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水力発電の学習帳

2024年3月29日

目次

  1. 水力発電所の種類
  2. 水車の種類
  3. 水車のキャビテーション
  4. 水車の水撃作用対策
  5. 水車の比速度
  6. 流体力学
  7. 水力発電所で使用される弁
  8. 水力発電所の運用
  9. 発電効率
  10. 調速機
  11. 水車発電機
  12. 水力発電所に用いられるダムの種類

水力発電

 水力発電は昭和30年代前半まで我が国の発電の主力であったが、現在ではエネルギーの安定供給と経済性及び地球環境への貢献の観点から多様な発電方式が運用されており、我が国における水力発電の近年の発電電力量の比率は8%程度である。

 水力発電所には、一般的に短時間で起動・停止があできる、耐用年数が長い、エネルギー変換効率が高いなどの特徴がある。

水力発電所の種類

 水力発電所は落差を得る方法により分類すると、水路式、ダム式、ダム水路式があり、流量の利用方法により分類すると、流込み式、調整池式、貯水池式、揚水式がある。
一般的に、水路式はダム式、ダム水路式に比べ建設費が安い。貯水ができないので発生電力の調整には適さない。ダム式発電では、ダムに水を蓄えることで流量の調整ができるので、電力需要が大きいときにあわせて運転することができる。

水路式発電所

 水路式発電所は河川の水を取り入れ、比較的長い水路で発電所に導いて落差を得る方式であり、その主な設備としては、取水口、取水ダム、沈砂池、導水路、ヘッドタンク、水圧管、水車、発電機、放水路及び放水口からなる。
 取水口はごみの流入を抑制する目的で河川と直角にとることが多い。また、取水ダムには排砂門を設け、洪水時などに取水口付近に堆積した土砂を排出する。
次に、取水した水は、沈砂池に入る。ダム式発電所と異なり、取水中の土砂は取水口で完全に除くことができないため、ここで、水の流れを緩やかにして、導水路に入る前で土砂を十分に沈殿させる。導水路には、主に開きょや
無圧トンネルが用いられる。岩盤が強固なところでは素掘りのままとする場合もあるが、多くはコンクリートなどで内面の巻立てを行う。
ヘッドタンクは、水圧管の手前に設けられ、水路末端の断面積を広げて容積を大きくしたものであり、最終的な土砂の沈殿や落葉などのごみの取り除きを行うほか、発電所負荷の急増時には水の補給を行うなどの機能を有する。また、負荷遮断等の負荷急減時に、水路から流入してくる水を河川に放出するための設備を
余水吐という。

揚水発電所

揚水発電所には、別置式、タンデム式、ポンプ水車式がある。発電機と電動機を共用し、水車とポンプを兼用させた方式がポンプ水車式であり、水車の性能、ポンプの性能をそれぞれ最適に設計できるため、国内で建設される揚水発電所はほとんどこの方式である。

流込み式発電

河川の自然の流れをそのまま利用して発電する方式を流込み式発電という。貯水池などを持たない水路式発電所がこれに相当する。

調整池式発電

1日又は数日程度の河川流量を調整できる大きさを持つ池を持ち、電力需要が小さいときにその池に蓄え、電力需要が大きいときに放流して発電する方式を調整池式発電という。

【過去例題】調整池の有効貯水量V[m3]、最大使用水量10m3/sであって、発電機1台を有する調整池式発電所がある。河川から調整池に取水する自然流量QNは6m3/sで一日中一定とする。この条件で、最大使用水量QP=10m3/sで6時間運用(ピーク運用)し、それ以外の時間は自然流量より低い一定流量で運用(オフピーク運用)して、一日の自然流量分を全て発電運用に使用するものとする。

