パーセントインピーダンスについて
パーセントインピーダンスの定義
電力系統では定格の異なる多くの機器や線路が接続されている。単位法では、これらの機器などの定数が統一的に記述されるので、取り扱いが容易となる。三相回路の場合には、線間電圧\(V_B\)[V]と三相容量\(P_B\)[V・A]を基準にとると、基準線電流\(I_B\)[A]と基準インピーダンス\(Z_B\)[Ω]は次式となり、インピーダンス\(Z\)[Ω]の単位法での値\(Z_{pu}\)[p.u.]は①式のように表される。
\(I_B=\displaystyle\frac{P_B}{\sqrt3V_B}\)[A] \(Z_B=\displaystyle\frac{V_B^2}{P_B}\)[Ω]
\(\displaystyle Z_{pu}=\frac{Z}{Z_B}\)[p.u.] ……①
変形すると、
\(\displaystyle Z_{pu}=\frac{P_BZ}{V_B^2}\)[p.u.]
百分率インピーダンス\(\%Z\)[%]は以下で与えられる。
ここで、インピーダンス\(Z\)[Ω]、基準容量\(P_B\)[MVA]、基準電圧\(V_B\)[kV]である。
\(\displaystyle \%Z=\frac{P_BZ}{V_B^2}\times100\)[%]
多くの電力機器の単位法でのインピーダンスは、機器の定格電圧と定格容量を基準として与えられる。この基準でのインピーダンスは、発電機や変圧器では定格容量や定格電圧によらずほぼ一定値となるので、定数の入力間違いなどの確認に便利である。たとえば、タービン発電機では、直軸過渡リアクタンスはほぼ0.2~0.4p.u.の間になる。
また、変圧器で接続された系統では、2次側のオーム値で表現されたインピーダンス\(Z_2\)[Ω]を、1次側に換算したインピーダンス\(Z_{2(1)}\)[Ω]にするには、変圧比(1次側\(n_1\)、2次側\(n_2\))に応じた換算が②式のように必要である。
\(Z_{2(1)}=\displaystyle\left(\frac{n_1}{n_2}\right)^2Z_{2}\)[Ω] ……②
一方、単位法では、一般に基準電圧として定格電圧が選ばれるので、基準容量が同じであればインピーダンス換算は必要ではない。ただし、異なった容量を基準とした単位法では、容量に応じた換算が必要であり、容量\(P_B\)[V・A]を基準とした単位法でのインピーダンス\(Z_{Bpu}\)[p.u.]は、容量\(P_{R}\)[V・A]を基準とした単位法でのインピーダンス\(Z_{Rpu}\)[p.u.]を用いて③式により求められる
\(Z_{Bpu}=\displaystyle Z_{Rpu}\times\frac{P_B}{P_R}\)[p.u.] ……③
基準線電流\(I_B\)[A]で単位法でのインピーダンス\(Z_{Bpu}\)[p.u.]に流れる三相短絡電流\(I_S\)は、
\(\displaystyle I_S=\frac{I_B}{Z_{Bpu}}\)[A]
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単位法でのインピーダンスの取扱いについて詳しく知る
単位法でのインピーダンスを系統全体の基準容量に合わせる理由
電力系統は、その途中に様々な容量の変圧器(機器)を挟んで異なる電圧階級の系統がつながれている。このような系統では、系統全体の機器を統一の容量(基準容量)に換算して単位法を用いることにより、統一的な方法で計算処理することができる。
※複雑な回路網から、無次元の回路網定数を得て、計算できる。
基準容量に統一した単位法でのインピーダンスを用いるて、例えば、ある点での短絡電流を算出たい場合を考える。ある点に基準電流(基準容量での定格電流)が流れたとすると、系統内のさまざまな基準電圧階級の機器(基準容量に統一されたもの)にも、それぞれの基準電流(基準容量でのそれぞれの定格電流)が流れる。つまり、単位法での基準電流は系統内の機器に直列に流れているとみなすことができ、オームの法則を扱うように計算処理することができる。
単位法でのインピーダンスが基準容量に比例する理由
容量\(P_{BO}\)[V・A]を基準とした単位法でのインピーダンス\(Z_{BOpu}\)[p.u.]を用いて、基準容量\(P_{BN}\)[V・A]での単位法でのインピーダンス\(Z_{BNpu}\)[p.u.]へ換算するには、以下のようになる。
\(Z_{BNpu}=\displaystyle Z_{BOpu}\times\frac{P_{BN}}{P_{BO}}\)[p.u.]
これは、容量\(P_{BO}\)[V・A]を基準とした単位法でのインピーダンス\(Z_{BOpu}\)[p.u.]が以下で与えられるためである。ここで、インピーダンス\(Z\)[Ω]、基準線間電圧\(V_B\)[kV]は変化しないこととする。
\(\displaystyle Z_{BOpu}=\frac{P_{BO}Z}{V_B^2}\)
上式より\(Z_{BOpu}\)[p.u.]は容量\(P_{BO}\)[V・A]に比例するので、
\(\displaystyle Z_{BNpu}=Z_{BOpu}\times\frac{P_{BN}}{P_{BO}}\)
\(\displaystyle =\frac{P_{BO}Z}{V_B^2}\times\frac{P_{BN}}{P_{BO}}\)
\(\displaystyle =\frac{P_{BN}Z}{V_B^2}\)[p.u.]
\(Z_{BNpu}\)[p.u.]は、基準容量\(P_{BN}\)[V・A]での単位法でのインピーダンスに換算されていることが分かる。
単位法でのインピーダンスの定義からの考え方
ある基準値で単位法表示されたインピーダンスを別の基準値を用いて表す方法を考える。
もとの基準値の基準容量\(P_{BO}\)[V・A]、基準線間電圧\(V_{BO}\)[V]、基準電流\(I_{BO}\)[V]、基準インピーダンス\(Z_{BO}\)[Ω]、インピーダンス\(Z\)[Ω]とすると、単位法でのインピーダンス\(Z_{BOpu}\)[p.u.]は
\(\displaystyle Z_{BOpu}=\frac{Z}{Z_{BO}}=\frac{P_{BO}Z_{BO}}{V_{BO}^2}\)[p.u.] …①
新たな基準値の基準容量\(P_{BN}\)[V・A]、基準線間電圧\(V_{BN}\)[V]、基準電流\(I_{BN}\)[V]、基準インピーダンス\(Z_{BN}\)[Ω]、インピーダンス\(Z\)[Ω]とすると、単位法でのインピーダンス\(Z_{BNpu}\)[p.u.]は
\(\displaystyle Z_{BNpu}=\frac{Z}{Z_{BN}}=\frac{P_{BN}Z_{BN}}{V_{BN}^2}\)[p.u.] …②
上式を②÷①として整理すると
\(\displaystyle Z_{BNpu}=Z_{BOpu}\times\left(\frac{V_{BO}}{V_{BN}}\right)^2\times\frac{P_{BN}}{P_{BO}}\)[p.u.]
つまり、基準線間電圧を換算前後で同一とすると、容量\(P_{BO}\)[V・A]を基準とした単位法でのインピーダンス\(Z_{BOpu}\)[p.u.]を用いて、基準容量\(P_{BN}\)[V・A]での単位法でのインピーダンス\(Z_{BNpu}\)[p.u.]へ換算するには、以下のようになる。
\(Z_{BNpu}=\displaystyle Z_{BOpu}\times\frac{P_{BN}}{P_{BO}}\)[p.u.]
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