電験1種過去問【2015年電力管理 問2】
2024年10月3日
【施設管理】電力流通設備の絶縁協調《論説問題》
電力流通設備の絶縁協調について、次の問に答えよ。
- 絶縁協調の考え方を説明せよ。
- 雷過電圧を例にとり、500 kV 送変電設備の絶縁協調を送電設備と変電設備に分けて説明せよ。
- 送電設備
- 変電設備
- 雷過電圧を例にとり、配電設備と送変電設備との絶縁協調の違いについて説明せよ。
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解答
公式標準解答
- 絶縁協調の考え方を説明せよ。
電力系統各部の機器、設備の絶縁の強さに関して、技術上、経済上並びに運用上からみて最も合理的な状態になるように協調を図ることをいう。 - 雷過電圧を例にとり、500 kV 送変電設備の絶縁協調を送電設備と変電設備に分けて説明せよ。
- 送電設備
送電線の耐雷設計として最も一般的に行われているのは、電力線に直撃雷が侵入しないように送電線を遮へいする架空地線の布設である。
架空地線を布設しても、電撃電流の波高値が小さな雷では遮へい失敗し、電力線へ直接侵入することがある。このとき発生する過電圧が大きいとアークホーンでフラッシオーバする(正フラッシオーバ)。また、架空地線や鉄塔へ雷撃があった場合、雷電流が大きいとアークホーンで逆フラッシオーバが発生し、電力線に雷が侵入する。
雷によるフラッシオーバに伴う送電線事故は再送電が可能なことが多いため、ある程度の事故(フラッシオーバ)率は許容して、送電設備の小型化を図り、建設コストの上昇を抑えている。500kV 送電線では、架空地線を一般的に2条布設し、また架空地線を電力線より外側に布設し負の遮へい角とし、下位電圧よりフラッシオーバを減らし、送電線事故を減少させている。
遮へい失敗や鉄塔部での逆フラッシオーバにより電力線に侵入した雷電流は、アークホーンにより制限されるものの、電力線を伝搬して変電所に侵入し、極めて高い過電圧を発生させる。この過電圧については、以下に示すように変電設備側で対策を実施している。 - 変電設備
変電所の耐雷設計では一般に、変電所近傍の鉄塔への落雷による逆フラッシオーバによる近接雷と電力線を伝搬してくる遠方雷を考慮する。これらの雷過電圧に耐える絶縁強度を機器(変圧器や開閉器)にもたせることは経済的ではないため、変電所内に避雷器を設置し、最適位置に配置することにより雷過電圧を抑制し、効果的な絶縁協調を図っている。
避雷器の設置により過電圧抑制のための機器代は増加するものの、過電圧を確実に抑制できるため、低減した絶縁強度の変圧器や開閉器が採用でき、主要機器代が減少し、技術上、経済上並びに運用上から合理的な設計にすることができる。
500 kV の GIS 変電所を例にとると、想定雷撃電流は 150 kA を採用している。GIS 母線の広がりが下位電圧の母線より大きいことから、避雷器は線路引込口及び変圧器近傍に設置することが一般的である。雷インパルス試験電圧は、変圧器は 1 300 kV、GIS は 1 425 kV を採用している。
以上のように、送変電設備を一貫した耐雷設計が行われている。
- 送電設備
- 雷過電圧を例にとり、配電設備と送変電設備との絶縁協調の違いについて説明せよ。
配電設備は送電設備と異なり、絶縁レベルが相対的に低く、機器が分散配置されていることから、雷事故を軽減するためには耐雷対策に十分な配慮を要する。雷過電圧の発生要因は配電線への直撃雷と、近隣の落雷により発生する強い電磁界による誘導雷の2種類がある。後者による発生電圧は数百キロボルト程度にとどまり、送電線では脅威にならない。
配電設備の耐雷対策としては、架空地線で電力線と機器とを遮へいする方法と、侵入した雷による過電圧抑制や機器保護のため避雷器やアークホーンを用いる方法があり、これらを組合わせることが有効である。開閉器、変圧器などの主要な機器は、避雷器を内蔵したり、極力近傍に設置して保護している。線路も保護範囲を考慮して避雷器を適切に設置したり、電線や碍子の雷による被害を防止するために、アークホーンを設置して保護している。
解説
絶縁協調に関する問題です。類題も多く一種としては解答しやすい内容です。文字制限がなく、標準解答も長文になっているので、全ての知識を書ききる必要のある問題です。
難易度3(★★★☆☆)
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