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電気化学の学習帳

2023年3月22日

電気分解

ファラデーの電気分解の法則

析出(電気分解)された物質の量は、流れた電気量に比例する。

1グラム当量の物質を析出させるのに必要な電気量は、物質の種類によらず一定である。(ファラデー定数で与えられる)

ファラデー定数

電気量のモル当量単位としてファラデー(F)が定義されている。言い換えると、電気当量は酸化還元反応の半反応式について1モル当量の酸化還元反応を引き起こす電子の移動量を電荷量であらわしたものである。

電子1個あたりの電荷量 1.60×10-19 [C] 、1mol の物質量6.02 × 1023[個/mol]

1[mol]の電子は1.60×10-19 × 6.02 × 1023 ≒ 96500 [C/mol] の電荷量を持つ。

この電子1molあたりの電気量F=96500[C/mol]をファラデー定数と呼ぶ。

水の電気分解

 電力を大量に貯蔵・輸送するために水を電気分解して水素を製造することが検討されている。水酸化カリウム水溶液などの塩基性の電解質を用いた時のカソード上の反応は、
\(2H_2O+2e^-\to H_2+2OH^-\)
アノードではカソードで生成した\(OH^-\)を\(\fbox{酸化}\)して\(\fbox{酸素}\)を生成する。

食塩水の電気分解

\(\displaystyle NaCl+H_2O→\frac{1}{2}Cl_2+\frac{1}{2}H_2+NaOH\)

このとき、陽極・陰極で起こる反応はそれぞれ

陽極:\(\displaystyle Cl^{-}→\frac{1}{2}Cl_2+e^{-}\)

陰極:\(\displaystyle H^{+}+e^{-}+OH^{-}→\frac{1}{2}H_2+OH^{-}\)

\(\displaystyle →OH^{-}+Na^{+}→NaOH\)

過去問題:
電験2種過去問【2021年機械 問5】(食塩電解に関する知識)

電気分解での効率

\(\displaystyle \text{電流効率}=\frac{\text{理論電気量}}{\text{実際の電気量}}=\frac{\text{理論積出量}}{\text{実際の析出量}}\)

\(\displaystyle \text{電圧効率}=\frac{\text{理論電圧}}{\text{実際の電圧}}\)

\(\displaystyle \text{電力効率}=\frac{\text{理論電力量}}{\text{実際の電力量}}\)

電池

一つの電解質に接した2種類の電極を導線で結ぶと、一方の電極で酸化、もう一方の電極で還元反応が起こる。このように酸化還元反応に伴ってエネルギーを電気エネルギーに変える装置を電池(化学電池)という。

一次電池

アルカリマンガン乾電池

 アルカリマンガン乾電池は負極に亜鉛粉、正極に二酸化マンガン、電解液に水酸化カリウム水溶液を用いた公称電圧1.5Vの一次電池である。

 あるアルカリマンガン乾電池を1000mAの定電流でセル電圧が所定の終止電圧になるまで放電したとき、通電電気量が6000mA・h、電力量が6.60W・hであった。

 このとき、放電に要した時間は\(\displaystyle\frac{6000mA・h}{1000mA}=6\)h、平均電圧は\(\displaystyle\frac{6.6W・h}{6h\times 1000mA}=1.1\)Vとなる。

 亜鉛、酸素及び水素の原子量をそれぞれ65.38、16.00及び1.01、ファラデー定数を26.80A・h/molとすると、通電電気量が6000mA・hであるので、放電で水酸化亜鉛(Zn(OH)2)のみが生成されるとすると、その物質量は、

 \(\displaystyle\frac{6000\times10^{-3}}{26.80}=0.224\)[mol]

(Zn(OH)2)の物質量が0.224[mol]であるとき、その質量は

\(\displaystyle\left(65.38+2\times(16.00+1.01)\right)\times0.224=22.2\)gである。

電験2種過去問【2018年機械 問6】(アルカリマンガン乾電池の化学変化)

二次電池

鉛蓄電池

鉛充電池の充放電時の化学方程式は次となる。

\(\begin{array}{ccccc}
\scriptstyle陽極&&\scriptstyle電解液&&\scriptstyle陰極\\
PbO_2&+&2H_2SO_4&+&Pb\\
\scriptstyle二酸化鉛&&\scriptstyle希硫酸&&\scriptstyle鉛
\end{array}\)

\(\small\displaystyle      放電↓↑充電\)

\(\begin{array}{ccccc}
\scriptstyle陽極&&\scriptstyle電解液&&\scriptstyle陰極\\
PbSO_4&+&2H_2O&+&PbSO_4\\
\scriptstyle硫酸鉛&&\scriptstyle水&&\scriptstyle硫酸鉛
\end{array}\)

鉛蓄電池の特徴

  • 起電力は約2Vで、浮動充電は2.15V程度。放電終止電圧は約1.8V
  • 放電終止電圧以下となる放電をするとサルフェーション(電極に白色の硫酸鉛が析出)が生じる。
  • 自己放電が大きい

リチウムイオン電池

 リチウムイオン電池は、携帯電話やノートパソコン、電気自動車などさまざまな用途に用いられる小型、軽量で起電力が高い二次電池である。この電池は、公称電圧が約3.7Vの高性能電池である。代表的なものとして、負極に黒鉛Cに取り込まれたリチウム、正極にはコバルト(Ⅲ)酸リチウム\(LiCoO_2\)などのリチウム遷移金属酸化物を用い、電解質としては高い電圧でも分解しない有機物系の材料である、エチレンカーボネート\((CH_2O)_2CO)\)などの有機化合物へキサフルオロリン酸リチウム\(LiPF_6\)などのを溶かしたものを用いたものがある。
放電時には負極の活物質にインターカレーションしているリチウムイオンが放出される。負極では電子が奪われて酸化して\(Li^{+}\)が生じ、電解質を通り正極内の層間に入る。このとき、正極の活物質が還元して電解質中のリチウムイオンが取り込まれる。
充放電の反応は次のとおりである。

\(\small{\begin{array}{ccc}
&&放電&\\
[負極]&LiC_6&⇄&Li^{+}+C_6+e^{-}\\
&&充電&\\
&&&\\
&&放電&\\
[正極]&CoO_2+Li^{+}+e^{-}&⇄&LiCoO_2\\
&&充電&\\
&&&\\
&&放電&\\
[全体の反応]&LiC_6+CoO_2&⇄&LiCoO_2+C_6\\
&&充電&\\
\end{array}}\)

である。

 大きな出力が必要な場合、通常より大電流放電されるが、この時のセル電圧は公称電圧より低い。電池は応用システムの電流や電圧の要求に従って直並列に接続した電池システムとして用いられる。ある電池の重量エネルギー密度が175W・h/kgであり、平均電圧3.5Vで500mAでの放電を10h行えるとすると、この電池の重量は

\(\displaystyle\frac{3.5\times500\times10^{-3}\times10}{175}=0.1\)[kg]

約100gとなる。

ナトリウム-硫黄電池

 大規模な電力貯蔵用の二次電池として、ナトリウム-硫黄電池がある。この電池は高温状態で使用されることが一般的である。負極活性物質にナトリウム、正極活性物質に硫黄を使用し、仕切りとなる固体電解物質には、ナトリウムイオンだけを透過する特性があるベータアルミナを用いている。
 セル当たりの起電力は1.7~2.1Vと低く、容量も小さいため、実際の電池では、多数のセルを直並列に接続して集合化し、モジュール電池としている。この電池は、鉛蓄電池に比べて単位質量当たりのエネルギー密度が3倍と高く、長寿命な二次電池である。