地中送配電線路について
地中送配電線路について。 配電の学習帳にも地中配電線路のまとめがあります。送電線路については送電の学習帳を参照してください。
地中配電線路の特徴
高圧地中配電系統には、配電用変電所の引出口、過密都市部、電車線路や幹線道路横断箇所など架空電線路では設備が輻輳(ふくそう)し、施設することが技術的に困難な箇所に施設するものや、都市機能、景観上の観点から施設するものなどがある。
長所として、同一ルートにケーブルを多回線施設することができること、暴風など気象条件の影響を受けて他物接触による事故発生等が少なく、また、クレーンや飛来物による接触がなく供給信頼度が高い等の利点がある。
一方で、架空電線路に比べ建設費が高いこと、事故復旧に時間を要するほか、掘削工事を要することから需要増加に対する設備増強が容易ではなく、また対地静電容量の増加により深夜などに電圧上昇(フェランチ効果)が発生するおそれがあることなどの短所がある。
変圧器や開閉器などの機器の設置方法としては、地上設置形と地下設置形がある。地下設置形の場合は機器への自動車衝突回避や景観面で有利であるが、熱放散の面から機器が大きくなるばかりでなく、防水性、防食性等の設備設計・施工面に留意する必要がある。
地中送電線路は架空送電線路に比べて以下の特徴がある。
- インダクタンスは、架空送電線路に比べて小さい。
- 静電容量は、架空送電線路に比べてかなり大きい。
- 架空送電線路の場合と同様、一般に、導体抵抗、インダクタンス、静電容量を考える。
地中ケーブルの布設方式
地中配電線路のケーブルの布設方法には、一般に直接埋設式、管路式及び暗きょ式がある。
電力ケーブルの布設方法において,直接埋設式は最も工事費が安く,工期が短いが,ケーブル外傷等の被害のリスクが高く,ケーブル布設後の増設も難しい。一方で,管路式と暗きょ式(洞道式)は,ケーブル外傷等のリスク低減やケーブル布設後の増設にも優れた布設方式である。中でも暗きょ方式は,電力ケーブルの熱放散と保守の面で最も優れた布設方式である。
直接埋設式
直接埋設式は埋設条数の少ない本線部分や引込線部分で用いられ、掘削した地面の溝(土中)に、コンクリート製トラフなどの防護物を敷き並べて、防護物内にケーブルを引き入れてから埋設する方式で、ケーブル取り替えの場合には再掘削が必要となる。
直接埋設式は暗きょ式や管路式と比較すると、工事期間が短く、工事費が安い。一方で将来的な電力ケーブルの増設・引替え・ケーブル線路内での事故復旧が困難であるという特徴がある。
暗きょ式と直接埋設式は、管路式と比較するとケーブルの熱放散が一般に良好で、許容電流を高くとれる特徴がある。
暗きょ式
暗きょ式は、地中に洞道を構築するなど、あらかじめトンネル状の構造物を作っておき、その側壁に設けた受棚上(床上あるいはトラフ内)にケーブルを引き入れて布設する方式である。特に幹線道路やビル街などでは道路の反復掘削防止や地下空間の有効利用などを目的に、電力、通信、ガス、水道、下水などの地下埋設物を一括して収納する共同溝が用いられる。このうち配電線等のように需要家供給を目的とした設備だけ収容するものは供給管共同溝がと呼ばれ、主として歩道部分に設けられる。
一方、地中設備の建設費用は架空設備に比べて格段に高額なものになることから、現在ではより経済的で施工しやすい施設方式が広く採用されている。例えば、CABは共同溝の一種であり、主として歩道の下にふた掛け式の大形U字構造物を設置してこの中に電力・通信・その他ケーブルを布設する方式である。ケーブルの工事や維持補修はふたの開閉によって行われ、そのために必要な最小限の作業スペースが確保されている。
管路式と暗きょ式は我が国では主流の布設方式であり、直接埋設式と比較するとケーブルの引き替えが容易であり、電力ケーブル条数が多い場合に適している。
直接埋設式と暗きょ式は、管路式と比較するとケーブルの熱放散が一般に良好で、許容電流を高くとれる特徴がある。
管路式
管路式は、交通量や舗装などの関係から再掘削が困難な場所に求められる方式で、地中箱などの間を複数条のパイプで結んだものであり、ケーブルの引入れ、引抜き、接続などのケーブル工事に伴う再掘削は不要である。
