新エネルギー発電の学習帳
目次
太陽光発電
太陽光発電は、半導体を用いて、光の持つエネルギーを電気に変換している。エネルギー変換時には、化石燃料のように排気ガスを出さない。
すなわち、化石燃料による発電では、数千万年から数億年間の太陽エネルギーの照射や、地殻における変化等で優れた燃焼特性になった燃料を電気エネルギーに変換しているが、太陽光発電では変換効率は低いものの、光を電気エネルギーへ瞬時に変換しており長年にわたる環境変化の積み重ねにより生じた資源を消費しない。そのため環境への影響は小さい。
現在広く用いられている太陽電池の変換効率は太陽電池の種類により異なるが、およそ7~20[%]である。太陽光発電を導入する際には、その地域の年間発電電力量を予想することが必要である。また、太陽電池を設置する方位や傾斜によって発電電力量が変わるので、これらを確認する必要がある。さらに、太陽電池で発電した直流電力を交流電力に変換するためには、電気事業者の配電線に連系して悪影響を及ぼさないための保護装置などを内蔵したパワーコンディショナが必要である。
太陽光発電は、太陽電池によって直流の電力を発生させる。需要地域で発電が可能、発生電力の変動が大きい、などの特徴がある。
太陽光発電は、太陽電池の光電効果を利用して太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する。地球に降り注ぐ太陽光エネルギーは、1m2当たり1秒間に約1kJに相当する。太陽電池の基本単位はセルと呼ばれ、1V程度の直流電圧が発生するため、これを直列に接続して電圧を高めている。太陽電池を系統に接続する際は、パワーコンディショナにより交流の電力に変換する。
一部の地域では太陽光発電の普及によって日中に電力の余剰が発生しており、余剰電力は揚水発電の揚水に使われているほか、大容量蓄電池への電力貯蔵に活用されている。
発電が可能な太陽電池の最小単位をセルといい、結晶系シリコン太陽電池では1枚の太陽電池セルの出力電圧は約0.5Vである。数十枚のセルを直並列に接続して必要な出力を得るが、これをモジュールといい、製品として流通する単位となる。モジュールを直列に接続したものをストリングといい、これが並列に接続されてインバータへ直流電力を供給する。
一部のセルが木の葉などで日陰になると発電しなくなり高抵抗となる。ここに電流が流れると発熱しモジュールを破損することがあるので、バイパス素子を設けて防止する。パワーコンディショナー(PCS)は太陽光発電システムの運転と制御を行うが、異常発生時の保護リレーとして過電圧リレーなどが備えられている。
太陽電池の出力は日射強度等により変化するため、太陽電池の公称システム出力は基準状態(日照強度:1kW/㎡、モジュール温度:25℃、分光分布:基準太陽光)に対し規定される。太陽電池の電流電圧特性についても、短絡電流が日射強度にほぼ比例して増加するなど、日射強度により変化する。このため日射強度が変動した場合には、電圧・電流を変化させ太陽電池の発電出力を最大化する必要がある。太陽光発電システムには、そのために太陽電池の直流動作電圧を最適化し、発電出力を最大化する最大出力追従制御を備えるのが一般的である。
太陽電池はインバータ、系統連系保護装置等から構成されるパワーコンディショナを介して電力系統に接続することが多い。その際には、電圧、周波数等の保護リレーの設置が義務づけられている。また系統が停電となったときに、低圧・高圧配電線に接続された太陽光発電装置が単独運転により運転を継続すると配電線の保安等の面で支障を来すため、太陽光発電装置を解列させる必要がある。
- 電験3種過去問【2022年(後期)電力 問5】(各種発電方式の特徴)
- 電験3種過去問【2020年電力 問5】(太陽光発電に関する記述)
- 電験3種過去問【2013年電力 問5】(太陽光発電に関する記述)
- 電験3種過去問【2011年電力 問5】(太陽光発電に関する記述)
バイオマス発電
バイオマス発電は、植物等の有機性資源(有機物)を用いた発電と定義することができる。森林樹木、サトウキビ等はバイオマス発電用のエネルギー作物として使用でき、その作物に吸収される二酸化炭素量と発電時の二酸化炭素発生量を同じとすることができれば、環境に負担をかけないエネルギー源となる。ただ、現在のバイオマス発電では、発電事業として成立させるためのエネルギー作物等の量的確保の問題や食料をエネルギーとして消費することによる作物価格への影響が課題となりつつある。
さとうきびから得られるエタノールや、家畜の糞から得られるメタンガスなどが燃料として用いられている。
バイオマス発電は、植物や動物が生成・排出する有機物から得られる燃料を利用する発電方式である。燃料の代表的なものには、木くずから作られる固形化燃料や、家畜の糞から作られる気体燃料がある。
