電験３種過去問【2017年電力 問17】

解答

(a):（4）が最も近い。
(b):（2）が最も近い。

解説

　(a)問題の力率改善に必要なコンデンサの容量計算は頻出の範囲です。ただし、(b)問題の電圧変動率と線路パーセントインピーダンスの関係を理解するにはかなりの習熟が必要です。

(a) 合成力率を 100 % にするために必要な力率改善用コンデンサの総容量の値 [kvar] を求める。

　P_A=6 000 kW (遅れ力率 90 %) の負荷 A の無効電力 Q_A [kvar]は，cosθ_A=0.9 なので
　\(sin\theta _A=\sqrt{1^2-0.9^2}=0.436\)
　\(Q_A=P_Atan\theta _A\)
　　\(=6000\times\frac{0.436}{0.9}\)
　　\(=2906.7\)[kvar]
　P_B=3 000 kW (遅れ力率 95 %) の負荷 B の無効電力 Q_B [kvar]は，cosθ_B=0.95 なので
　\(sin\theta _B=\sqrt{1^2-0.95^2}=0.312\)
　\(Q_B=P_Btan\theta _B\)
　　\(=3000\times\frac{0.312}{0.95}\)
　　\(=985.3\)[kvar]

　負荷 A 及び B による遅れ無効電力の合計は，
　\(Q_A+Q_B=3892\)[kvar]
したがって，合成力率を 100 % にするためには，3892 [kvar] の進み無効電力で補償すればよい。つまり，必要な力率改善用コンデンサの総容量の値は 3892[kvar] となる。

(b) 力率改善用コンデンサ 1 000 kvar を投入したとき，投入前後の需要家端 D の電圧変動率が 0.8 % であるとき，電源側を見たパーセントインピーダンスの値 [％] (10MV・A ベース) を求める。

　前問より，負荷 A 及び B による有効電力の合計は 9000 kW ，遅れ無効電力の合計は 3892 kvar である。コンデンサ投入前の需要家端に流れ込む負荷電流は，10MV・A ベースで単位法により考えると， 0.9-j0.3892 [p.u.] となる。
　またコンデンサ投入後は， 1 000 kvar の進み無効電力補償がなされるので，3892-1000=2892 kvar の遅れ無効電力が需要家端 D に供給される。このとき，流れ込む電流は 0.9-j0.2892 [p.u] となる。
　コンデンサ投入前後での電流の差は，
　\((0.9-j0.2892)-(0.9-j0.3892)\)
　　\(=j0.1\)[p.u.]
この電流の差が，線路インピーダンスの電圧降下の変化分となり，すなわち電圧変動率となる。求める線路のパーセントインピーダンスを単位法で x とすると，電圧変動率は単位法で0.008（0.8％）であるので，
　\(ε=x\times 0.1=0.008\)
　∴\(x=0.08\)[p.u.]
　したがって，求める線路インピーダンスは 8 [%] となる。