架空送電線路の構成部品
架空送電線の構成部品についてまとめました。その他の送電線についての項目は送電の学習帳に、配電線路の構成部品は配電の学習帳にまとめています。
目次
架空送電線路の構成部品

- ★電験3種過去問【2023年(下期)電力 問8】(架空送電線路の構成要素)
- ★電験3種過去問【2022年(後期)電力 問8】(架空送電線路の構成要素)
- 電験3種過去問【2020年電力 問6】(架空送電線路)
- 電験3種過去問【2019年電力 問9】(架空送電線の構成部品)
- 電験3種過去問【2017年電力 問9】(架空送電線と引込避雷器)
- 電験3種過去問【2013年電力 問8】(送電線路の構成要素)
電線
電線には鋼心アルミより線(ACSR:Alminum Conductor Steel Reinforced)が多く用いられる。鋼心アルミより線は、アルミ線を使用することで質量を小さくし、これによる強度の不足を、鋼心を用いることで補ったもの。
多導体・スペーサ

送電線において、1相に複数の電線をスペーサを用いて適度な間隔に配置したものを多導体と呼び、主に超高圧以上の送電線に用いる。多導体を用いることで、電線表面の電位の傾きが小さくなるので、コロナ開始電圧が高くなり、送電線のコロナ損失、雑音障害を抑制することができる。多導体は合計断面積が等しい単導体と比較すると、表皮効果が小さい。また、送電線のインダクタンスが減少するため、送電容量が増加し系統安定度の向上につながる。
スペーサは負荷電流による電磁吸引力や強風などによる電線相互の接近・衝突を防止したり、サブスパン振動対策として用いられる。
多導体送電の利点
超高圧送電に多く用いられる多導体送電線には、単導体送電線に比べて種々の利点がある。単導体送電線と合計断面積が等しい多導体送電線について、この多導体送電線の利点は以下。
- 電流容量
- 表皮効果が小さくなり、また放熱が良くなるので、熱的許容電流容量が増加する。
- 固有送電容量
- 送電線インダクタンスが減少し、また静電容量が増加するため、固有送電容量が増加する。
- コロナ放電
- 導体表面の電位傾度を減少できるので、ころな開始電圧が高くなり、コロナ損失、雑音障害を防止できる。
- 系統安定性
- 送電線インダクタンスが小さくなるので、同期安定度が向上する。
がいし
更に詳しく➡がいし(碍子)について
がいしは、電線を鉄塔などの支持物から絶縁して保持する装置。
送電用がいしの種類
三種ポイント➡
懸垂がいし(笠状:左)と長幹がいし(棒状:右)の特徴をよく理解しておく

懸垂がいし

高電圧送電線では笠状の懸垂がいしが広く用いられ、絶縁強化を図るには、がいしを直列に連結する個数を増やす方法や、がいしの表面漏れ距離を長くする方法が用いられる。
耐汚損設計において、がいしの連結個数を決定する場合には、送電線路が通過する地域の汚損区分と電圧階級を加味する。
長幹がいし

懸垂がいしと異なり、棒状磁器の両端に連結用金具を取り付けた形状(棒状)の長幹がいしは、雨洗効果が高く、塩害に対し絶縁性が高い。
その他のがいし
表面漏れ距離の長い耐霧がいしや耐塩がいし等がある。
がいしの塩害対策
三種ポイント➡塩害と、それにより引き起こされる障害を理解しておく。塩害対策も把握しておく。
風雨などによって、がいし表面に塩分等の導電性物質が付着することを、がいしの塩害という。
がいしの塩害が発生した場合、がいしの絶縁が低下して漏れ電流の発生により、可聴雑音や電波障害が発生する場合があり、最悪の場合フラッシオーバが生じ、送電線故障を引き起こすことがある。
がいしの塩害対策として、以下が挙げられる。
- 塩害の少ない送電ルートの選定
- がいしの絶縁強化
- がいしの洗浄
- がいし表面へのはっ水性物質(シリコンコンパウンド)の塗布の採用
アークホーン

