器であるが、雷撃時に油が飛散するなどの危険があるため、現在は使用されていない。オイルレス開閉器として、真空開閉器、気中開閉器、ガス開閉器などが使用されている。操作方法は、手動操作による手動式と制御器による自動式がある。
樹枝状方式で事故が発生した箇所を高圧配電線系統から切り離すのに使われる。
鋼板組立柱
山間部や狭あい場所など搬入困難な場所などに使用されている。
柱上変圧器
柱上に設置される変圧器としては、容量10~100kV・Aのものが多く使用されている。
柱上変圧器には、変圧器内部及び低圧配電系統内での短絡事故による過電流保護のために高圧カットアウトが設けられているほか落雷などによる外部異常電圧から保護するために、避雷器を変圧器に対して並列に設置する。また、避雷器を柱上変圧器に内蔵したものも使用されている。
柱上変圧器の鉄心には、けい素鋼板が多く使用されているが、低損失化のために方向性けい素鋼板やアモルファス金属材料を用いた変圧器も使用されている。
三相3線式200Vに供給するときの結線には、Δ結線とV結線がある。V結線は単相変圧器2台によって構成できるため、Δ結線よりも変圧器の電柱への設置が簡素化できるが、同一容量の単相変圧器2台を使用して三相平衡負荷に供給している場合、同一容量の単相変圧器3台を使用したΔ結線と比較して、出力は\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt3}\)倍となる。
電験3種過去問【2022年(前期)電力 問12】(配電線路の柱上変圧器)
高圧中実がいし
高圧中実がいしは、電柱で配電線を支えるとともに、電柱と配電線とを絶縁し、電力の安全供給に重要な役割を担っています。高圧中実がいしは、がいし頂部又は側部の溝に配電線を金属線などで固定し使用されます。
高圧カットアウト
柱上変圧器には、過電流保護のために高圧カットアウトが設けられ、柱上変圧器内部及び低圧配電系統内での短絡事故を高圧系統側に波及させないようにしている。通常は、柱上変圧器の一次側に取り付けられる。
その形状から、磁器製のふたにヒューズ管を取り付け、ふたの開閉により電路の開閉ができる箱形カットアウトや、磁器製の円筒内にヒューズ管を収納してその取り付け取り外しによって開閉ができる円筒形カットアウトがある。
高圧ヒューズは、電動機の始動電流や雷サージなどの短時間過大電流によって溶断しない、放出形ヒューズが一般に使用される。
低圧配電線路
低圧配電線路では、電灯線には単線3線式を用いている。また、単相3線式の電灯と三相3線式の動力を共有する方式として、V結線三相4線式も用いている。
低圧引込線
低圧配電線から低圧引込線への接続点には、低圧引込線で生じた短絡事故等の過電流保護のために、ケッチヒューズ(電線ヒューズ)が設けられる。一般的には低圧引込線の電柱側に設けられる。
電柱から需要家までの低圧架空引込み用として、DV線(引込み用ビニル絶縁電線)が使用される。
都市型装柱
配電設備は地域の実態、都市化の発展に対応して技術開発が進められている。具体的には、環境調和とあわせてビル火災時の消防活動や、構造物との離隔確保などの安全対策、さらには都市美化を兼ねた対策を施している。
上記の一例として占有スペースの縮小化を目的としてコンパクトな都市形装柱が開発されている。この装柱には、高圧線を架空ケーブルとする方式と、絶縁電線を縦引にする方式がある。
架空ケーブル方式は、ビルの消防活動を円滑にするため、建物との離隔確保を図っており、柱上変圧器は、2台の単相変圧器を一つの筐体に収め異容量V結線としたもので、電灯負荷に加え動力負荷も供給可能としてる。また、その下部に架空ケーブルを施設しており、都市美化とあわせて消防車のはしごをかける範囲を拡大している。
絶縁電線方式は、道路側に電線を架線できるD形腕金を使用し、建物との離隔を確保している。
配電系統の絶縁協調
