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変電所の学習帳

2023年12月2日

変電所の役割

 変電所とは、発電所から送電線によって送られてきた電気の電圧・電流を変成したり、電気の集中・配分を行う。その他、電気の質をよくするために電圧・電力の調整や無効電力の配分制御を行う。

 変電所は、用途の面から、送電用変電所、配電用変電所などに分類されるが、東日本と西日本の間の連系に用いられる周波数変換所や北海道と本州の連系に用いられる交直変換所も変電所の一種として分類されることがある。

電力系統における変電所の役割と機能

  1. 主に送電効率向上のための昇圧や需要家が必要とする電圧への降圧を行う。構外から送られる電気を、変圧器やその他の電気機械器具により変成し、変成した電気を構外に送る。
  2. 送電線路で短絡や地絡事故が発生したとき、保護継電器により事故を検出し、遮断器にて事故回線を系統から切り離し、事故の波及を防ぐ系統保護の役割を担う。
  3. 送変電設備の局部的な過負荷運転を避けるため、開閉装置により系統切換を行って電力潮流を調整する。
  4. 無効電力調整のための調相設備を有し、重負荷時には電力用コンデンサを投入し、軽負荷時には分路リアクトルを投入して、電圧をほぼ一定に保持する。
  5. 負荷変化に伴う供給電圧の変化時に、負荷時タップ切換変圧器等により電圧を調整する。

変電所の主な構成設備

開閉設備

 開閉設備には、主に以下のような種類がある。

  • 消弧装置を持たない断路器
  • 主回路の接地を目的とする接地開閉器
  • 負荷電流や故障電流を遮断するための遮断器

 それぞれの開閉設備について詳しくはこちら

変圧器

変圧器の結線方式

 変圧器の一次側、二次側の結線にY結線及び△結線を用いる方式は、結線の組合せにより四つのパターンがある。

このうち、△-△結線はひずみ波の原因となる励磁電流の第3高調波が還流し、吸収される効果が得られるが、一方で中性点の接地が必要となる場合は適さない。

Y-Y結線は一次側、二次側とも中性点接地が可能という特徴を有する。\△-Y結線及びY-△結線は第3高調波の還流回路があり、一次側若しくは二次側の中性点接地が可能である。

△-Y結線は昇圧用に、Y-△結線は降圧用に用いられることが多い。

 特別高圧系統では変圧器中性点を各種の方法で接地することから、Y-Y結線の変圧器が用いられるが、第3高調波の還流の効果を得る狙いから△結線を用いた三次巻線を採用していることが多い。

保護リレー/計器用変成器

 保護リレーは電力系統に事故が発生したとき、事故を検出し、事故の位置や種類を識別して、事故箇所を系統から直ちに切り離す指令を出して遮断器を動作させる制御装置である。

 計器用変成器は、計器用変圧器と変流器とに分けられ、高電圧あるいは大電流の回路から計器や保護継電器に必要な適切な電圧や電流を取り出すために設置される。

 各種保護リレーや計器用変成器について詳しくはこちら

需要家との保護協調

高圧需要家に構内事故が発生した場合、配電用変電所の保護リレーよりも先に同需要家の保護リレーが動作して遮断器に切り離し指令を出すことで、確実に事故を除去する。

各種限時特性

  • 瞬時特性
    ある電流以上では、瞬時に動作する特性。
  • 定限時特性
    ある電流以上では、電流の大きさに関わらず,一定時間で動作する特性。
  • 反限時特性
    電流値と動作時間が反比例関係となる特性で、電流値が大きければ早く動作する。
  • 反限時定限時特性
    反限時特性と定限時特性を合わせた特性。電流の小さい時は反限時特性,電流が大きくなると一定時間で動作する。

調相設備

 調相設備は、電圧の調整と送電系統の安定度向上、送電線路の力率改善による電力損失の軽減を目的として設置される。これらの調相設備は送電回路に並列に接続され、変圧器の三次側や母線に設置される。

 代表的なものには、静止器と呼ばれる、分路リアクトルや電力用コンデンサ、静止形無効電力補償装置(SVC)やなどがあり、回転機と呼ばれる同期調相機などがある。

 調相設備について詳しくはこちら

変電所の絶縁設計

変電所の絶縁設計において、支配的な要素となるのが雷サージである。それらについての対策を行う必要がある。

変電所内への直撃雷の防止対策

変電所の変圧器や開閉器などの電力機器を雷の直撃に耐えるように絶縁することは極めて困難であるため、架空地線と避雷鉄塔による変電所内の遮へいと接地を施して、直撃雷の発生を防止する。

送電線からの侵入雷によるサージ低減対策

送電線からの侵入雷は、送電線への直撃雷、鉄塔フラッシオーバ、誘導雷によるものがある。いずれの場合も避雷器を変圧器付近、母線、線路引き込み口、あるいはそれらを組み合わせて接地して、雷サージの低減を行うことにより、保護する機器の絶縁レベルとの協調を行う。

