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変電所の開閉設備

2024年2月10日

 変電所の主な構成設備の一つである、開閉設備について説明する。

 開閉設備には、主に以下のような種類がある。

  • 消弧装置を持たない断路器
  • 主回路の接地を目的とする接地開閉器
  • 負荷電流や故障電流を遮断するための遮断器

 それぞれについて詳しく説明する。

断路器

 断路器は、発変電所内の回路の保守作業を行う際に安全のために作業箇所を電圧のある回路から切り離すことなどに用いられる。一般的に断路器は、単に電圧が加わっている回路で電流が流れていないときに開閉できるが、変圧器の励磁電流や送電線の充電電流、複母線の場合において甲母線から乙母線に運転を切り替えるときに流れるループ電流などの開閉ならば行うことができる。

 断路器は、単に充電された電路を開閉分離するために用いられるほか、下記のような開閉性能を要求される場合がある。

  1.  複母線の変電所で甲母線から乙母線に運転を切り替えるときに流れるループ電流開閉性能
  2.  遮断器を遮断した後に、遮断器と断路器間の回路を開放するときの進み小電流開閉能力

 断路器を運用する際の注意点は以下がある。

  • 断路器は消弧装置をもたないため、負荷電流の遮断を行うことはできない。
  • 断路器は機器の点検や修理の際、回路を切り離すのに使用する。断路器で回路を開く前に、まず遮断器で故障電流や負荷電流を切る必要がある。
  • 断路器を誤って開くと、接触子間にアークが発生し、焼損や短絡事故を生じることがある。
  • 断路器は種類のいかんによらず、負荷電流の遮断を行ってはならない。
  • 断路器の誤操作防止のため、一般にインタロック装置が設けられている。

接地開閉器

 接地開閉器は、無電圧の線路や母線部分などの主回路の接地を主たる用途としているが、それ以外に下記のような用途や性能が要求される。

  1.  ガス接地開閉器の接地端子を大地電圧から絶縁し、要求される用途に使用可能なこと。
  2.  運転されている隣接回線が発生する磁束により流れる電磁誘導電流及び回線間の浮遊容量を通して流れる静電誘導電流の開閉能力を有すること。
  3.  主回路が活線状態で、保守員が誤って接地開閉器を投入するような場合に、短絡投入性能を要求されることがある。
  4.  ケーブル送電線用の接地開閉器の場合、ケーブル残留電荷の放電性能を有すること。

遮断器

遮断器は、送電線路の運転・停止、故障電流の遮断などに用いられる。

直流電流には電流零点がないため、交流電流に比べ電流の遮断が困難である。

 遮断器は、平常時は電力の送電及び停止の際に負荷電流を開閉するために用いられており、送配電線や発変電所内の機器に短絡・地絡が発生した際は故障電流を遮断するために用いられる。

ガス遮断器

遮断器では一般的に、電流遮断時にアークが発生する。ガス遮断器では圧縮ガスを吹き付けることで、アークを早く消弧することができる。電圧が高い系統では、真空遮断器に比べてガス遮断器が広く使われている。

六ふっ化硫黄(SF6)ガス

  1. アークの消弧能力は、空気よりも優れている。
  2. 無色、無臭、無毒、腐食性・爆発性・可燃性がなく、化学的に安定しており不活性である。
  3. 地球温暖化に及ぼす影響は、同じ質量の二酸化炭素と比較してはるかに大きい。温室効果ガスであるため、使用量の削減や、保守や廃棄の際、回収することが求められている。
  4. ガス遮断器やガス絶縁変圧器の絶縁媒体として利用される。
  5. 絶縁破壊電圧は、同じ圧力の空気と比較すると高い。大気圧以上のSF6ガスが充填される。(0.3~0.6MPa)

真空遮断器

真空遮断器の開閉電極は、真空バルブ内に密閉され、電極を開閉する操作機構、可動電極が動作しても真空を保つベローズ、回路と接続する導体などで構成されている。
電路を開放した際に発生するアーク生成物は、真空中に拡散するが、その後、絶縁筒内部に付着することで、その濃度が下がる。
真空遮断器は、空気遮断器と比べると動作時の騒音が小さく、機器は小形軽量である。また、真空遮断器はガス遮断器と比べると電圧が低い系統に広く使われている。

ガス絶縁開閉装置(GIS)

ガス絶縁開閉装置(GIS)は、遮断器、断路器、避雷器、変流器等の機器を絶縁性の高いガスが充填された金属容器に収めた開閉装置である。この絶縁ガスとしては、SF6ガスが現在広く用いられている。機器の充電部を密閉した金属容器は接地されるため感電の危険性がほとんどない。また、気中絶縁の設備に比べて装置が小形化する。このようなことから、変電所の体積と面積を大幅に縮小でき、大都市の地下変電所や塩害対策の開閉装置として適している。

