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誘導電動機の学習帳

2022年8月28日

誘導電動機

三相誘導電動機の回転原理

広く知られている、アラゴの円板を例に回転原理を説明する。下図のようなアルミニウムの円板に回転軸を取り付けたものに、磁石を円板に触れないように近づける。この磁石を矢印の向きに動かすと、円板も磁石と同じ向きに力を受ける。したがって、円板の軸は、磁石の移動する向きと同じ方向へ回転する。

※画像をクリックすると動きが見えます

実際の電動機では、磁石を回転させたのと同じ効果があるように工夫がされている。

2極の回転磁界

三相交流の回転磁界を作るには、下図のように3つのコイル(赤色のaコイル、緑色のbコイル、青色のcコイル)を互いに120°ずつずらして配置し、それぞれのコイルに三相交流を流す。

※図をクリックすると合成磁束が回転しながら変化する様子を表示

上図のように、三相交流電源を接続して電流を流したとすると、右ねじの法則に従ってコイルに流れる電流による磁束が発生する。これらの磁束は、図中にしめすような合成磁束となり、N極とS極が存在していると考えてよい。連続的に三相交流を流し続けることによりこの合成磁束は回転していき、磁石を回転させているのと同じ効果となる。(図をクリックすると合成磁束の回転変化が見れます)

このような合成磁束の回転速度を、同期回転速度ns[min-1]という。

三相誘導電動機の基本特性

 巻線形三相誘導電動機の二次端子を開放した状態で、一次巻線に一定周波数\(f_1\)の三相正弦波交流電圧を印加すると、\(\fbox{励磁電流}\)は流れるが、二次電流が流れないので回転子は回転しない。二次端子を短絡すると二次電流が流れ、これと一次電流により発生する\(\fbox{回転磁界}\)とによって、回転子にトルクが発生し、回転子は回転し始める。
 回転子が滑り\(s\)で回転している場合、同期速度を\(n_0\)とすれば回転子の回転速度は\((1-s)n_0\)で表され、このとき、二次巻線に発生する起電力の周波数は\(sf_1\)である。
 回転子に負荷を接続し、その負荷を増大させると回転速度は低下する。すなわち、滑りは\(\fbox{増加すること}\)になり二次巻線に発生する起電力が大きくなる。その結果、二次電流が増加し、負荷トルクと平衡するだけの大きさのトルクを発生する。

三相誘導電動機の同期回転速度

三相誘導電動機の同期回転速度ns[min-1]は、電源の周波数をf[Hz]、極数をpとすると次式で与えられる。

$$n_s= \frac{120f}{p} [min^{-1}]$$

三相誘導電動機の滑り

誘導電動機の同期回転速度ns[min-1]と回転子速度n[min-1]が同じであると、回転子に対して磁束は動いていないことになる。つまり、誘導電動機を回転させるためのトルクも生じない。実際の誘導電動機では同期回転速度ns[min-1]よりも回転子の回転速度n[min-1]は遅くなる。nsに対するnsとnの差は滑りとよばれsで表される。

$$s= \frac{同期速度-回転速度}{同期速度}= \frac{n_s-n}{n_s}$$

三相誘導電動機の回転数

すべりをsとすると、電動機の回転速度n[min-1]は、

$$n=n_s(1-s)= \frac{120f}{p}(1-s) [min^{-1}]$$

電動機の速度(すべり)に関する問題

過去問題:
電験3種過去問【2016年機械 問4】
電験3種過去問【2017年機械 問3】
電験3種過去問【2019年機械 問4】

三相誘導電動機の簡易等価回路

 図は、三相誘導電動機の1相分のL形等価回路である。ただし、\(r_1\)は一次巻線抵抗、\(r_2’\)は二次巻線抵抗の一次換算値、\(x_1\)は一次漏れリアクタンス、\(x_2’\)は二次漏れリアクタンスの一次換算値、\(b_0及びg_0\)は励磁サセプタンス及び励磁コンダクタンスである。三相交流電源の相電圧の実効値を\(V_1\)、フェーザを\(\dot{V_1}\)とする。また、滑りを\(s\)とし、漏れリアクタンスの和を\(X=x_1+x_2’\)とする。
電動機を交流電源に接続すると、励磁電流は\(\dot{I_0}=\dot{Y}\dot{V_1}\)となり、アドミタンス\(\dot{Y}=g_0-jb_0\)であるので