- 電験3種過去問【2022年(後期)電力 問5】(各種発電方式の特徴)
- 電験3種過去問【2017年電力 問5】(地熱発電とバイオマス発電に関する記述)
- 電験3種過去問【2009年電力 問5】(バイオマス発電に関する記述)
地熱発電
地熱発電は、地下から取り出した蒸気または熱水の気化で発生させた蒸気によってタービンを回転させる発電方式である。発電に適した地熱資源を見つけるために、適地調査に多額の費用と長い期間がかかる。
地熱発電は、地下の少なくとも200℃以上の\(\fbox{地熱貯留層}\)に向けて生産井を掘削し、そこから得られる二相流体(蒸気・熱水)を用いて蒸気タービンを駆動し発電を行う方式である。
発電に適した地熱資源は火山地域に多く存在する。
生産井から得られた二相流体は気水分離器(セパレータ)で蒸気と熱水に分けられるが、熱水の割合が比較的大きい場合が多いため、\(\fbox{フラッシャ}\)で圧力を下げ熱水からフラッシュ蒸気(再蒸発蒸気)を得ることにより、出力増加を図る方式が広く用いられている。
そこで得られた蒸気は、気水分離器(セパレータ)から得られた蒸気とともに、蒸気タービンで膨張し発電機を回す。
またタービン排気は混合復水器を用いて凝縮され、その凝縮水は\(\fbox{冷却塔}\)で温度を下げ、その一部を復水器の冷却水として用いる方式が広く採用されている。
ここに\(\fbox{冷却塔}\)を用いるのは、地熱発電所では冷却水を得ることが難しい場合が多いことによる。\(\fbox{フラッシャ}\)で分離された熱水は、\(\fbox{還元井}\)を通して地中に戻す。
バイナリーサイクル発電
地熱井から噴出される低温の熱水が保有するエネルギーを有効に利用するため、熱交換器を介して沸点の低い作動媒体を用いてタービンを回す方式。地熱流体と作動媒体の二つの循環系があるためバイナリー発電と呼ぶ。
トータルフロー発電
生産井から噴出する流体を蒸気と熱水に分離せず、直接、膨張機に導いて発電する方式。効率向上が課題となっている。
高温岩体発電
地熱地帯には、地熱流体が存在しない高温岩体がある。この高温岩体に割れ目(フラクチャー)を作り注水することにより、蒸気または熱水を作り、これを取り出して発電する方式。
風力発電
風力発電は、風のエネルギーによって風車で発電機を駆動し発電を行う。風車は回転軸の方向により水平軸風車と垂直軸風車に分けられ、大電力用には主に水平軸風車が用いられる。
風がもつ運動エネルギーは風速の2乗に比例する。また、プロペラ型風車を用いた風力発電で取り出せる電力は、損失を無視すると風速の3乗に比例する。風が得られれば電力を発生できるため、発電するときに二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーであり、また、出力変動の大きい電源とされる。
発電機には誘導発電機や同期発電機が用いられる。同期発電機を用いてロータの回転速度を可変とした場合には、発生した電力は電力変換装置を介して電力系統へ送電される。
風として運動している同一質量の空気が持っている運動エネルギーは、風速の2乗に比例する。また、風として風力発電機の風車面を通過する単位時間当たりの空気の量は、風速の1乗に比例する。したがって、風車面を通過する空気の持つ運動エネルギーを電気エネルギーに変換する風力発電機の変換効率が風速によらず一定とすると、風力発電機の出力は風速の3乗に比例することとなる。
発電事業用の風力発電には水平軸・3枚翼のプロペラ形風車が広く用いられている。
プロペラ型風車は羽根の角度により回転速度の制御が可能である。設定値を超える強風時には羽根の面を風向きに平行になるように制御し、ブレーキ装置によって風車を停止させる。
わが国で現在広く用いられている風力風車には、風車の回転数をほぼ一定とするものと、風車の回転数を大きく変化させるものがある。
前者には、設備構成が簡素で、かご形誘導発電機を電力系統に直接連系するタイプがある。
後者には、風力発電の発電性能向上などを目的とした、次の二つのタイプがある。
- 巻線形誘導発電機の二次巻線を超同期セルビウス方式により励磁するタイプ
- メンテナンスの負担が大きい増速機を省略するために、数十の極を有する発電機にBTB変換装置を組み合わせるタイプ
※BTB変換装置:Back to Back変換装置は交直変換装置により直流を介して電力系統を結合するもののうち、変換前後での交流周波数が同一となるもの。変換前後で周波数が異なるものは周波数変換装置と呼ぶ。
風車の受けるエネルギー
風速をv[m/s]、空気の質量をm[kg]とすると、風車の受ける運動エネルギーEは
\(\displaystyle E=\frac{1}{2}mv^2\text{[J]}\)