管路式では、あらかじめ管路及びマンホール(地中箱)を埋設しておき、電力ケーブルをマンホールから管路に引き入れ、マンホール内で電力ケーブルを接続して布設する方式がある。ケーブルの接続を一般にマンホールで行うことから、布設設計や工事の自由度に制約が生じる場合がある。
暗きょ式と管路式は我が国では主流の布設方式であり、直接埋設式と比較するとケーブルの引き替えが容易であり、電力ケーブル条数が多い場合に適している。
管路式では、電力ケーブルを多条数布設すると送電容量が著しく低下する場合があり、その場合には電力ケーブルの熱放散が良好な暗きょ式が採用される。
- 電験3種過去問【2022年(後期)電力 問10】(地中送配電線の主な布設方式と特徴)
- 電験3種過去問【2019年電力 問11】(電力ケーブルの布設方式)
- 電験3種過去問【2014年電力 問10】(地中送電線の布設方式)
地中配電線路に用いられる機器
現在使用されている高圧ケーブルの主体は、架橋ポリエチレンケーブルである。
終端接続材料のがい管は、磁器製のほか、EPゴムやエポキシなど樹脂製のものもある。
直埋変圧器(地中変圧器)は、変圧器孔を地下に設置する必要があり、設置コストが大きい。地中配電系統で使用するパッドマウント変圧器には、変圧器と共に開閉器などの機器が収納されている。
高圧需要家への供給用に使用される供給用配電箱には、負荷開閉器と地絡継電装置がセットで収納されている。開閉器はガス絶縁方式である。
- ☆電験3種過去問【2023年(前期)電力 問6】(配電線路の開閉器類)
- ☆電験3種過去問【2010年電力 問12】(配電線路の開閉器類)
- 電験3種過去問【2016年電力 問11】(地中配電線路に用いられる機器)
地中電線の許容電流と損失
電力ケーブルの許容電流は、ケーブル導体温度がケーブル絶縁体の最高許容温度を超えない上限の電流であり、電力ケーブル内での発生損失による発熱量や、ケーブル周囲環境の熱抵抗、温度などによって決まる。
熱抵抗損
電力ケーブルの絶縁体やシースの熱抵抗、電力ケーブル周囲の熱抵抗といった各部の熱抵抗を小さくすることにより、ケーブル導体の発熱に対する導体温度上昇量を低減することができるため、許容電流を大きくすることができる。
電力ケーブルの敷設条数(回線数)を少なくすることにより、電力ケーブル相互間の発熱の影響を低減することができるため、1条当たりの許容電流を大きくすることができる。
誘電体損
交流電圧を印加した電力ケーブルでは、、静電容量により、電圧に対して90°進みの電流 IC が流れるが、電圧に対して同位相の電流成分がケーブル絶縁体に流れることにより誘電体損が発生する。この誘電体損は、ケーブル絶縁体の誘電率と誘電正接との積に比例して大きくなるため、誘電率及び誘電正接の小さい絶縁体の採用が望まれる。絶縁体が劣化している場合には、一般に誘電体損は大きくなる傾向がある。
誘電率、誘電正接の小さい絶縁体を採用することにより、絶縁体での発熱の影響を抑制することができるため、許容電流を大きくすることができる。
超高圧以上では,誘電体損が電圧の2乗に比例して大きくなるため,問題となる。
ケーブルの誘電体損 Wd [W] は,静電容量 C [F],周波数 f [Hz],誘電正接 tanδ ,ケーブルにかかる電圧 V [V] とすると,
誘電体損についてはCVケーブルについても参照
シース損
シース損は、ケーブルの金属シースに誘導される電流による発生損失である。シース損には、ケーブルの長手方向に金属シースを流れる電流によって発生するシース回路損と、金属シース内の渦電流によって発生する渦電流損とがある。クロスボンド接地方式の採用はシース回路損の低減に効果があり、電気抵抗の大きい金属シース材の採用は渦電流損の低減に効果がある。
電気抵抗率の高い金属シース材を採用することにより、金属シースに流れる電流による発熱の影響を低減することができるため、許容電流を大きくすることができる。