貯水池式発電

自然の湖や人工の湖などを用いてもっと長時間の需要変動に応じて河川流量を調整・使用する方式を貯水池式発電という。

水車の種類

衝動水車

 水圧管の先端がノズルになっていると、水は噴流となって噴出し、ランナのバケットにあたってランナを回転させる。このような水の力で回転する水車を衝動水車という。

 この衝動水車は、水の有効落差による位置エネルギー(圧力水頭)を、ノズルによって速度水頭(運動エネルギー)に変え、流水をランナに作用させている。ランナ部で圧力水頭を用いないので、水流が空気中を通過するような構造が可能となる。

ペルトン水車

 衝動水車のなかで、代表的なものにペルトン水車がある。ペルトン水車は、水圧管路に導かれた流水が、ノズルからジェットとなり噴射されてランナバケットに当たり、このときの衝動力でランナが回転する水車である。高落差で流量の比較的少ない地点に用いられ、比速度は小さい。

 ランナはジェットを受けるバケットとその取付部であるディスクとからなる。ノズルは水圧管につながり、これによって水の圧力水頭を速度水頭に変え、この水をジェットとしてバケットに作用させる。ノズルでは、負荷に応じて使用水量を調整するため、ノズル内にニードル弁を設け、これを動かしてジェットの断面積を変える。水車の負荷が急激に減少したときは、デフレクタでバケットにあたるジェットをそらせておいて、徐々にニードル弁を閉じ、水圧管内の水圧上昇をできるだけ抑える。
 水車を停止する場合、回転の逆方向からバケットの背面に少量の噴射水をあててブレーキ作用させるジェットブレーキを備えている。

クロスフロー水車

近年の地球温暖化防止策として、農業用水・上下水道・工業用水など少水量と低落差での発電が注目されており、代表的なものにクロスフロー水車がある。

反動水車

水の位置エネルギーを圧力エネルギーとして、流水をランナに作用させる構造の水車(圧力水頭を持つ流水がランナに流入し、ここから出るときの反動力により回転する水車)を圧力水車と呼ぶ。

代表的な水車にフランシス水車、プロペラ水車(プロペラ水車の羽根を可動としたカプラン水車)などがある。

フランシス水車

 フランシス水車は、ケーシング(渦形室)からランナに流入した水がランナを出るときに軸方向に向きを変えるように水の流れをつくる水車である。ガイドベーン(案内羽根)は、その開度によってランナに流入する水の水量を変え、水車の出力を調整することができる水車部品である。

一般に、落差40m~500mの中高落差用に用いられている。同一出力のフランシス水車を比較すると、一般に落差が高い地点に適用する水車の方が低い地点に適用するものより比速度が小さく、ランナの形状が扁平になる。

ガイドリングは、ガイドアームを介してガイドベーンと連結されており、ガイドリング位置を変化させることで、ガイドベーンの開度(角度)を調整できる。

ステイベーン(固定羽根)はステイリング(スピードリング)に直接固定されている。

ランナの流入口の隙間より背圧室に漏れ出る水の影響が支配的となり、図では全体的に、下方向の水スラスト力が支配的となる。軸受への影響を軽減するために、バランスホールやバランスパイプで背圧室の圧力を下げることにより、下方向の水スラストを軽減している。

プロペラ水車

 流水がランナを軸方向に通過するプロペラ水車もある。プロペラ水車ではランナを通過する流水が軸方向である。ランナには扇風機のような羽根がついている。流量が多く低落差の発電所で使用される。

カプラン水車

 カプラン水車はプロペラ水車の羽根を可動にしたもので、流量の変化に応じて羽根の角度を変えて調整することができるため部分負荷での効率の低下が少ない。

ランナ羽根は、羽根軸中心の周りで回転し、その先端はコンクリート基礎の表面を覆うように設けられたディスチャージリングとの間に適切な間隙を形成するようにしている。

水車のキャビテーション

運転中の水車の流水経路中のある点で圧力が低下し、そのときの飽和水蒸気圧以下になると、その部分の水は蒸発して流水中に微細な気泡が発生する。その気泡が圧力の高い個所に到達すると押し潰され消滅する。このような現象をキャビテーションという。水車にキャビテーションが発生すると、ランナやガイドベーンの壊食、効率の低下、騒音や振動の増大など水車に有害な現象が現れる。
吸出し管の高さを低くすることは、キャビテーションの防止のため有効な対策である。

