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原子力発電の学習帳

2024年1月13日

原子力発電

 原子燃料が出す熱で水を蒸気に変え、これをタービンに送って熱エネルギーを機械エネルギーに変えて、発電機を回転させることにより電気エネルギーを得るという点では、汽力発電と同じ原理である。原子力発電では、ボイラの代わりに原子炉を用い、化石燃料の代わりに原子燃料を用いる。現在、多くの原子力発電所で燃料として用いている核分裂連鎖反応する物質はウラン235であるが、天然に産する原料では核分裂連鎖反応しないウラン238が99[%]以上を占めている。このため、発電用原子炉にはガス拡散法や遠心分離法などの物理学的方法でウラン235の含有率を高めた濃縮燃料が用いられている。

核分裂は様々な原子核で起こるが、ウラン235などのように核分裂を起こし、連鎖反応を持続できる物質を核分裂性物質といい、ウラン238のように中性子を吸収して核分裂性物質になる物質を親物質という。

天然ウランの中に含まれるウラン235は約0.7%で、残りは核分裂をおこしにくいウラン238である。ここで、ウラン235の濃度が天然ウランの濃度を超えるものは、濃縮ウランと呼ばれており、濃縮度3%から5%程度の低濃縮ウランは原子炉の核燃料として使用される。

(1)現在、核分裂によって原子エネルギーを取り出せる物質は、原子量の大きなウラン(U)、トリウム(Th)、プルトニウム(Pu)であり、ウランは自然界にも十分に存在しているが、プルトニウムは自然界にはほとんど存在しない。

(2)原子核を陽子と中性子に分解させるには、エネルギーを外部から加える必要がある。このエネルギーを結合エネルギーと呼ぶ。

(3)原子核に何らかの外力が加えられて、他の原子核に変換される現象を核反応と呼ぶ。

(4)ウラン\(_{92}^{235}U\)を1g核分裂させたとき、発生するエネルギーは、石炭数トンの発熱量に相当する。

(5)ウランに熱中性子を衝突させると、核分裂を起こすが、その際放出する高速の中性子の一部が減速して熱中性子になり、この熱中性子が他の原子核に分裂を起こさせ、これを繰り返すことで、連続的な分裂が行われる。この現象を連鎖反応と呼ぶ。

過去問題:
電験3種過去問【2009年電力 問4】(原子力発電に関する記述)
電験3種過去問【2014年電力 問4】(原子力発電に関する記述)
電験3種過去問【2020年電力 問4】(原子燃料に関する記述)

原子力発電所の蒸気タービン

 原子力発電所の蒸気タービンは、高圧タービンと低圧タービンから構成され、くし形に配置されている。
原子力発電所においては、原子炉又は蒸気発生器によって発生した蒸気が高圧タービンに送られ、高圧タービンにて所定の仕事を行った排気は、湿分分離器に送られて、排気に含まれる湿分を除去した後に低圧タービンに送られる。
高圧タービンの入口蒸気は、飽和蒸気であるため、火力発電所の高圧タービンの入口蒸気に比べて、圧力・温度ともに低く、そのため、原子力発電所の熱効率は、火力発電所と比べて低くなる。また、原子力発電所の高圧タービンに送られる蒸気量は、同じ出力に対する火力発電所と比べて多い
低圧タービンの最終段翼は、35~54インチ(約89cm~137cm)の長大な翼を使用し、湿分による翼の浸食を防ぐため翼先端周速度を減らさなければならないので、タービンの回転速度は1500min-1又は1800min-1としている。

過去問題:
電験3種過去問【2018年電力 問4】(原子力発電所の蒸気タービン)

核燃料サイクル

 天然ウランには主に質量数235と238の同位体があるが、原子力発電所の燃料として有用な核分裂性物質のウラン235の割合は、全体の0.7%程度にすぎない。そこで、採鉱されたウラン鉱石は精錬、転換されたのち、遠心分離法などによって、ウラン235の濃度が軽水炉での利用に適した値になるように濃縮される。その濃度は3~5%程度である。さらに、その後、再転換、加工され、原子力発電所の燃料となる。
 原子力発電所から取り出された使用済燃料からは、再処理によってウラン、プルトニウムが分離抽出され、これらは再び燃料として使用することができる。プルトニウムはウラン238から派生する核分裂性物質であり、ウランとプルトニウムとを混合したMOX燃料を軽水炉の燃料として用いることをプルサーマルという。
また、軽水炉の転換比は0.6程度であるが、高速中性子によるウラン238のプルトニウムへの変換を利用した高速増殖炉では、消費される核分裂性物質よりも多くの新たな核分裂性物質を得ることができる。