三相回路に単相ケーブルを用いると,それぞれに大きなシース損が発生し,三条合わせて用いるとさらに大きくなるため,問題となる。
抵抗損
抵抗損は、ケーブルの導体に電流が流れることにより発生する損失であり、単位長当たりの抵抗値が同じ場合、導体電流の2乗に比例して大きくなる。電力ケーブルで発生する損失のうち、最も大きい損失は抵抗損である。抵抗損の低減には、導体断面積の大サイズ化のほかに分割導体、素線絶縁導体の採用などの対策が有効である。
交流電流が流れるケーブル導体内の電流分布は、表皮効果や近接効果によって偏りが生じる。そのため、交流の場合の導体の実効抵抗は、表皮効果及び近接効果のため直流に比べて大きくなる。つまり、電力ケーブルの抵抗損では、ケーブルの交流導体抵抗が直流導体抵抗よりも増大することを考慮する必要がある。
表皮効果が小さいケーブル導体を採用することにより、導体表面側での電流を流れやすくして導体全体での電気抵抗を低減することができるため、許容電流を大きくすることができる。
導体抵抗は、温度上昇とともに大きくなる。
- 電験3種過去問【2023年(前期)電力 問10】(地中送電線路の線路定数)
- 電験3種過去問【2021年電力 問11】(地中ケーブルの許容電流)
- 電験3種過去問【2017年電力 問10】(電力ケーブルの損失)
- 電験3種過去問【2013年電力 問10】(地中電線の損失)
地中電線路の無負荷充電容量
- 再電験3種過去問【2024年(下期)電力 問10】(地中電線路の無負荷充電容量)
- 電験3種過去問【2017年電力 問16】(ケーブルの静電容量と無負荷充電電流計算)
- 再電験3種過去問【2012年電力 問11】(地中電線路の無負荷充電容量)
地中電線の許容送電電力
電力用ケーブルは,熱的限界からくる許容電流以上に電流を流せないことから,許容送電電力は許容電流によって決まる。許容電流は絶縁体に影響を及ぼさない導体の最高許容温度によって決められ,常時許容電流,短時間許容電流,瞬時許容電流等を考慮して決められる。許容送電電力を増大させる方策は,許容電流を増やすために導体を太くする,条数を増やす,強制冷却(内部冷却,外部冷却,間接冷却)する方法がある。
ある有効送電電力を送ることができる限界のケーブル長(臨界ケーブル長)が存在し,電圧が高くなるにつれて著しく短くなる。
大容量地中送電系統の留意事項
大都市に電力を供給するために 275 [kV] の大容量の電力ケーブルを使用した系統が導入されている。架空系統と異なり、地中系統に用いられる送電線用遮断器、リアクトル開閉用遮断器及び計器用変圧器についてそれぞれ考慮すべき事項を述べる。
➀地中送電線用遮断器
地中送電線路では、充電遮断電流の値が架空送電線路より大きいため、進み小電流遮断電流値として、架空送電線路より大きな値が必要である。
例えば、275kV 系統では、充電遮断電流は、架空送電線用では200 [A] に対して、地中送電線用では 500 [A] が規格化されている。
➁リアクトル開閉用遮断器
275 [kV] ではケーブルの充電容量が大きいため、それを補償するためにリアクトルが設置されることが多い。リアクトル開閉用遮断器には、再発弧サージへの考慮が必要である。その抑制対策として、開極位相制御が採用されている。
➂計器用変圧器
ケーブル系統では残留電荷の減衰時定数が長いため、計器用変圧器によって残留電荷を放電する機能が求められる。
地中送電線路の故障点位置標定
故障点位置標定は、地中送電線路で地絡事故や断線事故が発生した際に、事故点の位置を標定して地中送電線路を迅速に復旧させるために必要となる。
地中送電線路の故障点位置を標定するための方法は、いくつかある。その測定原理から、マーレーループ法は地絡事故に、静電容量測定法は断線事故に、パルスレーダ法は地絡事故と断線事故の双方に適用可能である。
各故障点位置標定法での測定回路で得た測定値に加えて、マーレループ法や静電容量測定法ではケーブルのこう長が位置標定に必要である。パルスレーダ法ではケーブル中のパルス電圧の伝搬速度がそれぞれ与えられれば、故障点の位置標定ができる。ケーブル中のパルス電圧の伝搬速度は、ケーブルの種類に応じて予め分かる。