配電用機器は線路開閉時の内部異常電圧(内雷)には機器の絶縁強度で十分に耐えられるように選定されているが、全ての雷に耐えるようにすることは経済的にも不可能に近い。すなわち、配電線や配電用機器の絶縁を外雷の衝撃性過電圧に耐える程度に高めることは経済的に困難なため、避雷器のような保護装置を設置して、衝撃性過電圧の波高値を各機器の絶縁強度以下に抑制するような方策がとられている。この避雷器の制限電圧に対し、線路及び各機器の絶縁強度が適切な余裕を持つよう絶縁設計を行うことで配電系統の絶縁協調を図っている。
一方で、避雷器には保護範囲があるため、避雷器の有効設置及び架空地線の架設が効果的となる。架空地線に雷電圧が誘導されると、接地点で雷電圧と逆位相の反射波が発生し、この反射波が架空地線との電気的結合により電線に誘導されて、電線に発生した雷電圧を低減することが可能となる。
ケーブルの種類
OFケーブル
OFケーブルは、絶縁体として粘度の低い絶縁油を油通路に通すという特徴がある。給油設備を用いて絶縁油に大気圧以上の油圧を加えることでボイドの発生を抑制して絶縁強度を確保している。
POFケーブル
POFケーブルは、油浸紙絶縁の線心3条をあらかじめ布設された防食鋼管内に引き入れた後に、絶縁油を高い油圧で充てんしたケーブルである。地盤沈下や外傷に対する強度に優れ、電磁遮蔽効果が高いという特徴がある。
OFケーブルやPOFケーブルは、油圧の常時監視によって金属シースや鋼管の欠陥、外傷などに起因する漏油を検知できるので、油圧の異常低下による絶縁破壊事故の未然防止を図ることができる。
CVケーブル
CVケーブルは、絶縁体に架橋ポリエチレンを使用したケーブルであり、OFケーブルと比較して絶縁体の誘電率、熱抵抗率が小さく、常時導体最高許容温度が高いため、送電容量の面で有利である。
CVTケーブル
CVTケーブルは、ビニルシースを施した単心CVケーブルを3条より合わせたトリプレックス形CVケーブルであり、3心共通シース形CVケーブルと比較してケーブルの熱抵抗が小さいため電流容量を大きくできるとともに、ケーブルの接続作業性がよい。
CVケーブルについて詳しくはこちら
地中配電線路の特徴
高圧地中配電系統には、配電用変電所の引出口、過密都市部、電車線路や幹線道路横断箇所など架空電線路では設備が輻輳(ふくそう)し、施設することが技術的に困難な箇所に施設するものや、都市機能、景観上の観点から施設するものなどがある。
長所として、同一ルートにケーブルを多回線施設することができること、暴風など気象条件の影響を受けて他物接触による事故発生等が少なく、また、クレーンや飛来物による接触がなく供給信頼度が高い等の利点がある。
一方で、架空電線路に比べ建設費が高いこと、事故復旧に時間を要するほか、掘削工事を要することから需要増加に対する設備増強が容易ではなく、また対地静電容量の増加により深夜などに電圧上昇(フェランチ効果)が発生するおそれがあることなどの短所がある。
変圧器や開閉器などの機器の設置方法としては、地上設置形と地下設置形がある。地下設置形の場合は機器への自動車衝突回避や景観面で有利であるが、熱放散の面から機器が大きくなるばかりでなく、防水性、防食性等の設備設計・施工面に留意する必要がある。
地中送電線路は架空送電線路に比べて以下の特徴がある。
- インダクタンスは、架空送電線路に比べて小さい。
- 静電容量は、架空送電線路に比べてかなり大きい。
- 架空送電線路の場合と同様、一般に、導体抵抗、インダクタンス、静電容量を考える。
地中ケーブルの布設方式
地中配電線路のケーブルの布設方法には、一般に直接埋設式、管路式及び暗きょ式がある。
直接埋設式
直接埋設式は埋設条数の少ない本線部分や引込線部分で用いられ、掘削した地面の溝(土中)に、コンクリート製トラフなどの防護物を敷き並べて、防護物内にケーブルを引き入れてから埋設する方式で、ケーブル取り替えの場合には再掘削が必要となる。
直接埋設式は暗きょ式や管路式と比較すると、工事期間が短く、工事費が安い。一方で将来的な電力ケーブルの増設・引替え・ケーブル線路内での事故復旧が困難であるという特徴がある。
暗きょ式と直接埋設式は、管路式と比較するとケーブルの熱放散が一般に良好で、許容電流を高くとれる特徴がある。