  1.  キャビテーションの発生メカニズムについて 200 字程度で述べよ。
    • 運転中の水車(又はポンプ水車)は各部の流速、圧力がそれぞれ異なる。ある点の圧力がそのときの水温における飽和蒸気圧以下に低下すると、その部分の水は蒸発して水蒸気となり、流水中に微細な気泡が発生する。この気泡が周囲の水とともに流れて圧力の高い部分に達すると突然つぶれ、その瞬間に非常に高い圧力が生じる。この現象をキャビテーションという。
  2.  キャビテーションが発生した場合、運転中の機器に与える影響を二つ挙げ、合わせて 30 字程度で述べよ。
    • 以下の機器に与える影響から二つ記載されていればよい。
      1. 流水に接するランナ羽根に壊食が生じる
      2. 水車効率が低下する
      3. 振動・騒音が発生する
  3.  キャビテーションを抑制するために、発電所を設計するうえで考慮すべきこと及び水車の設計・製作上で考慮すべきことを合わせて 200 字程度で述べよ。
    •  キャビテーションを抑制するために、設計上、最も重要なのは吸出し高さの選定であり、吸出し高さを低くすることが効果的である。
       これに加えて、プロファイルゲージ等を用いてランナ羽根の形状を適切に整形し、表面を平滑に仕上げることも重要で、水の流れがランナ表面から剥離しないことでのキャビテーションの抑制が期待できる。
  4.  運用開始後に点検等でキャビテーションを確認した場合、運転上実施すべき対策を 30 字程度で述べよ。
    • 部分負荷運転の下限値を上げることでキャビテーションの抑制を図る。

吸出し管

 吸出し管は、反動水車のランナ出口から放水路を結ぶ管で、単なる導水管として用いられるだけでなく、管内に充満する水頭を利用して、ランナ出口の圧力を大気圧以下に保ち、また、ランナ出口の水の持つ運動エネルギーをランナ出口から放水面までの落差として回収するためのものである。水車ランナと放水面までの落差を有効に利用し、水車の出力を増加する効果がある。
 ランナの指定位置の標高と放水面の標高差を吸出し高さと言い、これを高くとりすぎるとキャビテーションが発生しやすくなる。標準大気圧に相当する理論上の水中の高さは約10mであるが、キャビテーションを考慮して、吸出し高さは通常7m以下としている。

水車の水撃作用

 発電機の負荷を急激に遮断又は急激に増やした場合は、それに応動して水車の使用水量が急激に変化し、流速が減少又は増加するため、水圧管内の圧力の急上昇又は急降下が起こる。このような圧力の変動を水撃作用という。

 水撃作用発生までの流れを、エネルギーの観点から説明すると、こうだ。発電機や発電所構内事故あるいは送電線事故などにより、保護装置が発電機の負荷を自動遮断した場合、水車・発電機が危険な速度まで速度上昇しないよう、(調速機及び保護装置により)ガイドベーンを急速閉止する。この場合、管路を流れている水を急激に停止させたことにより、水の運動エネルギー(水流による慣性)が圧力エネルギー(高圧力)に変わる。これにより、ガイドベーン直前の水圧が上昇し、その圧力が水圧管路や圧力トンネルに伝搬する現象である。

 水撃作用は、水圧管の長さが長いほど、水車案内羽根あるいは入口弁の閉鎖時間が短いほど、いずれも大きくなる。

 設計段階で水撃作用に対する機械的強度の確保や対策設備の設置を考慮しなかった場合、水車及び水路には、水撃作用の圧力変動により、水車のケーシング、水圧管路あるいは圧力トンネルを損傷するおそれがある。

