調相設備
調相設備は、電圧の調整と送電系統の安定度向上、送電線路の力率改善による電力損失の軽減を目的として設置される。
送電線路において送電端電圧と受電端電圧が一定であるとすると、負荷の力率が変化すれば受電端電力が変化する。このため、負荷が変動しても力率を調整することによって受電端電圧を一定に保つことができる。
送電線路での有効電力の損失は電圧に反比例するため、電圧調整により電圧を高めに運用することが損失を減らすために有効である。
これらの調相設備は送電回路に並列に接続され、変圧器の三次側や母線に設置される。
静止器
分路リアクトルや電力用コンデンサは専用の開閉器により開閉するが、その開閉する頻度を変圧器用の開閉器と比べると多頻度である。
電力用コンデンサ
線路リアクタンスが大きい送電線路では、受電端において進相コンデンサを負荷に並列することで、受電端での進み無効電流を増加させ、受電端電圧を上げることができる。
電力用コンデンサは遅相分の無効電力を供給し、進相分の無効電力を消費するために使用される。その構造はアルミニウムはく電極と誘電体を交互に重ねたものである。
電力用コンデンサには、コンデンサによる電圧電流波形ひずみ軽減、過大高調波電流の流入防止、コンデンサ投入時の過渡電流の制限、コンデンサ開放時の再点弧防止などの目的で、直列リアクトルが設けられる。
分路リアクトル
分路リアクトルは進相分の無効電力を供給し、遅相分の無効電力を消費するために使用される。その構造には変圧器と同様に鉄心とコイルからなるものと、空心のものがある。
静止形無効電力補償装置(SVC)
進相コンデンサは無効電力を段階的にしか調整できないが、静止型無効電力補償装置は無効電力の連続的な調整が可能である。
系統の微小な電圧変動対策や系統の安定度向上対策で高度な制御が要求されるときにサイリスタを使用したSVCが採用される。
回転機
電力系統の電圧調整には調相設備と共に、発電機の励磁調整による電圧調整が有効である。
同期調相機
同期調相機は、同期電動機を無負荷で運転し、界磁電流を調整して電機子電流を遅相にも進相にもすることができる。
無効電力の「供給・消費」の表現について
電力用コンデンサを例にとると、系統電源側からみると、電力用コンデンサには電圧に対して90°進み電流が流れ、「進みの無効電力が消費」されていることは理解しやすい。
このとき、同様に「遅れの無効電力を供給」していると表現されるのが、どういう意味であるかは理解しづらい。電力用コンデンサを無効電力の供給源としてみた場合を考えてみる。
一般に、電力用コンデンサが接続される場合は、負荷は遅れ力率(遅れの無効電力を消費している)である。電源側からみて、遅れ力率負荷に、電力用コンデンサを接続したことにより、力率が1となったとする。このとき、電源側は無効電力を供給しておらず、有効電力のみを供給している(とみなすことができる)。すると、電力用コンデンサは、負荷に対して遅れ無効電流を供給している(とみなせる)。
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