暗きょ式
暗きょ式は、地中に洞道を構築するなど、あらかじめトンネル状の構造物を作っておき、その側壁に設けた受棚上(床上あるいはトラフ内)にケーブルを引き入れて布設する方式である。特に幹線道路やビル街などでは道路の反復掘削防止や地下空間の有効利用などを目的に、電力、通信、ガス、水道、下水などの地下埋設物を一括して収納する共同溝が用いられる。このうち配電線等のように需要家供給を目的とした設備だけ収容するものは供給管共同溝がと呼ばれ、主として歩道部分に設けられる。
一方、地中設備の建設費用は架空設備に比べて格段に高額なものになることから、現在ではより経済的で施工しやすい施設方式が広く採用されている。例えば、CABは共同溝の一種であり、主として歩道の下にふた掛け式の大形U字構造物を設置してこの中に電力・通信・その他ケーブルを布設する方式である。ケーブルの工事や維持補修はふたの開閉によって行われ、そのために必要な最小限の作業スペースが確保されている。
管路式と暗きょ式は我が国では主流の布設方式であり、直接埋設式と比較するとケーブルの引き替えが容易であり、電力ケーブル条数が多い場合に適している。
直接埋設式と暗きょ式は、管路式と比較するとケーブルの熱放散が一般に良好で、許容電流を高くとれる特徴がある。
管路式
管路式は、交通量や舗装などの関係から再掘削が困難な場所に求められる方式で、地中箱などの間を複数条のパイプで結んだものであり、ケーブルの引入れ、引抜き、接続などのケーブル工事に伴う再掘削は不要である。
管路式では、あらかじめ管路及びマンホール(地中箱)を埋設しておき、電力ケーブルをマンホールから管路に引き入れ、マンホール内で電力ケーブルを接続して布設する方式がある。ケーブルの接続を一般にマンホールで行うことから、布設設計や工事の自由度に制約が生じる場合がある。
暗きょ式と管路式は我が国では主流の布設方式であり、直接埋設式と比較するとケーブルの引き替えが容易であり、電力ケーブル条数が多い場合に適している。
管路式では、電力ケーブルを多条数布設すると送電容量が著しく低下する場合があり、その場合には電力ケーブルの熱放散が良好な暗きょ式が採用される。
- 電験3種過去問【2022年(後期)電力 問10】(地中送配電線の主な布設方式と特徴)
- 電験3種過去問【2019年電力 問11】(電力ケーブルの布設方式)
- 電験3種過去問【2014年電力 問10】(地中送電線の布設方式)
地中配電線路に用いられる機器
現在使用されている高圧ケーブルの主体は、架橋ポリエチレンケーブルである。
終端接続材料のがい管は、磁器製のほか、EPゴムやエポキシなど樹脂製のものもある。
直埋変圧器(地中変圧器)は、変圧器孔を地下に設置する必要があり、設置コストが大きい。
高圧需要家への供給用に使用される供給用配電箱には、負荷開閉器と地絡継電装置がセットで収納されている。開閉器はガス絶縁方式である。
地中電線の許容電流と損失
電力ケーブルの許容電流は、ケーブル導体温度がケーブル絶縁体の最高許容温度を超えない上限の電流であり、電力ケーブル内での発生損失による発熱量や、ケーブル周囲環境の熱抵抗、温度などによって決まる。
熱抵抗損
電力ケーブルの絶縁体やシースの熱抵抗、電力ケーブル周囲の熱抵抗といった各部の熱抵抗を小さくすることにより、ケーブル導体の発熱に対する導体温度上昇量を低減することができるため、許容電流を大きくすることができる。
電力ケーブルの敷設条数(回線数)を少なくすることにより、電力ケーブル相互間の発熱の影響を低減することができるため、1条当たりの許容電流を大きくすることができる。
誘電体損
交流電圧を印加した電力ケーブルでは、電圧に対して同位相の電流成分がケーブル絶縁体に流れることにより誘電体損が発生する。この誘電体損は、ケーブル絶縁体の誘電率と誘電正接との積に比例して大きくなるため、誘電率及び誘電正接の小さい絶縁体の採用が望まれる。絶縁体が劣化している場合には、一般に誘電体損は大きくなる傾向がある。
誘電率、誘電正接の小さい絶縁体を採用することにより、絶縁体での発熱の影響を抑制することができるため、許容電流を大きくすることができる。