機械的強度確保を除く水撃対策

 水撃作用による被害を避けるために、機械的強度の確保とは別に、旧来から採用されてきた設備対策を二つ挙げる。

サージタンク

 水撃作用の発生による影響を緩和する目的で設置される水圧調整用水槽をサージタンクという。サージタンクにはその構造・動作によって、差動式、小孔式、水室式などがあり、いずれも大気開放構造である。

 水圧管路(圧力水路)と導水路である圧力トンネル(水圧管)の間に、サージタンクを設けることにより、水槽内部の水位の昇降(水路の途中に自由水面)によって、水撃作用による圧力変動を吸収することができる。

 差動式サージタンクは、負荷遮断時の圧力増加エネルギーをライザ(上昇管)内の水面上昇によってすばやく吸収し、そのあとで小穴と通してタンク内の水位をゆっくり通常のタンク内水位に戻す作用がある。

制圧機

 制圧機をケーシングあるいは水圧管路の末端に設置し、水圧が危険圧力まで上昇しないよう、調速機(ガバナー)によるガイドベーンの急速閉止に連動して、この制圧機の弁体を開放し、ケーシング及び水圧管路内の水圧を逃がすことで圧力上昇を抑える。

水車の比速度

過去問 再出題

 比速度とは、任意の水車の形(幾何学的形状)と運転状態(水車内の流れの状態)とを相似に保って大きさを変えたとき、単位落差(1m)で単位出力(1kW)を発生させる仮想水車の回転速度のことである。
水車では、ランナの形や特性を表すものとしてこの比速度が用いられ。水車の種類ごとに適切な比速度の範囲が存在する。
水車の回転速度をn[min-1]、有効落差をH[m]、ランナ1個当たり又はノズル1個当たりの出力をP[kW]とすれば、この水車の比速度nsは、次の式で表される。
\(\displaystyle n_s=n\frac{P^{\frac{1}{2}}}{H^{\frac{5}{4}}}\)
通常、ペルトン水車の比速度は、フランシス水車の比速度より小さい
比速度の大きな水車を大きな落差で使用し、吸出し管を用いると、放水速度が大きくなって、キャビテーションが生じやすくなる。そのため、各水車には、その比速度に適した有効落差が決められている。

2023年3種前期電力問1、2018年3種電力問2

無拘束速度

 ある有効落差、水口開度、吸出し高さにおいて無負荷運転させたとき、回転速度は無制限に上昇せずに一定の速度に落ち着く。この速度を無拘束速度という。また、その起こりえる最大のものを最大無拘束速度という。
 水車の無拘束速度は、ペルトン水車やフランシス水車では一般に最高落差時に最大となり、カプラン水車ではガイドベーンとランナベーンがオフカム状態でランナベーン角度が約10度付近になったとき最大となる。
 ペルトン水車の場合、定格回転速度の概ね1.5~2.0倍、フランシス水車の場合、定格速度の概ね1.6~2.2倍になる。
 また、揚水発電所で用いるフランシス水車においては、ポンプ水車は一般にランナ径が水車専用機より大きく、回転速度が高くなると円板摩擦損失などが急増する。このため、ポンプ水車の無拘束速度は水車専用機より低くなる。

水力発電所で使用される弁

 水圧管路を経た水は入口弁を通って水車へと送られる。入口弁は水車に通水又は遮水する目的で設置され、その発電所の地点特性(設計緒元)に合わせて、適切なタイプの入口弁が選定される。

ロータリ弁

弁体が回転することで、開閉を行う。開放時にさえぎるものがないく、損失がほとんどない。ボール弁もロータリ弁の一種である。

高落差大容量の水車入口弁に採用される。損失落差がほとんどない。

バイプレーン弁(複葉弁)

バタフライ弁の弁体を2重構造の複葉型に改良したもの。2重構造により、強度を確保しつつ弁体厚さを薄くできるため、通水断面積が同径のバタフライ弁より増加するため、損失が少なくなる。