風車が風を受ける面積がA[m2]、空気の密度をρ[kg/m3]とすると、単位時間に通過する空気の質量m[kg]は
\(\displaystyle m=ρvA\text{[kg/s]}\)
したがって、単位時間に風車が受ける運動エネルギーEが、全て風力発電機出力Pに変換されたとすると、
\(\displaystyle P=\frac{1}{2}mv^2\text{[J/s]}\\
\displaystyle =\frac{1}{2}(ρvA)v^2\text{[J/s]}\\
\displaystyle =\frac{1}{2}ρAv^3\text{[J/s]}\)
ここでパワー係数k(単位時間あたりにロータを通過する風のエネルギーのうち、風車が風から取り出せるエネルギーの割合)とすると
\(\displaystyle P=\frac{1}{2}kρAv^3\text{[J/s]}\)
過去問 再出題文章
2023年3種前期電力問5、2012年3種電力問5
- 風力発電は、風の力で風力発電機を回転させて電気を発生させる発電方式である。風が得られれば燃焼によらずパワーを得ることができるため、発電するときにCO₂を排出しない再生可能エネルギーである。
- 風車で取り出せるパワーは風速の3乗に比例するため、発電量は風速に左右される。このため、安定して強い風が吹く場所が好ましい。
- 離島においては、風力発電に適した地域が多く存在する。離島の電力供給にディーゼル発電機を使用している場合、風力発電を導入すれば、そのディーゼル発電機の重油の使用量を減らす可能性がある。
- 一般的に、風力発電では同期発電機、永久磁石式発電機、誘導発電機が用いられる。
- 風力発電では、翼が風を切るため騒音を発生する。風力発電を設置する場所によっては、この騒音が問題となる場合がある。この騒音対策として、翼の形を工夫して騒音を低減している。
- 電験3種過去問【2023年(前期)電力 問5】(風力発電に関する記述)
- 電験3種過去問【2022年(後期)電力 問5】(各種発電方式の特徴)
- 電験3種過去問【2022年(前期)電力 問5】(風力発電に関する記述)
- 電験3種過去問【2018年電力 問5】(風車のロータ軸出力計算)
- 電験3種過去問【2016年電力 問5】(各種発電に関する記述)
- 電験3種過去問【2012年電力 問5】(風力発電に関する記述)
- 電験3種過去問【2010年電力 問5】(風力発電の風力エネルギー)
電池電力貯蔵設備
二次電池
(1)リチウムイオン電池、NAS電池、ニッケル水素電池は、繰返し充放電ができる二次電池として知られている。
(2)二次電池の充電法として、整流器を介して負荷に電力を常時供給しながら二次電池への充電を行う浮動充電式がある。
(3)二次電池を活用した無停電電源システムは、商用電源が停電したとき、瞬時に二次電池から負荷に電力を供給する。
(4)風力発電や太陽光発電などの出力変動を抑制するために、二次電池が利用されることもある。
(5)鉛蓄電池の充電方式として、一般的に、整流器の出力電圧を高くして回復充電を行い、その後、定電流で満充電状態になるまで充電する。
電池電力貯蔵設備は、需要家の負荷平準化、緊急時のバックアップ電源などに用いられてきたが、近年は再生可能エネルギー発電の出力変動に対応するための送電系統の周波数制御に用いる実証試験等も行われるようになった。そこでは、電極活物質などが異なる様々な二次電池が用いられている。
二次電池を運用するにあたっては、過充電、過放電を避けつつ電池容量を有効に利用するため、満充電時に対する充電状況を比率で表したSOCを適切に管理する必要がある。SOCの推定方法は電池種別により異なるが、例えば電池の開回路電圧を用いて推定するなどの方法がある。
二次電池の指標
開路電圧(OCV「Open circuit voltage, Off-load voltage」)
充電率または充電状態(SOC「State Of Charge」):
満充電状態を100%、としたときの現在の充電量の割合。
健全度や劣化状態(SOH「State of Health」):
初期の満充電容量(Ah)を100%とした際の、劣化時の満充電容量(Ah)の割合。
リチウムイオン電池
また、電解質として有機溶媒電解液等を用いたリチウムイオン電池は、二次電池の中では充放電効率が比較的高く、常温動作であるなどの特長もあることから、電気自動車用も含めた様々な用途で利用が進んでいる。リチウムイオン電池は、ナトリウム・硫黄電池に比べCレートを高くとることができるため、比較的小さい電池容量[kW・h]で大きな出力[kW]を得ることができる。
ナトリウム・硫黄電池(NAS電池)