シース損
シース損は、ケーブルの金属シースに誘導される電流による発生損失である。シース損には、ケーブルの長手方向に金属シースを流れる電流によって発生するシース回路損と、金属シース内の渦電流によって発生する渦電流損とがある。クロスボンド接地方式の採用はシース回路損の低減に効果があり、電気抵抗の高い金属シース材の採用は渦電流損の低減に効果がある。
電気抵抗率の高い金属シース材を採用することにより、金属シースに流れる電流による発熱の影響を低減することができるため、許容電流を大きくすることができる。
抵抗損
抵抗損は、ケーブルの導体に電流が流れることにより発生する損失であり、単位長当たりの抵抗値が同じ場合、導体電流の2乗に比例して大きくなる。電力ケーブルで発生する損失のうち、最も大きい損失は抵抗損である。抵抗損の低減には、導体断面積の大サイズ化のほかに分割導体、素線絶縁導体の採用などの対策が有効である。
交流電流が流れるケーブル導体内の電流分布は、表皮効果や近接効果によって偏りが生じる。そのため、交流の場合の導体の実効抵抗は、表皮効果及び近接効果のため直流に比べて大きくなる。つまり、電力ケーブルの抵抗損では、ケーブルの交流導体抵抗が直流導体抵抗よりも増大することを考慮する必要がある。
表皮効果が小さいケーブル導体を採用することにより、導体表面側での電流を流れやすくして導体全体での電気抵抗を低減することができるため、許容電流を大きくすることができる。
導体抵抗は、温度上昇とともに大きくなる。
大容量地中送電系統の留意事項
大都市に電力を供給するために 275 [kV] の大容量の電力ケーブルを使用した系統が導入されている。架空系統と異なり、地中系統に用いられる送電線用遮断器、リアクトル開閉用遮断器及び計器用変圧器についてそれぞれ考慮すべき事項を述べる。
➀地中送電線用遮断器
地中送電線路では、充電遮断電流の値が架空送電線路より大きいため、進み小電流遮断電流値として、架空送電線路より大きな値が必要である。
例えば、275kV 系統では、充電遮断電流は、架空送電線用では200 [A] に対して、地中送電線用では 500 [A] が規格化されている。
➁リアクトル開閉用遮断器
275 [kV] ではケーブルの充電容量が大きいため、それを補償するためにリアクトルが設置されることが多い。リアクトル開閉用遮断器には、再発弧サージへの考慮が必要である。その抑制対策として、開極位相制御が採用されている。
➂計器用変圧器
ケーブル系統では残留電荷の減衰時定数が長いため、計器用変圧器によって残留電荷を放電する機能が求められる。
OFケーブル異常診断法
油中ガス分析法
測定内容
採取した絶縁油中に溶解した放電や熱分解などによる分解生成ガスを抽出・分析する。
特徴
分析結果のガスの種類や量により、異常の有無と異常の程度を推定することが可能である。
絶縁油特性測定法
測定内容
採取した絶縁油の各特性(水分量、体積抵抗率、誘電正接、全酸価、絶縁破壊電圧)を測定する。
特徴
各特性の測定結果により、施工不良、気密性、絶縁油の汚損状況、熱劣化等を推定することが可能である。
コアずれ測定法
測定内容
放射線によりケーブルや接続箱の内部を撮影し、内部状況を調査する。
特徴
セミトップ部の変形、遮へい層の乱れや、コアずれ量による接続箱内の絶縁紙のずれや損傷を把握し、油中ガス分析と組み合わせることで、異常の程度を推定することが可能である。
部分放電測定法
測定内容
発生している部分放電を測定し、一定時間内に発生する部分放電パルス数等を電圧や時間で整理する。
特徴
油中ガス分析では検出困難なケーブル部の部分放電発生位置の検出に有効である。停電ができない電線路の測定が可能である。
地中送電線路の故障点位置標定
故障点位置標定は、地中送電線路で地絡事故や断線事故が発生した際に、事故点の位置を標定して地中送電線路を迅速に復旧させるために必要となる。
