水力発電の学習帳

2021年5月9日

水車

衝動水車

水をノズルから噴出させ、水の位置エネルギーを運動エネルギーに変えた(水の落差による圧力水頭を速度水頭に変えて)流水をランナに作用させる構造の水車を衝動水車と呼ぶ。この衝動水車は、ランナ部で圧力水頭を用いないので、水流が空気中を通過するような構造が可能となる。

代表的なものにペルトン水車がある。ペルトン水車は、水圧管路に導かれた流水が、ノズルから噴射されてランナバケットに当たり、このときの衝動力でランナが回転する水車である。高落差で流量の比較的少ない地点に用いられる。

近年の地球温暖化防止策として、農業用水・上下水道・工業用水など少水量と低落差での発電が注目されており、代表的なものにクロスフロー水車がある。

反動水車

水の位置エネルギーを圧力エネルギーとして、流水をランナに作用させる構造の水車(圧力水頭を持つ流水がランナに流入し、ここから出るときの反動力により回転する水車)を圧力水車と呼ぶ。

代表的な水車にフランシス水車がある。フランシス水車は、ケーシング(渦形室)からランナに流入した水がランナを出るときに軸方向に向きを変えるように水の流れをつくる水車である。ガイドベーン(案内羽根)は、その開度によってランナに流入する水の水量を変え、水車の出力を調整することができる水車部品である。一般に、落差40m~500mの中高落差用に用いられている。同一出力のフランシス水車を比較すると、一般に落差が高い地点に適用する水車の方が低い地点に適用するものより比速度が小さく、ランナの形状が扁平になる。

流水がランナを軸方向に通過するプロペラ水車もある。プロペラ水車ではランナを通過する流水が軸方向である。ランナには扇風機のような羽根がついている。流量が多く低落差の発電所で使用される。

カプラン水車はプロペラ水車の羽根を可動にしたもので、流量の変化に応じて羽根の角度を変えて効率がよい運転ができる。

水車のキャビテーション

運転中の水車の流水経路中のある点で圧力が低下し、そのときの飽和水蒸気圧以下になると、その部分の水は蒸発して流水中に微細な気泡が発生する。その気泡が圧力の高い個所に到達すると押し潰され消滅する。このような現象をキャビテーションという。水車にキャビテーションが発生すると、ランナやガイドベーンの壊食、効率の低下、騒音や振動の増大など水車に有害な現象が現れる。
吸出し管の高さを低くすることは、キャビテーションの防止のため有効な対策である。

水車の水撃作用

発電機の負荷を急激に遮断又は急激に増やした場合は、それに応動して水車の使用水量が急激に変化し、流速が減少又は増加するため、水圧管内の圧力の急上昇又は急降下が起こる。このような圧力の変動を水撃作用という。

水撃作用は、水圧管の長さが長いほど、水車案内羽根あるいは入口弁の閉鎖時間が短いほど、いずれも大きくなる。

サージタンク

水撃作用の発生による影響を緩和する目的で設置される水圧調整用水槽をサージタンクという。サージタンクにはその構造・動作によって、差動式、小孔式、水室式などがあり、いずれも大気開放構造である。

圧力水路と水圧管との接続箇所に、サージタンクを設けることにより、水槽内部の水位の昇降によって、水撃作用を軽減することができる。

差動式サージタンクは、負荷遮断時の圧力増加エネルギーをライザ(上昇管)内の水面上昇によってすばやく吸収し、そのあとで小穴と通してタンク内の水位をゆっくり通常のタンク内水位に戻す作用がある。

水車の比速度

比速度とは、任意の水車の形(幾何学的形状)と運転状態(水車内の流れの状態)とを相似に保って大きさを変えたとき、単位落差(1m)で単位出力(1kW)を発生させる仮想水車の回転速度のことである。
水車では、ランナの形や特性を表すものとしてこの比速度が用いられ。水車の種類ごとに適切な比速度の範囲が存在する。
水車の回転速度をn[min-1]、有効落差をH[m]、ランナ1個当たり又はノズル1個当たりの出力をP[kW]とすれば、この水車の比速度nsは、次の式で表される。
\(\displaystyle n_s=n\frac{P^{\frac{1}{2}}}{H^{\frac{5}{4}}}\)
通常、ペルトン水車の比速度は、フランシス水車の比速度より小さい。
比速度の大きな水車を大きな落差で使用し、吸出し管を用いると、放水速度が大きくなって、キャビテーションが生じやすくなる。そのため、各水車には、その比速度に適した有効落差が決められている。