低~中落差の水車入口弁に採用される。

バタフライ弁(蝶形弁)

短円筒状の弁箱内の円盤状の弁体が弁棒を軸に回転することで流体を制御する。ボール弁と同様に弁軸を90度回転する事により開閉を行う。

低~中落差の水車入口弁に採用される。

ゲート弁(仕切り弁)

弁体が流路を仕切って開閉する構造のもの。バルブの弁箱に収納された円盤状の弁体が、流路に対し直角に動作して、流路の開閉を行う。

低~中落差の水車入口弁に採用される。

流体力学

流体力学の連続の式

流体力学の連続の式より、途中に分岐のない流路を定常状態で流体が流れる場合、流路の任意の断面における質量流量はすべて相等しい。質量流量はQ=Av(流量Q[m3/s]、断面積A[m2]、流体の速度v[m/s])となる。
\(\displaystyle Q=Av[m^3/s]\)

ベルヌーイの定理

水管を流れる水の物理的性質を示す式として知られるベルヌーイの定理は、エネルギー保存の法則に基づく定理である。

有効落差(全水頭)H[m]は、ベルヌーイの定理から、
\(\displaystyle H=h+\frac{p}{ρg}+\frac{v^2}{2g}[m]\)
ここで、\(\displaystyle h\)は位置水頭[m]、\(\displaystyle \frac{p}{ρg}\)は圧力水頭[m]、\(\displaystyle \frac{v^2}{2g}\)は速度水頭[m]である。一般的に、重力加速度はg=9.8[m/s2]、水の密度はρ=1000[kg/m3]、圧力p[Pa]、流速v[m/s]である。

水力発電所の運用

 我が国の大部分の水力発電所において、水車や発電機の始動・運転・停止などの操作は遠隔監視方式で行われ、発電所は無人化されている。

年間計画発電電力量

ある河川のある地点に貯水池を有する水力発電所を設ける場合の発電計画について、

年間平均流量Q[m3/s]は、kを流出係数、pを年間降水量[mm]、Aを流域面積[km2]とすると、次式となる。

\(\displaystyle Q=kpA \times\frac{10^3}{60 \times60 \times24 \times365}\)[m3/s]

流況曲線

 河川の1日の流量を、年間を通して流量の多いものから順番に配列して描いた流況曲線は、発電電力量の計画において重要な情報となる。

発電効率

放水地点の水面を基準面とすれば、基準面から貯水池の静水面までの高さH0[m]を一般に総落差という。また、発電時の水路や水圧管の壁と水との摩擦によるエネルギー損失に相当する高さhG[m]を損失水頭という。さらに、H0とh1の差(総落差から損失水頭を差し引いたもの)H=H0-hGを一般に有効落差という。有効落差に相当する位置エネルギーが水車に動力として供給される。

いま、Q[m3/s]の流量が水車に流れ込んでいるとき、Q[m3]の水の質量はQ×103[kg]であるので、この水に働く重力は、重力加速度を9.8[m/s2]とすると、9.8Q×103[N]である。(F[N]=m[kg]×g[m/s2])
この水が有効落差H[m]落下するときにする仕事量は9.8QH×103[J]となるので、Q[m3/s]の水が流れ続けるときの動力は以下となる。

9.8QH ×103 [J/s] =9.8QH ×103 [W] =9.8QH [kW]

水車の効率をηTとしたときの水車出力PTと、発電機の効率をηGとしたときの水車出力PGのはそれぞれ以下となる。

水車出力:\( \displaystyle P_T=9.8QHη_T\)[kW]

発電機出力:\( \displaystyle P_G=9.8QHη_Tη_G\)[kW]

揚水総合効率

揚水入力(発電電動機入力)は、流量をQ[m3/s]、ηMを電動機効率、ηPをポンプ効率、H[m]を「総落差+揚水損失水頭」とすると、

\(\displaystyle P_P=\frac{9.8Q_PH}{η_Mη_P}\)[kW]