\(\dot{I_0}=(g_0-jb_0)\dot{V_1}\)となる。

 \(\dot{I_0}\)による損失は\(g_0\)を流れる電流となるので

\(W_I=3g_0V_1^2\)である。

機械損\(W_m\)を無視すると、機械的出力は\(P_O=\displaystyle 3I_1’^2\frac{1-s}{s}r_2’\)である。

ここで、

\(\displaystyle I_1’=\frac{V_1}{\sqrt{\left(r_1+r_2’+\frac{1-s}{s}r_2’\right)^2+\left(x_1+x_2’\right)^2}}\)

\(\displaystyle =\frac{V_1}{\sqrt{\left(r_1+\frac{r_2′}{s}\right)^2+X^2}}\)

であるので、

\(P_O=\displaystyle\frac{3\frac{1-s}{s}r_2’V_1^2}{\left(r_1+\frac{r_2′}{s}\right)^2+X^2}\)である。

一方、\(r_1及びr_2’\)に生じる損失は\(W_C=3I_1’^2(r_1+r_2′)\)であるので、

\(W_C=\displaystyle\frac{3(r_1+r_2′)V_1^2}{\left(r_1+\frac{r_2′}{s}\right)^2+X^2}\)となる。

ここで、機械損\(W_m\)を考慮すると、電動機の効率は\(\displaystyle\frac{P_O-W_m}{P_O+W_I+W_C}\)となる。

一次負荷電流I1‘=I2/α(二次電流I2、一次巻線と二次巻線の巻数比α)

二次銅損 $$P_{c2}=I_1’^2 r_2’=sP_2 [W]$$

二次入力 $$P_{2}=P_{c2}+P_{o}= \frac{P_o}{1-s}=I_1’^2 \frac{r_2′}{s} [W]$$

出力 $$P_{o}=I_1’^2 R’=I_1’^2 \left( \frac{1-s}{s} \right) r_2’=(1-s)P_{2} [W]$$

二次入力P2と出力Po及び二次銅損Pc2の比は次の関係となる。

$$P_{2}:P_{o}:P_{c2}=P_{2}:(1-s)P_{2}:sP_2=1:(1-s):s$$

かご形誘導電動機では、回転子の導体に用いる棒の材料を銅から銅合金に変更すれば、等価回路の二次抵抗の値が増大するので、定格負荷時の効率が低下する。

三相誘導電動機のトルク

電動機のトルクT[N・m]、角速度ω[rad/s]、回転速度n[rpm]とすれば、出力Po[W]は次式となる。

$$P_{o}=ωT= \frac{2 \pi n}{60} T [W]$$

つまり$$T= \frac{60}{2 \pi n} P_{o} [W]$$

Po=(1-s)P2、n=ns(1-s)を代入すると

$$P_{2}= \frac{2 \pi n_s}{60} T [W]$$

\(P_{o}= \frac{2 \pi n}{60} T[W]\)はトルクT[N・m]を発生して回転速度n[rpm]で回転しているときの電力をあらわす。

これに対して、\(P_{2}= \frac{2 \pi n_s}{60} T[W]\)は同じトルクT[N・m]の負荷で、同期速度ns[rpm]で回転しているときの出力電力をあらわしている。これを同期ワットと呼ぶ。

誘導電動機のトルクT[N・m]は、同期ワットP2[W]に比例するので、トルクをあらわすときは出力Po[W]よりも、同期ワットP2[W]で表すことが多い。このときのトルクと同期ワットの関係は次式となる。

$$T= \frac{60}{2 \pi n_s} P_{2}=KP_2 [W]$$

トルクの比例推移

二次巻線抵抗r2’[Ω]において滑りsであるとき、負荷トルクが一定であれば、二次巻線抵抗r2’[Ω]を2倍とすれば、滑りsも2倍となる。r2’[Ω]を3倍とすれば、滑りsも3倍となる。

