// google adsence用 電験1種過去問【2022年電力管理 問4】 | 電気主任技術者のいろは

電験1種過去問【2022年電力管理 問4】

2024年9月5日

【送電】過渡安定性に関する問題《論説問題》

 図1の1機無限大母線系統における過渡安定性とその向上対策について、以下の問に答えよ。慣性定数をM、発電機の機械的入力をPm、発電機出力をPe、発電機端の電圧をVs∠δ、送電線のインピーダンスをjX、無限大母線の電圧をVr∠0とする。なお、δは[rad]、Mは[sec²/rad]で、その他は[p.u.]で表されている。

(1)発電機の動揺方程式の\(\displaystyle M\frac{d^2δ}{dt^2}\)をPm、Peで、PeをVs、Vr、X及びδで表し、送電線で地絡などの故障が起きた直後のPmとPeの変化によるδへの影響を50字程度以内で説明せよ。また、M、δ、Xの各々に関して過渡安定性が悪化する条件を、各変数について大小で簡潔に示せ。

(2)送電線故障による電力系統の過渡安定性を向上するための具体的な方策について、故障中のPeの観点から三つ簡潔に示せ。

(3)過渡安定性を向上するためのPmに関する具体的な方策として、電源制限による過渡安定性の改善効果を、平行2線送電線に地絡などの故障が発生した場合を示す図2の電力相差角曲線を用いて、簡潔に説明せよ。また、電源制限を実施する場合の留意事項と対策を100字程度以内で説明せよ。

(4)平行2回線送電線では、2回線×3相の計6相に発生する故障は様々な組み合わせがあるが、超高圧送電線における高速による多相再閉路方式において、同相での2回線地絡故障(1φG2LG)が、1回線3相地絡故障(3φG3LG)よりも過渡安定性が厳しくなる理由を故障中、故障除去後のPeの観点で200字程度以内で説明せよ。なお、説明は、図2の電力相差角曲線を用いてもよい。

解答と解説はこちら

公式標準解答

1)発電機の動揺方程式の\(\displaystyle M\frac{d^2δ}{dt^2}\)をPm、Peで、PeをVs、Vr、X及びδで表し、送電線で地絡などの故障が起きた直後のPmとPeの変化によるδへの影響を50字程度以内で説明せよ。また、M、δ、Xの各々に関して過渡安定性が悪化する条件を、各変数について大小で簡潔に示せ。

 発電機の動揺方程式は次式で表される。
 \(\displaystyle M\frac{d^2δ}{dt^2}=P_m-P_e\)
 また、Peは次式で表される。
 \(\displaystyle P_e=\frac{V_sV_r}{X}sinδ\)
 Pmは短時間では変化しないが、Peは低下するため加速し、無限大母線の発電機との回転速度に差が生じ、δが拡大する。…(答)
 過渡安定性が悪化する条件は、
 ・Mが小さいこと
 ・初期のδが大きいこと
 ・Xが大きいこと
である。…(答)

(2)送電線故障による電力系統の過渡安定性を向上するための具体的な方策について、故障中のPeの観点から三つ簡潔に示せ。

 発電機加速の抑制策として、Peを加速時に大きくすること、故障除去を早くすることが必要である。具体的な対策方法は以下が挙げられる。(以下から3点)

Peを加速時に大きくする具体的な対策方法
・制動抵抗制御(SDR)
・超速応励磁でVsを高める。
・励磁装置頂上電圧を引き上げる。
・調相設備で発電機と無限大母線の間の電圧を高める。
・以下によるXの低下。
 ・系統電圧階級の引き上げ
 ・直列コンデンサの挿入
 ・多回線化、ループ化、中間開閉所の設置
故障除去を早くする具体的な対策方法
・保護リレー及び遮断器の高速度化

(3)過渡安定性を向上するためのPmに関する具体的な方策として、電源制限による過渡安定性の改善効果を、平行2線送電線に地絡などの故障が発生した場合を示す図2の電力相差角曲線を用いて、簡潔に説明せよ。また、電源制限を実施する場合の留意事項と対策を100字程度以内で説明せよ。

 故障除去後の機械的入力を抑制することで過渡安定性が向上する。…(答)

 電制により、周波数の低下や電圧上昇・低下が生じる可能性に留意が必要である。そのため、電制後の需給バランスに配慮した制御や、調相設備などの開閉による無効電力制御を合わせて実施する。…(答)

(4)平行2回線送電線では、2回線×3相の計6相に発生する故障は様々な組み合わせがあるが、超高圧送電線における高速による多相再閉路方式において、同相での2回線地絡故障(1φG2LG)が、1回線3相地絡故障(3φG3LG)よりも過渡安定性が厳しくなる理由を故障中、故障除去後のPeの観点で200字程度以内で説明せよ。なお、説明は、図2の電力相差角曲線を用いてもよい。

 故障中の電力相差角曲線(Pe)は、1φG2LGの方が3φG3LGよりも大きくなり、加速度領域は小さくなる方向である。他方、故障除去後の電力相差角曲線(Pe)は1相が欠相状態となるため、1回線3相開放よりも送電電力は低下するため、減速領域は小さくなる方向である。
 故障除去は高速(3~4サイクル程度)で行い、再閉路は1秒程度で行うため、1φG2LGの減速領域の減少の影響が大きく、3φG3LGよりも過渡安定性が厳しくなる。…(答)

解説

 過渡安定性に関する論説問題です。過去の類題は多く解答しやすい分野ですが、一種であるため内容が専門的です。発電機の動揺方程式は記述できるようにしておきたいところです。また、類題対策として(4)の過渡安定性が厳しくなる理由もきちんと理解しておく必要があります。

難易度3(★★★☆☆)

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