地中送電線路の故障点位置を標定するための方法は、いくつかある。その測定原理から、マーレーループ法は地絡事故に、静電容量測定法は断線事故に、パルスレーダ法は地絡事故と断線事故の双方に適用可能である。
マーレーループ法(地絡事故)
マーレーループ法は、並行する健全相と故障相の2本のケーブルにおける一方の導体端部間にマーレーループ装置を接続し、他方の導体端部間を短絡して電気抵抗計測に使われるブリッジ回路を構成することで、ブリッジ回路の平衡条件とケーブルのこう長から故障点を標定する方法である。
ケーブル全長をL/相、測定辺抵抗をR₁、R₂とすると、測定端から事故点までの距離lは\(\displaystyle\frac{2L・R_1}{R_1+R_2}\)または\(\displaystyle\frac{2L・R_2}{R_1+R_2}\)と表される。
パルスレーダ法(地絡・断線事故)
パルスレーダ法は、健全相のケーブルと故障点でのサージインピーダンスの違いを利用して、故障相のケーブルの一端からパルス電圧を入力してから故障点でパルス電圧が反射して戻ってくるまでの時間を計測し、ケーブル中のパルス電圧の伝搬速度を用いて故障点を標定する方法である。
第1波パルスと第2波パルスの時間差をt、ケーブル内のサージ伝搬速度をvとすると、測定端から事故点までの距離lは\(\displaystyle\frac{v・t}{2}\)と表される。
静電容量測定法(断線事故)
静電容量測定法は、ケーブルの静電容量と長さが比例することを利用し、健全相と故障相のケーブルの静電容量をそれぞれ測定することで故障点を標定する方法である。
表2
事故点測定法 | 原理 | 長所 | 短所 |
マーレーループ法 | ホイートストンブリッジの原理により、事故点までの抵抗値を高精度に測定する方法である。 | ・導体抵抗を利用したホイートストンブリッジ法のため、測定精度が高く、誤差は1%程度以下である。 ・ケーブル事故の多くが1線地絡であるため、適用範囲、使用実績が最も多い。 | ・断線事故に適用できない。 ・三相同時地絡事故のように並行健全相がない場合、測定は困難である。 |
パルスレーダー法(送信形パルス法) | 事故ケーブルにパルス電圧を加え、健全相と異なるサージインピーダンスをもつ事故点からの反射パルスを検知して、パルスの伝搬時間を測定し、事故点までの距離を求める方法である。 | ・並行健全相が不要であるので、三相同時地絡、短絡事故の測定に適している。 ・断線事故に適用できる。 ・線路こう長がはっきりしていない場合でも測定できる。 | ・測定操作、パルス波形の判読に熟練を必要とする。 ・測定精度が若干低い。(誤差は一般的に2~5%) |
- 電験3種過去問【2022年(前期)電力 問11】(地中送電線路の故障点位置標定)
- 電験2種過去問【2021年電力管理 問5】(地中送電線の絶縁劣化診断法と事故点測定法)
- 電験1種過去問【2011年電力管理 問6】(OFケーブル異常診断法と事故点測定法)
配電線の損失計算
配線線の電圧降下
電圧降下等価抵抗
実際の配電線の電圧降下は、線路上に負荷が分散しており複雑であるが、簡単のため線路末端に負荷が集中しているものとして考える。
送電端電圧(相電圧)をEs[V]、受電端電圧(相電圧)をEr[V]とし、単位長[km]当たりの抵抗とリアクタンスをそれぞれR,Xとする。線路長L[km]に電流I[A]が流れたとき、ベクトル図は下のようになる。
ベクトル図より、
\(E_s=E_r+IRL\cos\theta+IXL\sin\theta+j(IXL\cos \theta-IRL\sin\theta)\)[V]
一般的に、αは小さいので、上式の虚数部を無視でき、次式が得られる。
\(E_s=E_r+IRL\cos\theta+IXL\sin\theta\)
\(=E_r+IL(R\cos\theta+X\sin\theta)\)
\(=E_r+ILS\)[V]
ここで、\(\displaystyle S=R\cos\theta+X\sin\theta\) [Ω]を電圧降下等価抵抗と呼ぶ。
電圧降下率