低圧制御回路におけるケーブル施設時でのサージ低減対策

金属シース付き低圧制御ケーブルを採用しシースを接地する。低圧制御ケーブルを高電圧ケーブルから離すなどを行う。

パーセントインピーダンス

パーセントインピーダンス(単位法)について詳しい解説はこちら

 電力系統では定格の異なる多くの機器や線路が接続されている。単位法では、これらの機器などの定数が統一的に記述されるので、取り扱いが容易となる。三相回路の場合には、線間電圧\(V_B\)[V]と三相容量\(P_B\)[V・A]を基準にとると、基準線電流\(I_B\)[A]と基準インピーダンス\(Z_B\)[Ω]は次式となり、インピーダンス\(Z\)[Ω]の単位法での値\(Z_{pu}\)[p.u.]は①式のように表される。
 \(I_B=\displaystyle\frac{P_B}{\sqrt3V_B}\)[A] \(Z_B=\displaystyle\frac{V_B^2}{P_B}\)[Ω] 

 \(\displaystyle Z_{pu}=\frac{Z}{Z_B}\)[p.u.] ……①

変形すると、

 \(\displaystyle Z_{pu}=\frac{P_BZ}{V_B^2}\)[p.u.] 

百分率インピーダンス\(\%Z\)[%]は以下で与えられる。
ここで、基準インピーダンス\(Z_B\)[Ω]、基準容量\(P_B\)[MVA]、基準電圧\(V_B\)[kV]である。

 \(\displaystyle \%Z=\frac{P_BZ}{V_B^2}\times100\)[%]

 多くの電力機器の単位法でのインピーダンスは、機器の定格電圧と定格容量を基準として与えられる。この基準でのインピーダンスは、発電機や変圧器では定格容量や定格電圧によらずほぼ一定値となるので、定数の入力間違いなどの確認に便利である。たとえば、タービン発電機では、直軸過渡リアクタンスはほぼ0.2~0.4p.u.の間になる。
また、変圧器で接続された系統では、2次側のオーム値で表現されたインピーダンス\(Z_2\)[Ω]を、1次側に換算したインピーダンス\(Z_{2(1)}\)[Ω]にするには、変圧比(1次側\(n_1\)、2次側\(n_2\))に応じた換算が②式のように必要である。
 \(Z_{2(1)}=\displaystyle\left(\frac{n_1}{n_2}\right)^2Z_{2}\)[Ω] ……②
一方、単位法では、一般に基準電圧として定格電圧が選ばれるので、基準容量が同じであればインピーダンス換算は必要ではない。ただし、異なった容量を基準とした単位法では、容量に応じた換算が必要であり、容量\(P_B\)[V・A]を基準とした単位法でのインピーダンス\(Z_{Bpu}\)[p.u.]は、容量\(P_{R}\)[V・A]を基準とした単位法でのインピーダンス\(Z_{Rpu}\)[p.u.]を用いて③式により求められる
 \(Z_{Bpu}=\displaystyle Z_{Rpu}\times\frac{P_B}{P_R}\)[p.u.] ……③

基準線電流\(I_B\)[A]で単位法でのインピーダンス\(Z_{Bpu}\)[p.u.]に流れる三相短絡電流\(I_S\)は、
\(\displaystyle I_S=\frac{I_B}{Z_{Bpu}}\)[A]

変圧器の並行運転

 変電所の負荷の増大などに対応するため、複数台の変圧器を並行運転することが必要となる。変圧器の並行運転に必要な条件は、各変圧器が容量に比例した電流を分担し(条件①)、変圧器間の循環電流が実用上問題ないレベルとなる(条件②)ことである。
 条件①を満足するためには、各変圧器の自己容量ベースの短絡インピーダンスが等しくなければならない。各変圧器を流れる電流の分担率は短絡インピーダンスに反比例する。
条件②を満足するためには、変圧比の差が小さいことが必要である。変圧比はタップにより変化するため、定格タップ以外の値についても確認する必要がある。また、結線(星形結線、三角結線など)により二次側電圧に位相の差が生じるため、これによる循環電流が生じないような結線・接続とする必要がある。

変電所母線の結線方式

単母線方式

所要機器及びスペースが少なくすみ、経済的に有利となる一方で、母線事故があった場合に当該母線が停止となり、また、母線側断路器等の点検のために、全停電となる場合があるなど、供給信頼性は低い。

複母線方式

母線切換のための断路器、鉄構等の設備が増え、所要面積が増加する一方で、機器点検や系統運用が容易となり、母線事故が発生しても、接続されている送電線や変圧器を他の母線に直ちに変更することができるなど、供給信頼性が高い。