マーレーループ法(地絡事故)
マーレーループ法は、並行する健全相と故障相の2本のケーブルにおける一方の導体端部間にマーレーループ装置を接続し、他方の導体端部間を短絡して電気抵抗計測に使われるブリッジ回路を構成することで、ブリッジ回路の平衡条件とケーブルのこう長から故障点を標定する方法である。
マーレーループ法はケーブル線路の故障点位置を標定するための方法である。この基本原理はホイートストンブリッジに基づいている。図に示すように,ケーブル A の一箇所においてその導体と遮へい層の間に地絡故障を生じているとする。この場合に故障点の位置標定を行うためには,マーレーループ装置を接続する箇所の逆側端部において,絶縁破壊を起こしたケーブル A と,これに並行する絶縁破壊を起こしていないケーブル B の導体どうしを接続して,ブリッジの平衡条件を求める。ケーブル線路長をL,マーレーループ装置を接続した端部側から故障点までの距離をx ,ブリッジの全目盛を1000,ブリッジが平衡したときのケーブル A に接続されたブリッジ端子までの目盛の読みを a としたときに,故障点までの距離xは\(\frac{aL}{500}\)で示される。
ケーブルの単位抵抗を r [Ω/m] 、装置の全抵抗値を R [Ω] とすると、ブリッジの平衡条件より、
\(\frac{1000-a}{1000}R\times rx=r(2L-x)\times\frac{a}{1000}R\\
∴x=\frac{aL}{500}\)
なお,この原理上,故障点の地絡抵抗が十分低い ことがよい位置標定精度を得るうえで必要である。
ただし,ケーブル A ,B は同一仕様,かつ,同一長とし,また,マーレーループ装置とケーブルの接続線,及びケーブルどうしの接続線のインピーダンスは無視するものとする。

さらに、導出式を一般化すれば、ケーブル全長をL/相、マーレループ装置の測定辺抵抗をR₁、R₂(R₁を故障側ケーブルに接続する)とすると、測定端から事故点までの距離 x は\(\displaystyle\frac{2L・R_1}{R_1+R_2}\)と表される。
パルスレーダ法(地絡・断線事故)
パルスレーダ法は、健全相のケーブルと故障点でのサージインピーダンスの違いを利用して、故障相のケーブルの一端からパルス電圧を入力してから故障点でパルス電圧が反射して戻ってくるまでの時間を計測し、ケーブル中のパルス電圧の伝搬速度を用いて故障点を標定する方法である。
第1波パルスと第2波パルスの時間差をt、ケーブル内のサージ伝搬速度をvとすると、測定端から事故点までの距離lは\(\displaystyle\frac{v・t}{2}\)と表される。
静電容量測定法(断線事故)
静電容量測定法は、ケーブルの静電容量と長さが比例することを利用し、健全相と故障相のケーブルの静電容量をそれぞれ測定することで故障点を標定する方法である。
表2
事故点測定法 | 原理 | 長所 | 短所 |
マーレーループ法 | ホイートストンブリッジの原理により、事故点までの抵抗値を高精度に測定する方法である。 | ・導体抵抗を利用したホイートストンブリッジ法のため、測定精度が高く、誤差は1%程度以下である。 ・ケーブル事故の多くが1線地絡であるため、適用範囲、使用実績が最も多い。 | ・断線事故に適用できない。 ・三相同時地絡事故のように並行健全相がない場合、測定は困難である。 |
パルスレーダー法(送信形パルス法) | 事故ケーブルにパルス電圧を加え、健全相と異なるサージインピーダンスをもつ事故点からの反射パルスを検知して、パルスの伝搬時間を測定し、事故点までの距離を求める方法である。 | ・並行健全相が不要であるので、三相同時地絡、短絡事故の測定に適している。 ・断線事故に適用できる。 ・線路こう長がはっきりしていない場合でも測定できる。 | ・測定操作、パルス波形の判読に熟練を必要とする。 ・測定精度が若干低い。(誤差は一般的に2~5%) |
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