線路の電圧降下の度合いを示す、電圧降下率εは、電圧降下を受電端電圧(相電圧)に対する百分率で表す。
\(\displaystyle ε=\frac{E_s-E_r}{E_r}\times 100=\frac{ILS}{E_r}\times 100\) [%]
- 電験3種過去問【2023年(前期)電力 問17】(配電送電端に流れる電流と電圧降下率)
- 電験3種過去問【2023年(前期)電力 問12】(電圧降下率を保つための最大負荷電力)
- 電験3種過去問【2022年(前期)電力 問17】(線路損失と供給負荷電力の計算)
- 電験3種過去問【2022年(前期)電力 問8】(送電線路での抵抗による全電力損失)
- 電験3種過去問【2021年電力 問17】(単相2線配電線路の電圧降下等価抵抗)
配電線路の電力損失
配電線路の電圧調整
配電線路より電力供給している需要家への供給電圧を適正範囲に維持するため、配電用変電所では、負荷時電圧調整器などによって、負荷変動に応じて変電所二次側母線電圧を調整している。高圧配電線路においては、柱上変圧器のタップ調整によって低圧配電線路の電圧調整を行っていることが多い。また、高圧配電線路のこう長が長い場合や分散型電源が多く接続されている場合など、電圧変動が大きく、配電用変電所の負荷時電圧調整器や柱上変圧器のタップ調整によっても供給電圧を許容範囲に抑えることが難しい場合は、ステップ式自動電圧調整器や、開閉器付電力用コンデンサなどを高圧配電線路に施設することがある。さらに、電線の太線化によって電圧降下を軽減する対策をとることもある。
配電線のこう長が長くて負荷の端子電圧が低くなる場合、配電線路に昇圧器を設置することは電圧調整に効果がある。
電圧調整には、高圧自動電圧調整器(SVR)のように電圧を直接調整するもののほか、電力用コンデンサや分路リアクトル、静止形無効電力補償装置(SVC)などのように線路の無効電力潮流を変化させて行うものもある。
電力用コンデンサを配電線路に設置して、力率を改善することは電圧調整に効果がある。低圧配電線路の力率改善をより効果的に実施するためには、より上流である高圧配電線路に電力用コンデンサを接続するよりも、低圧配線路ごとに電力用コンデンサを接続するほうがよい。
配電用変電所においては、高圧配電線路の電圧調整のため、負荷時電圧調整器(LRA)や負荷時タップ切換装置付変圧器(LRT)などが用いられる。
配電線の電圧降下が大きい場合は、電線を太い電線に張り替えたり、隣接する配電線との開閉器操作により、配電系統を変更することは電圧調整に効果がある。
高負荷により配電線路の電圧降下が大きい場合、電線を太くすることで電圧降下を抑えることができる。
低圧配電線における電圧調整に関して、柱上変圧器のタップ位置を変更することや、柱上変圧器の設置地点を変更することは効果がある。
太陽電池発電設備を系統連系させたときの逆潮流による配電線路の電圧上昇を抑制するため、パワーコンディショナーには、電圧調整機能をもたせているものがある。
電路の保護
電路の保護には一般に過負荷保護、短絡保護、地絡保護がる。
過負荷保護の場合は、導体の許容温度に達するまでに電流を遮断することが求められるが、あらゆる状況下で自動遮断することは困難なため、施設場所の危険度に応じて、適切な場所に過電流遮断器を設置する。
短絡保護の場合は、故障点から最も近い電源側の遮断器で故障点を速やかに切り離すことが基本である。
地絡保護は時限協調が不十分であると、末端における故障でも直ちに広範囲の停電となることがある。
故障区間分離方式
高圧配電線路に短絡故障又は地絡故障が発生すると、配電用変電所に設置された保護継電器により故障を検出して、遮断器にて送電を停止する。
この際、配電線路に設置された区分用開閉器は開放する。その後に配電用変電所からの送電を再開すると、配電線路に設置された区分開閉器は電源側からの送電を検出し、一定時間後に動作する。その結果、電源側から順番に区分用開閉器は投入される。
また、配電線路の故障が継続している場合は、故障区間直前の区分用開閉器が動作した直後に、配電用変電所に設置された保護継電器により故障を検出して、遮断器にて送電を再度停止する。
