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電験3種過去問【2021年電力 問17】

2022年4月24日

【配電】単相2線式配電線路の電圧降下等価抵抗《計算問題》

 図のように、高圧配電線路と低圧単相2線式配電線路が平行に施設された設備において、1次側が高圧配電線路に接続された変圧器の2次側を低圧単相2線式配電線路のS点に接続して、A点及びB点の負荷に電力を供給している。S点における線間電圧を107V、電線1線当たりの抵抗及びリアクタンスをそれぞれ0.3Ω/km及び0.4Ω/kmとしたとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。なお、計算においては各点における電圧の位相差が十分に小さいものとして適切な近似を用いること。

(a)B点におけるS点に対する電圧降下率の値[%]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし、電圧降下率はB点受電端電圧基準によるものとする。

(1)1.57
(2)3.18
(3)3.30
(4)7.75
(5)16.30

(b)C点に電流20A、力率0.8(遅れ)の負荷が新設されるとき、変圧器を移動して単相2線式配電線路への接続点をS点からS’点に変更することにより、B点及びC点における線間電圧の値が等しくなるようにしたい。このときのS点からS’点への移動距離の値[km]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)0.213
(2)0.296
(3)0.325
(4)0.334
(5)0.528

解答と解説はこちら

解答

(a):(2)
(b):(3)

解説

(a)B点におけるS点に対する電圧降下率の値[%]を求める。

S-A間の1線の抵抗値\(\displaystyle R_{SA}=0.3\times0.2=0.06\)[Ω]

S-A間の1線のリアクタンス値\(\displaystyle X_{SA}=0.4\times0.2=0.08\)[Ω]

S-A間の1線の電圧降下等価抵抗\(\displaystyle S_{SA}=R_{SA}cos \theta+ X_{SA}sin \theta\)[Ω]

題意より、力率\(\displaystyle cos\theta=1.0\)、\(\displaystyle sin\theta=0\)であるので、

\(\displaystyle S_{SA}=0.06\times 1+0.08\times 0=0.06\)[Ω]

S-A間に流れる電流は15A+5A=20Aである。

S-A間の1線の電圧降下は1線の電圧降下等価抵抗\(\displaystyle S_{SA}=0.06\)[Ω]に流れる電圧降下であり、単相の場合、S-A間電圧降下\(\displaystyle V_{SA}\)は1線の電圧降下の2倍であるので、

\(\displaystyle V_{SA}=2\times 0.06\times20=2.4\)[V]

 

同様に、A-B間の電圧降下等価抵抗\(\displaystyle S_{AB}\)を求める。

A-B間の1線の抵抗値\(\displaystyle R_{AB}=0.3\times0.3=0.09\)[Ω]

A-B間の1線のリアクタンス値\(\displaystyle X_{AB}=0.4\times0.3=0.12\)[Ω]

A-B間の1線の電圧降下等価抵抗\(\displaystyle S_{AB}=R_{AB}cos \theta+ X_{AB}sin \theta\)[Ω]

力率\(\displaystyle cos\theta=1.0\)であるので、

\(\displaystyle S_{AB}=0.09\times 1+0.12\times 0=0.09\)[Ω]

A-B間に流れる電流は5Aである。

A-B間の1線の電圧降下は1線の電圧降下等価抵抗\(\displaystyle S_{SA}=0.09\)[Ω]に流れる電圧降下であり、単相の場合、S-A間電圧降下\(\displaystyle V_{AB}\)は往路・復路があり、1線の電圧降下の2倍であるので、

\(\displaystyle V_{AB}=2\times 0.09\times5=0.9\)[V]

電圧降下率εは、受電端電圧を基準とすると

\(\displaystyle ε=\frac{(2.4+0.9)}{107-(2.4+0.9)}\times 100=3.18\)[%]

 

(b)C点に電流20A、力率0.8(遅れ)の負荷が新設されるとき、変圧器の接続点をS点からS’点に変更し、B点及びC点における線間電圧の値が等しくなるときのS点からS’点への移動距離の値L[km]を求める。

前問(a)より、

S’-A間の電圧降下\(\displaystyle V_{S’A}\)は移動距離Lを考慮すると

\(\displaystyle V_{S’A}=2\times 0.3\times (0.2+L)\times20\)[V]

A-B間の電圧降下\(\displaystyle V_{AB}\)は移動距離Lに影響しないため

\(\displaystyle V_{AB}=2\times 0.09\times5=0.9\)[V]

S’-B間電圧降下\(\displaystyle V_{S’B}=V_{S’A}+V_{AB}=0.9+12\times (0.2+L)\)[V]

 

S’-C間の1線の抵抗値\(\displaystyle R_{S’C}=0.3\times (0.7-L)\)[Ω]

S’-C間の1線のリアクタンス値\(\displaystyle X_{S’C}=0.4\times (0.7-L)\)[Ω]

S’-C間の1線の電圧降下等価抵抗\(\displaystyle S_{S’C}=R_{S’C}cos \theta+ X_{S’C}sin \theta\)[Ω]

題意より、C点の力率\(\displaystyle cos\theta=0.8\)、\(\displaystyle sin\theta=0.6\)であるので、

S’-C間の1線の電圧降下等価抵抗\(\displaystyle S_{S’C}=0.24\times (0.7-L)+0.24\times (0.7-L)=0.48\times (0.7-L)\)[Ω]

S’-C間に流れる電流は20Aである。

S’-C間の1線の電圧降下は1線の電圧降下等価抵抗\(\displaystyle S_{S’C}=0.48\times (0.7-L)\)[Ω]に流れる電圧降下であり、単相の場合、S’-C間電圧降下\(\displaystyle V_{S’C}\)は1線の電圧降下の2倍であるので、

\(\displaystyle V_{S’C}=2\times 0.48\times (0.7-L)\times20=19.2\times (0.7-L)\)[V]

 

S’-B間電圧降下\(\displaystyle V_{S’B}\)とS’-C間電圧降下\(\displaystyle V_{S’C}\)が等しくなる条件は、

\(\displaystyle V_{S’B}=V_{S’C}\)

∴\(\displaystyle 0.9+12\times (0.2+L)=19.2\times (0.7-L)\)

∴\(\displaystyle 0.9+2.4+12L=13.44-19.2L\)

∴\(\displaystyle 31.2L=10.14\)

∴\(\displaystyle L=0.325\)[km]