解答
公式標準解答
(1)変圧器A、Bのタップ段数が共に中間タップであり、1次側母線から合計で280MV・A、遅れ力率0.8の電力を送電しているとき、各変圧器の2次側に流れる電流値 IA[A]、IB[A]を求めよ。
タップ段数は同じなので1台当たり、\(\small \displaystyle\frac{280MV・A}{2台}\)の送電電力を分担する。1台の変圧器に流れる2次側電流を\(\dot{I}\)[A]、2次側換算漏れリアクタンスの上流側母線電圧を\(\dot{V}\)[V]とすると、題意から次の式が成り立つ。
\(\small \displaystyle 3×\frac{\dot{V}}{\sqrt3}×\bar{\dot{I}}=\frac{280MV・A}{2台}×(0.8+j\sqrt{1.0-0.8^2})\)
1次側は中間タップなので、\(\dot{V}\)=154kVとして
\(\small \displaystyle \bar{\dot{I}}=\left[\frac{1}{\sqrt3×154×10^3}×\frac{280×10^6}{2}×(0.8+j\sqrt{1.0-0.8^2})\right]\)
\(\small \dot{I}=419.90-j314.93\)A
\(\small I_A=I_B=|\dot{I}|=524.88≒525\)A…(答)
(2)次に、変圧器Aのタップ段数のみを3段下げて2次側電圧を高くすると、両変圧器間に循環電流が流れて負荷電流に重畳する。負荷インピーダンスの大きさは変圧器の2次側換算漏れリアクタンスより十分に大きいとして、次の a) 及び b) について答えよ。
a) 循環電流を求めて、各変圧器の2次側に流れる電流値 I’A[A]、I’B[A]を求めよ。
変圧器の巻き数比が異なるため、変圧器間の2次側誘起電圧に差が生じる。
変圧器Aのタップ段数を3段下げたときに生じる2次側誘起電圧の差を\(\dot{V_C}\)[V]、循環電流を\(\dot{I_C}\)[A]とする。題意から負荷に流れる電流は無視できるので、
\(\small \displaystyle \dot{V_C}=\frac{154kV}{\sqrt3}×\frac{3kV×3段}{275kV-3kV×3段},\dot{I_C}=\frac{\dot{V_C}}{j(8Ω+8Ω)}\)となる。
これより
\(\small \displaystyle \dot{I_C}=\frac{\frac{154×10^3}{\sqrt3}×\frac{3kV×3段}{275kV-3kV×3段}}{j(8Ω+8Ω)}=\frac{\frac{154×10^3}{\sqrt3}×0.033835}{j16}=-j188.02A\)
負荷はインピーダンスなので重ね合わせの理から、\(\small \dot{I’_A}=\dot{I}+\dot{I_C},\dot{I’_B}=\dot{I}-\dot{I_C}\)であるから、
\(\small \dot{I’_A}=419.90-j314.93+(-j188.02)=419.90-j502.95 A\)
\(\small \dot{I’_B}=419.90-j314.93-(-j188.02)=419.90-j126.91 A\)
\(\small \dot{I’_A}=|\dot{I’_A}|=655.19≒655 A\)…(答)
\(\small \dot{I’_B}=|\dot{I’_B}|=438.66≒439 A\)…(答)
b) 前問 a) の結果を用いて、両変圧器間のタップ段数の差によって生じる二つの変圧器で消費される遅れ無効電力の和の変化ΔQL [Mvar]を求めよ。
タップ段数の差による遅れ無効電力の消費変化ΔQLは、\(\dot{I_C}\)が流れることによる損失であるから、
\(\small ΔQ_L=3×[(|\dot{I}+\dot{I_C}|^2+|\dot{I}-\dot{I_C}|^2)×8Ω-(|\dot{I}|^2+|\dot{I}|^2)×8Ω]\)
\(\small =3×2×|\dot{I_C}|^2×8Ω=1696900≒1.70 Mvar\)…(答)
解説
並行運転する変圧器の循環電流を求める問題で、過去の類題も多く解答しやすい問題です。一種の問題としては易しい部類なので確実に得点源としたい問題です。
難易度3(★★★☆☆)
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