がいしの両端に設けられた金属電極をいい、雷サージによるフラッシオーバの際生じるアークを電極間に生じさせ、がいし破損を防止するものである。
架空地線に直撃雷があった場合、鉄塔の電位が上昇し、鉄塔から電線への逆フラッシオーバを起こすことがある。この時にアークホーンにフラッシオーバを誘導することで、がいしの絶縁破壊を防ぐことができる。
アーマロッド

電線の振動疲労防止やアークスポットによる電線溶断防止のため、クランプ付近の電線に同一材質の金属を巻き付けるものである。
電線が振動すると、支持点のクランプ取付け部付近で繰り返し応力を受けて素線切れを起こし、断線が発生する。これを防止するためにクランプ部にアーマロッドを巻きつけ、クランプ部の補強を行う。
ダンパ
電線が風の影響で振動したり、着雪の重みでねじれたりするのを防止するため、ダンパ(重り)を取り付ける。
トーショナルダンパ

トーショナルダンパは、ダンパの重りがねじれ(tortional)運動をすることによって、送電線に生じる微風振動を抑制するものである。
ねじれ防止ダンパ(カウンターウェイト)


ねじれ防止ダンパは、着雪防止が目的で電線に取り付けられ、難着雪リングと併用される。
電線に湿った雪が付着すると、電線の“より”に沿って雪が回転移動をしながら成長する。雪が全体に付着した電線は重みでねじれやすく、雪の回転成長を促すため、ねじれ防止ダンパで、電線のねれを防止する。難着雪リングは雪の回転移動を防止する。
着雪防止によって、ギャロッピングによる電線間の短絡事故などを防止することができる。

相間スペーサ
強風などによる電線相互の接近及び衝突を防止するため、電線相互の間隔を保持する器具として取り付けるものである。
スパイラルロッド

低騒音化や難着雪化のため、電線にらせん状のワイヤー(スパイラルロッド)を巻きつける。
架空地線
送電線への雷の直撃(直撃雷)を避けるために設置される裸電線を架空地線という。
架空地線は、送電線路の鉄塔の上部に十分な強さをもった裸線 を張り,鉄塔を通じて接地する。
架空地線は雷害に対し静電遮へい効果によって、誘電雷を防止させ、直撃雷防止の効果を得る。また、電線との電磁的結合によって電線上の進行波を減衰させ、通信線に対する電磁誘導障害をすくなくする効果もある。
図において,架空地線と送電線とを結ぶ直線と,架空地線から下ろした鉛直線との間の角度 θ を遮へい角 と呼んでいる。この角度が小さい ほど直撃雷を防止する効果が大きい。

架空地線の導電率が高いほど、遮へい角が小さいほど、塔脚の接地抵抗が低いほど、遮へい率が大きくなる。
架空地線や鉄塔に直撃雷があった場合,鉄塔から送電線に逆フラッシオーバ を生じることがある。これを防止するために,鉄塔の接地抵抗を小さくするような対策が講じられている。塔脚接地抵抗が高いときは埋設地線(カウンターポイズ)を施設する。
架空地線にはその内部に光ファイバケーブルを実装したもの(光ファイバ複合架空地線)もあり、各種情報伝送システムに利用されている。
埋設地線(カウンターポイズ)
塔脚の地下に放射状に埋設された接地線(地表面下数十cmのところに金属裸線数本を地表面に沿って数十mにわたり放射状などに広げて埋設し、塔脚に接続するもの)、あるいは、いくつかの鉄塔を地下で連結する接地線をいい、鉄塔の塔脚接地抵抗を小さくし、逆フラッシオーバを抑止する目的等のため取り付けるものである。
避雷器