流体力学

流体力学の連続の定理

流体力学の連続の定理より、Q=Av(流量Q[m3/s]、断面積A[m2]、流体の速度v[m/s])となる。
\(\displaystyle Q=Av[m^3/s]\)

ベルヌーイの定理

有効落差H[m]は、ベルヌーイの定理から、
\(\displaystyle H=h+\frac{p}{ρg}+\frac{v^2}{2g}[m]\)
ここで、\(\displaystyle h\)は位置水頭[m]、\(\displaystyle \frac{p}{ρg}\)は圧力水頭[m]、\(\displaystyle \frac{v^2}{2g}\)は速度水頭[m]である。一般的に、重力加速度はg=9.8[m/s2]、水の密度はρ=1000[kg/m3]、圧力p[Pa]、流速v[m/s]である。

発電効率

放水地点の水面を基準面とすれば、基準面から貯水池の静水面までの高さH0[m]を一般に総落差という。また、発電時の水路や水圧管の壁と水との摩擦によるエネルギー損失に相当する高さhG[m]を損失水頭という。さらに、H0とh1の差H=H0-hGを一般に有効落差という。

いま、Q[m3/s]の流量が水車に流れ込んでいるとき、Q[m3]の水の質量はQ×103[kg]であるので、この水に働く重力は、重力加速度を9.8[m/s2]とすると、9.8Q×103[N]である。(F[N]=m[kg]×g[m/s2])
この水が有効落差H[m]落下するときにする仕事量は9.8QH×103[J]となるので、Q[m3/s]の水が流れ続けるときの動力は以下となる。

9.8QH ×103 [J/s] =9.8QH ×103 [W] =9.8QH [kW]

水車の効率をηTとしたときの水車出力PTと、発電機の効率をηGとしたときの水車出力PGのはそれぞれ以下となる。

水車出力:Pw=9.8QHηw [kW]

発電機出力:Pg=9.8QHηwηg [kW]

水車出力:\( \displaystyle P_T=9.8QHη_T\)[kW]

発電機出力:\( \displaystyle P_G=9.8QHη_Tη_G\)[kW]

揚水総合効率

揚水入力は\(\displaystyle P_P=\frac{9.8Q_PH}{η_Mη_P}\)[kW]で与えられる。ここで、ηMは電動機効率、ηPはポンプ効率。また、ここでのHは「総落差+揚水損失水頭」である。揚水損失水頭とは、揚水時の水路や水圧管の壁と水との摩擦によるエネルギー損失に相当する高さhP[m]となる。

\(\displaystyle H=H_0(1+h_P)\)となり、

\(\displaystyle P_P=\frac{9.8Q_PH_0(1+h_P)}{η_Mη_P}\)[kW]

 

揚水所要時間TP[h]は、発電運転時間TG[h]使用した水量V[m3]と同量を揚水するのにかかる時間である。発電運転時間に使用した水量Vは、

\(\displaystyle V=Q_GT_G\times3600\)[m3]

同様にして、揚水ポンプ運転時間に揚水した水量Vは、

\(\displaystyle V=Q_PT_P\times3600\)[m3]

 

揚水総合効率ηは、同水量での「発電電力量/揚水電力量」である。つまり、

\(\displaystyle 揚水総合効率η=\frac{発電運転時間での発電電力量}{揚水所要時間での使用発電量}\times100\)[%]

\(\displaystyle η=\frac{P_G\times T_G}{P_P\times T_P}\times100\)[%]

調速機

水車の調速機は、発電機を系統に並列するまでの間においては水車の回転速度を制御し、発電機が系統に接続した後は出力を調整し、また、事故時には回転速度の異常な上昇を防止する装置である。調速機は回転速度などを検出し、規定値との偏差などから演算部で必要な制御信号を作って、パイロットバルブや配圧弁を介してサーボモータを動かし、ペルトン水車においてはニードル弁、フランシス水車においてはガイドベーンの開度を調整する。

自動電圧調整器

自動電圧調整器は出力電圧の大きさを一定に保持する機能を有する装置である。

水車発電機

水力発電所に用いられる水車発電機は直結する水車の特性からその回転速度はおおむね100min-1~1200min-1とタービン発電機に比べ低速である。したがって、商用周波数50/60Hzを発生させるために磁極を多くとれる突極機を用い、回転界磁形の三相同期発電機が主に用いられている。大形機では据付面積が小さく落差を有効に使用できる水車を発電機の下方に直結した立軸形が用いられることが多い。タービン発電機に比べ、直径が大きく軸方向の長さが短い。