で与えられる。ここで、揚水損失水頭とは、揚水時の水路や水圧管の壁と水との摩擦によるエネルギー損失に相当する高さhP[m]となる。すなわち、

\(\displaystyle H=H_0(1+h_P)\)となり、

\(\displaystyle P_P=\frac{9.8Q_PH_0(1+h_P)}{η_Mη_P}\)[kW]

揚水所要時間TP[h]は、発電運転時間TG[h]使用した水量V[m3]と同量を揚水するのにかかる時間である。発電運転時間に使用した水量Vは、

\(\displaystyle V=Q_GT_G\times3600\)[m3]

同様にして、揚水ポンプ運転時間に揚水した水量Vは、

\(\displaystyle V=Q_PT_P\times3600\)[m3]

揚水総合効率ηは、同水量での「発電電力量/揚水電力量」である。つまり、

\(\displaystyle 揚水総合効率η=\frac{発電運転時間での発電電力量}{揚水所要時間での使用発電量}\times100\)[%]

\(\displaystyle η=\frac{P_G\times T_G}{P_P\times T_P}\times100\)[%]

調速機

 水車の調速機は、発電機を系統に並列するまでの間においては水車の回転速度を制御し、発電機が系統に接続した後は出力を調整し、また、事故時には回転速度の異常な上昇を防止する装置である。調速機は回転速度などを検出し、規定値との偏差などから演算部で必要な制御信号を作って、パイロットバルブや配圧弁を介してサーボモータを動かし、ペルトン水車においてはニードル弁、フランシス水車においてはガイドベーンの開度を調整する。

自動電圧調整器

自動電圧調整器は出力電圧の大きさを一定に保持する機能を有する装置である。

水車発電機

 水力発電所に用いられる水車発電機は直結する水車の特性からその回転速度はおおむね100min-1~1200min-1とタービン発電機に比べ低速である。したがって、商用周波数50/60Hzを発生させるために磁極を多くとれる突極機を用い、回転界磁形の三相同期発電機が主に用いられている。大形機では据付面積が小さく落差を有効に使用できる水車を発電機の下方に直結した立軸形が用いられることが多い。タービン発電機に比べ、直径が大きく軸方向の長さが短い。

 水車発電機は、電力系統の安定度の面及び負荷遮断時の速度変動を抑える点から発電機の経済設計以上のはずみ車効果を要求される場合が多く、回転子直径がより大きくなり、鉄心の鉄量が多い、いわゆる鉄機械となる。

 鉄機械は、体格が大きく重量が重く高価になるが、短絡比が大きく、同期インピーダンスが小さくなり、電圧変動率が小さく、安定度が高く、線路充電容量が大きくなるといった利点をもつ。

水力発電所に用いられるダムの種類

重力ダム

コンクリートの重力によって水圧などの外力に耐えられるようにしたダムであって、体積が大きくなるが構造が簡単で安定性が良い。我が国では、最も多く用いられている。

アーチダム

水圧などの外力を両岸の岩盤で支えるようにアーチ型にしたダムであって、両岸の幅が狭く、岩盤が丈夫なところに作られ、コンクリートの量を節減できる。

ロックフィルダム

岩石を積み上げて作るダムであって、内側には、砂利、アスファルト、粘度などが用いられている。ダムは大きくなるが、資材の運搬が困難で建設地付近に岩石や砂利が多い場所に適している。

アースダム

土壌を主材料としてダムであって、灌漑用の池などを作るのに適している。周辺に土取場所がある場合に採用される。

アースダムは土堰堤(どえんてい)とも呼ばれ、最も古典的なダムの形式で、均一に台形状に盛り土を行って堰堤を形成するもの。水力発電用のダムとして用いられることは極めて稀である。

取水ダム

水路式発電所の水路に水を導入するため河川に設けられるダムであって、ダムの高さは低く、越流形コンクリートダムなどが用いられている。

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