過去問題:
電験3種過去問【2016年電力 問4】(原子力発電の核燃料サイクル)

軽水炉

 原子力発電で多く採用されている原子炉の型式は軽水炉であり、主に加圧水型と沸騰水型に分けられる。

 軽水炉では、ウラン235の濃度を3~5%程度に濃縮した低濃縮ウランを燃料として使用し、冷却材や減速材に軽水を使用する。核分裂反応を起こさせるために熱中性子を用いる原子炉を熱中性子炉といい、軽水炉は熱中性子炉である。

 軽水炉では、何らかの原因により原子炉の核分裂反応による熱出力が増加して、炉内温度が上昇した場合でも、燃料の温度上昇にともなってウラン238による中性子の吸収が増加するドップラー効果により、出力が抑制される。このような働きを原子炉の固有の安全性という。

 ドップラー効果は、一般には波源と観測者が相対運動している場合に波源の振動数と観測される振動数にずれが生じる現象をいう。原子力分野では、原子炉内の温度が上昇した際に物質の原子核の熱運動が活発になって中性子を吸収しやすくなり、炉心の反応度が低下する効果を指す。
 核燃料を構成する主要な核種ウラン238は核燃料の温度上昇とともに相対運動のエネルギーが広がって共鳴吸収の確率が増加するために、中性子の吸収が多くなり、炉心の反応度が低下する。したがって、この効果は原子炉出力に対して抑制として働く。

日本原子力研究開発機構 https://atomica.jaea.go.jp/dic/detail/dic_detail_1120.html

沸騰水形原子炉(BWR)

 沸騰水型は、原子炉内で冷却材を加熱し直接蒸気を発生させ、発生した蒸気を直接タービンに送るため、系統が単純になる。加圧水型原子炉(PWR)に比べて原子炉圧力が低く、蒸気発生器が無いので構成が簡単である。

炉心内で水を蒸発させて、蒸気を発生する。

再循環ポンプで炉心内の冷却水流量を変えることにより、蒸気泡の発生量を変えて出力を調整できる。

炉心を通って放射線を受けた冷却材の蒸気が、タービン系統に入るので、タービンの放射線防護や遮へい対策が必要である。

特有な設備には、再循環ポンプがある。

沸騰水型原子炉の出力調整は、再循環ポンプによる冷却材再循環流量の調整と制御棒の挿入及び引き抜き操作により行われる。制御棒は、炉心下部から燃料集合体内を上下することができる構造となっている。

加圧水形原子炉(PWR)

 加圧水型は、原子炉内で加熱された冷却材の沸騰を加圧器により防ぐとともに、一次冷却材ポンプで原子炉、蒸気発生器に冷却材を循環させる。別置の蒸気発生器で熱交換を行い。タービンに送る二次系の蒸気を発生させる。

特有な設備には、加圧器、蒸気発生器、一次冷却材ポンプがある。

高温・高圧の水を、炉心から蒸気発生器に送る。

構造が複雑

構造上、一次冷却材を沸騰させない。また、原子炉の反応速度を調整するために、ホウ酸を冷却材に溶かして利用する。

加圧水型原子炉の出力調整は、一次冷却材中のほう素濃度の調整と制御棒の挿入及び引き抜き操作により行われる。炉の上部から炉心内に挿入または炉心外に引き抜くことができる構造となっている。

高温高圧の一次冷却材を炉心から送り出し、蒸気発生器の二次側で蒸気を発生してタービンに導くので、原則的に炉心の冷却材がタービンに直接入ることはない。

ウラン235の質量欠損により生じるエネルギー

ウラン235をx[%]含む原子燃料がM[kg]ある。この原子燃料に含まれるウラン235がすべて核分裂し、0.09%の質量が欠損したとき、ウラン235の核分裂により発生するエネルギー[J]を求める。

ウラン235が核分裂したときに生じる、質量欠損分がエネルギーに変換される。

欠損した質量をm[kg]、光の速度をc[m/s²]とすると、発生するエネルギー E [J]は以下の式となる。※c≒3.0×10⁸[m/s²]
\(\displaystyle E=mc^2\)

アインシュタインによる世界一有名な公式

\(\displaystyle E=mc^2\\
\displaystyle=M\times\frac{x}{100}\times c^2\\
\displaystyle=M\times\frac{x}{100}\times\frac{0.09}{100}\times(3.0\times10^8)^2\text{[J]}\)