トルクTが一定であれば、すべりsは常にr2’[Ω]に比例して推移するので、この変化を比例推移という。

トルクに関する問題

過去問題:
電験3種過去問【2016年機械 問4】
電験3種過去問【2017年機械 問3】
電験3種過去問【2018年機械 問3】

巻線形誘導電動機

巻線形誘導電動機では、外部の可変抵抗器で二次抵抗値を変化させ、大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することができる。始動電流を制限する効果もあり、回転速度が上昇するに従って抵抗値を減少させる。

巻線形誘導電動機では、トルクの比例推移により、二次抵抗の値を大きくすると、最大トルク(停動トルク)を発生する滑りが大きくなり、始動特性が良くなる。

 巻線形誘導電動機では、回転子溝に巻線を納め、その巻線をスリップリングとブラシを介して外部抵抗回路に接続し、二次電流を変化させて特性制御を行う。

かご形誘導電動機

 かご形誘導電動機では、回転子溝に導体棒を納め、短絡環に導体棒を接続する。

特殊かご形誘導機

かご形誘導機の始動特性の特徴として始動電流が大きい割に始動トルクが小さいことがあげられる。始動特性を改良するために二次周波数の変化に対する二次抵抗の変化を利用したのが特殊かご形誘導機である。

二重かご形誘導電動機

二重かご形誘導機の回転子は、二つのかご形導体を有している。回転子表面に近い外側導体は断面積が小さく、抵抗値が大きい。軸に近い内側導体は断面積が大きく、抵抗値が小さい。始動時の二次周波数が高い間は、内側導体が構成する二次回路の漏れインダクタンスが大きいため、二次回路を流れる電流の大部分は外側導体を流れる。そのため、二次抵抗の高い誘導機として始動され、大きな始動トルクを得ることができる。二次周波数の低下に伴い、二次電流の大部分は抵抗の低い内側導体に流れる。

このような二次抵抗の変化を利用し、大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することができる。

深みぞかご形誘導電動機

深みぞかご形誘導機の回転子には半径方向に長く、幅が狭い平たい二次導体を用いている。始動時の二次周波数が高い間は、二次電流は表皮効果により導体の回転子表面近くに集中し二次抵抗は高くなる。二次周波数の低下に伴い、二次電流が導体の軸に近い部分まで広がるので、二次抵抗は低くなる。

この抵抗値の変化を利用し、大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することができる。

YーΔ始動法

 Δ結線の一次巻線をY結線に接続を変えて電源電圧を加え始動電流を制限する。回転速度が上昇するとΔ結線に戻す。

誘導電動機の速度制御

 誘導電動機の速度を自由に、かつ広範囲に制御できれば、回転機の可変速制御を必要とする分野で広く応用できる。ここに誘導電動機の同期角速度を\(\omega_{s},極数を2p,\)滑りをs,電源周波数をfとすると、回転角速度\(\omega_{m}\)は、次式のように表現される。
\(\omega_m=\omega_s(1-s)=\displaystyle\frac{2\pi f}{p}(1-s)\) …①
①式より、極数、滑りあるいは周波数のいずれかを変化できれば、誘導電動機の速度は制御できることになる。
極数を変化させる方法はあらかじめ極数が変更できるように巻線の接続法を工夫しておき、必要に応じてスイッチで切り換えることにより変える方法であるが、段階的な制御であり連続した可変速を必要とする用途には不向きである。
滑りを変化させる方式では、誘導電動機の発生トルクが入力電圧の
2乗に比例することを利用する一次電圧制御法がある。
本方式は滑りの増加とともに電動機の効率が悪化するので、電動機の効率を重視する用途には不向きである。
周波数を連続的に制御する方式は、近年の自励式インバータ電源(電力変換器)による駆動が可能となったことにより広く採用されるようになった。例えばオープンループ制御のインバータ電源による駆動ではV/f一定制御が行われ、電動機の
磁束が飽和しないようにしている。さらに精密な回転機の制御が求められる時には、ベクトル制御による高精度制御が行われる。

単相誘導電動機

 三相交流を三相巻線に流すと回転磁界が発生する。この磁界で運転される誘導電動機を三相誘導電動機という。一方、単相交流では交番磁界が発生する。この交番磁界は、正逆両方向の回転磁界が合成されたものと説明される。したがって、コンデンサ始動形単相誘導電動機では、コンデンサで位相を進めた電流を始動巻線に短時間流すことによって始動トルクの発生と回転方向の決定が行われる。