水車発電機は、電力系統の安定度の面及び負荷遮断時の速度変動を抑える点から発電機の経済設計以上のはずみ車効果を要求される場合が多く、回転子直径がより大きくなり、鉄心の鉄量が多い、いわゆる鉄機械となる。

鉄機械は、体格が大きく重量が重く高価になるが、短絡比が大きく、同期インピーダンスが小さくなり、電圧変動率が小さく、安定度が高く、線路充電容量が大きくなるといった利点をもつ。

水力発電所の運用

年間計画発電電力量

ある河川のある地点に貯水池を有する水力発電所を設ける場合の発電計画について、

年間平均流量Q[m3/s]は、kを流出係数、pを年間降水量[mm]、Aを流域面積[km2]とすると、次式となる。

\(\displaystyle Q=kpA \times\frac{10^3}{60 \times60 \times24 \times365}\)[m3/s]

揚水発電所

揚水発電所には、別置式、タンデム式、ポンプ水車式がある。発電機と電動機を共用し、水車とポンプを兼用させた方式がポンプ水車式であり、水車の性能、ポンプの性能をそれぞれ最適に設計できるため、国内で建設される揚水発電所はほとんどこの方式である。

調整池式発電所

調整池の有効貯水量V[m3]、最大使用水量10m3/sであって、発電機1台を有する調整池式発電所がある。河川から調整池に取水する自然流量QNは6m3/sで一日中一定とする。この条件で、最大使用水量QP=10m3/sで6時間運用(ピーク運用)し、それ以外の時間は自然流量より低い一定流量で運用(オフピーク運用)して、一日の自然流量分を全て発電運用に使用するものとする。

水力発電所に用いられるダムの種類

重力ダム

コンクリートの重力によって水圧などの外力に耐えられるようにしたダムであって、体積が大きくなるが構造が簡単で安定性が良い。我が国では、最も多く用いられている。

アーチダム

水圧などの外力を両岸の岩盤で支えるようにアーチ型にしたダムであって、両岸の幅が狭く、岩盤が丈夫なところに作られ、コンクリートの量を節減できる。

ロックフィルダム

岩石を積み上げて作るダムであって、内側には、砂利、アスファルト、粘度などが用いられている。ダムは大きくなるが、資材の運搬が困難で建設地付近に岩石や砂利が多い場所に適している。

アースダム

土壌を主材料としてダムであって、灌漑用の池などを作るのに適している。周辺に土取場所がある場合に採用される。

アースダムは土堰堤(どえんてい)とも呼ばれ、最も古典的なダムの形式で、均一に台形状に盛り土を行って堰堤を形成するもの。水力発電用のダムとして用いられることは極めて稀である。

取水ダム

水路式発電所の水路に水を導入するため河川に設けられるダムであって、ダムの高さは低く、越流形コンクリートダムなどが用いられている。

過去問題:
電験3種過去問【2009年電力 問1】(水力発電効率)
電験3種過去問【2010年電力 問1】(衝撃水車)
電験3種過去問【2011年電力 問1】(水力発電所の出力低下原因)
電験3種過去問【2012年電力 問1】(水力発電の理論式)
電験3種過去問【2013年電力 問1】(水力発電に用いる水車)
電験3種過去問【2014年電力 問1】(水車の調速機)
電験3種過去問【2014年電力 問15】(位置水頭と水車出力計算)
電験3種過去問【2015年電力 問1】(理論水力の単位)
電験3種過去問【2016年電力 問1】(揚水発電所の揚水総合効率)
電験3種過去問【2016年電力 問2】(水車発電機とタービン発電機の特徴)
電験3種過去問【2017年電力 問1】(水力発電所に用いられるダムの種類)
電験3種過去問【2017年電力 問2】(水車のキャビテーション)
電験3種過去問【2018年電力 問2】(水車の比速度)
電験3種過去問【2018年電力 問15】(調整池式発電所の計算)
電験3種過去問【2019年電力 問1】(水力発電所の水車と発電機)
電験3種過去問【2019年電力 問2】(水車の構造と特徴)
電験3種過去問【2020年電力 問1】(水撃作用とサージタンク)
電験3種過去問【2020年電力 問15】(水力発電所の年間発電電力量)