この送電再開から送電を再度停止するまでの時間を計測することにより、配電線路の故障区間を判別することができ、この方式は時限順送方式と呼ばれている。
配電系統の場合、配電線を適当な区間に区分し、故障時に故障区間の電源側自動区分開閉器を開放して、故障区間以降を切り離す故障区間分離方式がとられている。この方式の制御方法には、自動区分開閉器の時限協調による時限順送方式と、制御信号を使用した信号方式とがあるが、前者が一般的に使用されており、配電用変電所の再閉路、再々閉路等における自動開閉器の動作状況により故障区間と健全区間を自動的に切り分けている。
高低圧混触時の電圧
一般に低圧電路は、変圧器の内部故障や電線等の断線故障の際に高圧電路と混触を起こし、高圧側の電圧が低圧側に現れて危険となるおそれがあるため、変圧器にはB種接地工事を施して、発生する電位上昇を抑制している。
図1に示すように、線間電圧の大きさがVの三相3線式電線路に接続された単相変圧器において、高低圧巻線間に混触が生じた際の低圧側電線の対地電圧\(\dot{V}_R\)の大きさを\(V_1\)以下にするための接地抵抗Rの最大値\(R_M\)を以下のように求める。ただし、Cは三相線路の電線1条の対地静電容量、ωは電源の角周波数である。また、変圧器のインピーダンスは無視する。
図2に示す高低圧混触時のテブナンの定理による等価回路により、接地抵抗Rに流れる電流\(\dot{I}_R\)の大きさは\(\displaystyle\left|\frac{\frac{V}{\sqrt3}}{R+\frac{1}{j3\omega C}}\right|\)で表される。ここで、\(R≪\frac{1}{3\omega C}\)とすると、最大値\(R_M\)は\(\displaystyle\frac{V_1}{\sqrt3V\omega C}\)で表される。なお、柱上変圧器の高圧巻線と低圧巻線の混触は、配電用変電所の地絡保護リレーで検出され、配電用変電所の遮断器で遮断される。
高圧配電線の事故要因
我が国の配電線は架空線が多く、年度により若干の差異はあるものの雷、風水害、氷雪、塩害などの自然災害の影響を大きく受けることが多く、約半数を占める。その他の事故の要因としては、設備不備、保守不備や自動車の衝突、クレーン車接触などの故意過失、樹木鳥獣の接触が主な原因としてあげられる。
一方で、地中線は都市の美観、防災上の観点などから都市部を中心に増加しており、主な事故の原因は道路工事における故意過失や設備不備、保守不備があげられる。
下表は、高圧配電線の事故の種類、事故時に動作する保護装置、事故の主な原因についてまとめたものである。
表 高圧配電線の事故
事故の種類 | 動作する保護装置 | 事故の内容 | 主な事故の原因 |
短絡事故 | 過電流リレー | 線間短絡 |
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異相地絡事故 | 過電流リレー | 線間短絡 |
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地絡リレー | 地絡 | ||
地絡事故 | 地絡リレー | 地絡 |
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柱上変圧器の地絡事故は、変電所の地絡リレーによって検出され、変電所内の遮断器によって遮断される。また、一次巻線と二次巻線の混触事故は、二次巻線のB種接地工事を行った接地を通じて、同様に変電所で検出、遮断される。
このような事故は変圧器の構造からして自然に発生するものではなく、過負荷の繰り返し、雷によるショックなどによって絶縁劣化し発生する。
また、雷によりブッシングが破損し、一次側リード線と変圧器ケースとがフラッシオーバすることで地絡事故は発生する。
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