ナトリウム・硫黄電池は、二次電池の中では比較的、理論エネルギー密度が高いなどの特徴を有している。同電池では、円筒形状の単電池を断熱容器に格納し、正極・負極活物質を溶融状態に保つため300℃程度に保つ。このためヒータの消費電力量が大きくならないような運用形態で使用することが望ましい。
レドックスフロー電池
電解質タンクの大きさを増すことで電池容量[kW・h]を増大できるなどの特長を有するレドックスフロー電池も、送電系統用として使用されている。
コージェネレーションシステム
コージェネレーションとは、ガス・石油などの燃料により原動機(ディーゼルエンジン・ガスエンジン・ガスタービン等が多い)を駆動して発電機を回転させて発電を行うと同時に、原動機の排熱を回収して利用するシステムである。ホテルや病院など比較的熱需要の多い建物において電力需要と熱需要に見合った適切な容量を選定できれば、75~85パーセントの総合エネルギー効率が実現できる。しかし、実際にはコージェネレーションによる発電量や供給熱量が需要家側の消費量と一致しない場合が多いので、設備を導入すれば常に大きなエネルギーコスト低減効果と省エネルギー効果があげられるとは限らない。
なお、最近では燃料電池によるコージェネレーションシステムも多い。固体高分子燃料電池は、作動温度がおよそ200℃であり、上述の各種原動機を駆動する方式と比べ可動部が少なく低騒音である。また、発電時に二酸化炭素排出量が少ないという特徴を有している。
燃料電池発電
燃料電池発電は、水素と酸素との化学反応を利用して直流の電力を発生させる。化学反応で発生する熱は給湯などに利用できる。
なお、最近では燃料電池によるコージェネレーションシステムも多い。固体高分子燃料電池は、作動温度がおよそ200℃であり、上述の各種原動機を駆動する方式と比べ可動部が少なく低騒音である。また、発電時に二酸化炭素排出量が少ないという特徴を有している。
分散型電源の系統連系
(1)分散型電源からの逆潮流による系統電圧の上昇を抑制するために、受電点の力率は系統側から見て遅れ力率(分散型電源側からみて進み力率)とする。
(2)分散型電源からの逆潮流等により他の低圧需要家の電圧が適正値を維持できない場合は、ステップ式自動電圧調整器(SVR)を設置する等の対策が必要になることがある。
(3)比較的大容量の分散型電源を連系する場合は、専用線による連携や負荷分割等配電系統側の増強が必要になることがある。
(4)太陽光発電や燃料電池発電等の電源は、電力変換装置を用いて電力系統に連系されるため、高調波電流の流出を抑制するフィルタ等の設置が必要になることがある。
(5)大規模太陽光発電等の分散型電源が連系した場合、配電用変電所に設置されている変圧器に逆向きの潮流が増加し、配電線の電圧が上昇する場合がある。
(1) 太陽電池で発生した直流の電力を交流系統に接続する場合は、インバータにより直流を交流に変換する。連系保護装置を用いると、系統の停電時などに電力の供給を止めることができる。
(2) 分散型電源からの逆潮流による系統電圧上昇を抑制する手段として、分散型電源の出力抑制や、電圧調整器を用いた電圧の制御などが行われる。
(3) 小水力発電では、河川や用水路などでの流込み式発電が用いられる場合が多い。
(4) 洋上の風力発電所と陸上の系統の接続では、海底ケーブルによる直流送電が用いられることがある。ケーブルでの直流送電のメリットとして、誘電損を考慮しなくてよいことなどが挙げられる。
(5) 一般的な燃料電池発電は、水素と酸素との化学反応を利用して電気エネルギーを作る発電方式であり、負荷変動に対する応答が早い。
再生可能エネルギー導入時の技術的課題
総合エネルギー統計によれば、令和2年度(2020年度)の日本の総発電電力量は約1兆 kW・h である。このうち、再生可能エネルギーの発電電力量の占める割合は約2割である。
温室効果ガスの排出削減のため、今後も再生可能エネルギーを最大限導入する必要がある。この場合において、太陽光発電及び風力発電の導入拡大を図っていくに当たって、電力系統に生じる技術的課題を電力需給、送配電設備容量及び安定度の三つの視点から述べる。
電力需給
再生可能エネルギーの発電量は、天候や季節により変動してコントロールが難しいため、調整力が不足すると需給バランスに問題が生じる。
送配電設備容量
電力需要が少ないエリアなどで再生可能エネルギーが大量に導入されると、既存の一部の送電線や連系線の設備容量が不足し、送電に問題が生じる。
安定度
非同期電源である太陽光発電などが大量に導入され、火力発電等の同期電源の割合が減少すると、系統全体の慣性力・同期化力が減少し、事故時の安定度に問題が生じる。
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