遮断器の直列機器としての電流協調

 遮断器は電力系統の運用の中で重要な役割を果たしている。定常時に通電すると共に、系統事故時においては、事故電流遮断、抵抗投入などによる開閉過電圧の抑制や再閉路による電力系統の安定度向上などの役割を果たす。

 遮断器が閉路の状態で、➀定常及び過負荷運転時、➁系統事故時において、遮断器に流れる電流の許容値に関する定格と、直列機器の運用に支障がないように、遮断器が電流面で協調を図るべき事項(電流協調)について説明する。

➀ 定常及び過負荷運転時の電流協調
 遮断器の定常運転中に連続的に流れる電流の許容値は、「定格電流」で表される。例えば、500 [kV] や 275 [kV] の送電線用遮断器では 2 [kA] から 8 [kA] である。
 過負荷時の遮断器の電流容量は、直前の通過電流が定格電流以下であれば、短時間の過負荷は可能である。この際、遮断器の温度上昇の時定数は、油入変圧器に比べると小さく、直列機器として許容できる過負荷電流及び時間は、遮断器で決まるので、遮断器の定格電流は、油入変圧器などの過負荷運用の支障にならないように選定することが必要である。

➁ 系統事故時の電流協調:
 系統の短絡や地絡事故時に流れる事故電流の許容値は、遮断器などの直列機器では「定格短時間耐電流(定格短時間電流)」で表される。事故継続時間中、閉路している遮断器も含めて、直列機器は定格短時間耐電流に耐えなければならない。
 定格短時間耐電流は、定格遮断電流と同じ値が標準として規定される。例えば、500 [kV] や 275 [kV] では、50 [kA] や 63 [kA] が多く採用されている。また、継続時間は、最終段保護による事故除去時間も考慮し、2秒と規定している。
 特に直接接地系では、地絡や短絡事故時には事故電流が大きく、変圧器巻線などへ大きな電磁力が発生することから、事故除去が遅れると過熱損傷の恐れがある。このため、保護・制御装置の信頼度向上を図り、遮断器による確実かつ早期の事故除去により、事故の局限下を図る必要がある。

大容量GISの異常診断方法

 超高圧などの重要変電所に使用される大容量 GIS において、下記の異常を診断する手法について、その概要を述べる。

  1. GIS母線の絶縁異常
     絶縁異常の兆候をとらえる主な診断技術は部分放電の検出である。部分放電に伴ってタンク内部に発生する各種現象を電気的(電磁波)、機械的(AE : Acoustic Emission)に検出する方法が使われている。また、分解ガスを検出する化学的方法、UHF 帯域の電磁波を検出することで部分放電を pC 感度で管理する方法も採用されている。
     特に絶縁異常の主な要因である金属異物については、異物が交流電界内を振動中に、タンク表面に衝突して発生する音波や異物の存在により発生する部分放電を AE センサ(超音波センサ)や加速度センサにより検出する方法が使われている。
  2. GIS母線のシール異常
     ガス配管、フランジ部などでシール異常があると、ガス漏れが生じ、ガス圧力低下に至る。ガス漏れに対する診断技術としては、ガス圧力の変化を測定する方法とタンクからのガス漏れがないことを直接的に検出する方法があり、それぞれガス圧力センサやガス密度スイッチを用いた測定、ガスリークディテクタによる検出が採用されている。
  3. GIS母線及びSF₆ガス遮断器の通電異常
     GIS母線の通電異常の要因として、主回路導体の接触不良がある。この接触不良を検出する診断技術としては、導体の接触抵抗を測定する方法、局部加熱に起因するタンク温度上昇を温度センサ、赤外線カメラで検出する方法、局部過熱により発生するSF₆分解ガスを測定する方法、また通電異常箇所から発生する部分放電を検出する方法などが採用されている。
     SF₆ガス遮断器の通電異常においては、コンタクト損耗異常の検知がある。このコンタクト損耗異常の主な要因としては、大電流遮断時のコンタクトの損耗がある。コンタクトの損耗は開閉特性(ワイプ量の測定など)を確認する方法があるが、電流遮断によるコンタクトの損耗は、一様に発生しないため、開閉特性では確認できない場合もあり、累積遮断回数により管理する場合もある。
  4. SF₆ガス遮断器の機械的異常
     SF₆ガス遮断器の操作機構部の固渋や不動作の要因として、グリスの劣化や電装品の不具合などが挙げられる。
     機械的異常の診断技術としては、開閉動作特性を測定し、動作特性不良を判定する方法がある。開閉動作特性を測定する方法としては、制御電流や補助スイッチの動作を測定する方法、機構部の動作速度をセンサにて検出する方法がある。また、油圧操作用油圧系統の異常を油圧ポンプの動作頻度で検出する方法などがある。

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