発電所や変電所などの架空電線の引込口や引出口には避雷器が設置される。
避雷器は,雷、回路の開閉などに起因するサージ電圧の波高値がある値を超えた場合,特性要素に電流が流れることによりサージ電圧を抑制して電力設備の絶縁を保護し絶縁破壊事故を防ぎ,かつ,続流を短時間のうちに遮断して原状に自復する機能を持った装置である。
避雷器は、過電圧サージに伴う電流のみを大地に放電させ、過電圧を抑制して、電気施設の絶縁を保護し、かつ、(サージ電流に続いて交流電流が大地に放電する)続流を短時間のうちに遮断して、系統の正常な状態を乱すことなく、現状に復帰する機能をもつ装置である。
避雷器は電力系統を地絡状態に陥れることなく過電圧の波高値をある抑制された電圧値に低減することができる。この抑制された電圧を避雷器の制限電圧という。
避雷器規格では、避雷器の保護性能を評価するために、8/20μsの雷インパルス電流が公称放電電流として定められている。この電流が流れるときの避雷器の両端子間に発生する電圧を制限電圧といい、値はその避雷器が保護する機器や設備の耐電圧レベルよりも低くなければならない。
酸化亜鉛形避雷器
避雷器には、非直線抵抗特性をもつ炭化けい素(SiC)素子や酸化亜鉛(ZnO)素子などが用いられるが、性能面で勝る酸化亜鉛素子を用いた酸化亜鉛形避雷器が、広く用いられている。避雷器に非直線の電圧ー電流特性を持つZnO素子を組み込むことで、サージ電圧抑制後の通常電圧による続流を遮断して系統をもとの状態に復帰させる。
酸化亜鉛形避雷器(ギャップレス避雷器)の特徴と、それによるメリットをまとめると以下。
- 直列ギャップがないため放電電圧ー時間特性に関係する課題がなく、機器絶縁に対する保護レベルが向上する。
- 微小電流から大電流サージ領域まで高い非直線抵抗特性を有することで過電圧を抑制することができる。
- 素子の単位体積当たりの処理エネルギーが大きいので、従来に比べ寸法の小型化と構造の簡素化が実現できる。
- 並列素子数を増加することにより、許容される吸収エネルギーの増加が図れ、サージに対する耐量が向上する。
- 無続流のため、多重雷などに対する動作責務に余裕があり温度上昇が少なく、機器の長寿命化が期待できる。
- 降雨等による汚損及び洗浄時の不均一電位分布などの問題がなく、局部アークの発生を抑制することができる。
一般に発変電所用避雷器で処理の対象となる過電圧サージは、雷過電圧と開閉過電圧である。避雷器で保護される機器の絶縁は、当該避雷器の制限電圧に耐えればよいこととなり、機器の絶縁強度設計のほか発変電所構内の機器配置なども経済的、合理的に決定することができる。このような考え方を絶縁協調という。
発変電所ではギャップレス避雷器を用いることが主流であるが、配電用や直流電気鉄道の電線路のがいし保護に用いられる避雷器では、万一ZnO素子が短絡状態になっても送電が可能なように、直列ギャップ付き避雷器も多く使用されている。
- 電験3種過去問【2017年電力 問9】(架空送電線と引込避雷器)
- 電験3種過去問【2015年電力 問7】(避雷器)
- 電験3種過去問【2011年電力 問10】(避雷器の役割)
- 電験2種過去問【2022年電力管理 問2】(ギャップレス避雷器の特徴と絶縁設計時の留意点)
- 電験2種過去問【2017年機械 問2】(電力用避雷器)
ギャップ付き送電用避雷装置
近年、抵抗接地系の送電線にギャップ付送電用避雷装置が広く設置されてきている。これは、落雷による送電線トリップを極力防止するために設置される。
この装置の作動メカニズムは、雷サージ過電圧の侵入時にギャップ付送電用避雷装置の気中ギャップがフラッシオーバして放電電流が流れた後、系統電圧による電流(続流)を避雷要素部の酸化亜鉛素子の特性により非常に小さく抑えて、ほとんど半サイクル以内に気中ギャップで消弧することにより、送電線トリップを防止するものである。
図1に示す酸化亜鉛型の避雷要素部と直列ギャップから構成される77kV用ギャップ付送電用避雷器装置のⒶとⒷが、図2の77kV送電線のⒶ:➀、Ⓑ:➁に接続される。その理由は質量のある避雷要素部を常時無課電で安定的に取り付けるためである。

オフセット
氷雪付着による電線のたるみ増加や、スリーとジャンプにより混触や短絡を起こすことがある。対策として、送電線の上下配列にオフセットを設けて,電線どうしが接触しないようにする方法がある。
送電線のねん架
架空送電線におけるねん架とは、送電線各相の作用インダクタンスと作用静電容量を平衡させるために行われるもので、ジャンパ線を用いて電線の配置を入れ替える。
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