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電験3種過去問【2021年機械 問13】

2022年4月24日

【自動制御】周波数伝達関数のボード線図《計算問題》

 次の文章は、図に示す抵抗R、並びにキャパシタCで構成された一次遅れ要素に関する記述である。
 図の回路において、入力電圧に対する出力電圧を、一次遅れ要素の周波数伝達関数として表したとき、折れ点角周波数ωcは\(\fbox{(ア)}\)rad/sである。ゲイン特性は、ωcよりも十分低い角周波数ではほぼ一定の\(\fbox{(イ)}\)dBであり、ωcよりも十分高い角周波数では、角周波数が10倍になるごとに\(\fbox{(ウ)}\)dB減少する直線となる。また、位相特性は、ωcよりも十分高い角周波数でほぼ一定の\(\fbox{(エ)}\)°の遅れとなる。

 上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

\(\small{\begin{array}{ccccc}
&(ア)&(イ)&(ウ)&(エ)\\
\hline(1)&100&20&10&45\\
\hline(2)&100&0&20&90\\
\hline(3)&100&0&20&45\\
\hline(4)&0.01&0&10&90\\
\hline(5)&0.01&20&20&45\\
\hline\end{array}}\)

解答と解説はこちら

解答

(2)

解説

 図の回路において、入力電圧に対する出力電圧を、一次遅れ要素の周波数伝達関数として表したとき、折れ点角周波数ωc\(\fbox{100}\)rad/sである。ゲイン特性は、ωcよりも十分低い角周波数ではほぼ一定の\(\fbox{0}\)dBであり、ωcよりも十分高い角周波数では、角周波数が10倍になるごとに\(\fbox{20}\)dB減少する直線となる。また、位相特性は、ωcよりも十分高い角周波数でほぼ一定の\(\fbox{90}\)°の遅れとなる。

(ア)折れ点角周波数ωc[rad/s]は、時定数τの逆数となる。

\(\displaystyle ω_c=\frac{1}{τ}\)

一次遅れ要素の時定数\(\displaystyle τ=RC\)であるので

\(\displaystyle ω_c=\frac{1}{RC}=\frac{1}{10\times 0.001}=100\)

 

入力電圧を\(\displaystyle \dot{E}_i(jω)\)、出力電圧を\(\displaystyle \dot{E}_o(jω)\)とすると、

\(\displaystyle \dot{E}_o(jω)=\frac{\frac{1}{jωC}}{R+\frac{1}{jωC}}\dot{E}_i(jω)\)

\(\displaystyle =\frac{1}{1+jωCR}\dot{E}_i(jω)\)

周波数伝達関数G(jω)は以下で与えられるので、

\(\displaystyle G(jω)=\frac{\dot{E}_o(jω)}{\dot{E}_i(jω)}\)

\(\displaystyle =\frac{1}{1+jωCR}\)

デシベルを単位としたゲインG[dB]は以下で与えられる。

\(\displaystyle G=20\log_{10}|G(jω)|\)

したがって、

\(\displaystyle =20\log_{10}|\frac{1}{1+jωCR}|\)

\(\displaystyle =20\log_{10}\frac{1}{\sqrt{1^2+(ωCR)^2}}\)

\(\displaystyle =20\log_{10}\frac{1}{\sqrt{1+(ωCR)^2}}\)

ここで、時定数\(\displaystyle τ=RC\)であるので

\(\displaystyle G=20\log_{10}\frac{1}{\sqrt{1+(ωτ)^2}}\)[dB]

(イ)ωcよりも十分低い角周波数ω=0では

\(\displaystyle G=20\log_{10}1=0\)[dB]

(ウ)\(\displaystyle ω_c=\frac{1}{τ}\)よりも十分高い角周波数\(\displaystyle ω_{10}=\frac{10}{τ}\)では

\(\displaystyle G_{10}=20\log_{10}\frac{1}{\sqrt{1+(ωτ)^2}}\)

\(\displaystyle =20\log_{10}\frac{1}{\sqrt{1+(10)^2}}=-20\)[dB]

その10倍の角周波数\(\displaystyle 10ω_{10}=\frac{100}{τ}\)では

\(\displaystyle G_{100}=20\log_{10}\frac{1}{\sqrt{1+(100)^2}}=-40\)[dB]

角周波数ωは10倍になるごとに20dB減少する。

 

(エ)周波数伝達関数G(jω)の位相角θは

\(\displaystyle G(jω)=\frac{1}{1+jωCR}\)

\(\displaystyle =\frac{1-jωCR}{(1+jωCR)(1-jωCR)}\)

\(\displaystyle =\frac{1-jωCR}{1+(ωCR)^2}\)

\(\displaystyle =\frac{1}{1+(ωCR)^2}(1-jωCR)\)

であるので、\(\displaystyle 1-jωCR\)の複素数部について考えると

\(\displaystyle \cos\theta=\frac{1}{\sqrt{1+(ωCR)^2}}\)

ω→∞とすると、

\(\displaystyle \cos\theta=\frac{1}{\sqrt{1+(ωCR)^2}}≒\frac{1}{∞}=0\)

\(\displaystyle \theta=\cos^{-1}0=±90°\)

\(\displaystyle 1-jωCR\)の複素数は遅れであるので

\(\displaystyle \theta=-90°\)