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電験1種過去問【2021年電力 問6】

2024年4月14日

【送電】対称座標法に関する記述《論説問題》

 次の文章は、対称座標法に関する記述である。文中の【   】、に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
 電力系統の故障電流は、故障点に【(1)】を適用し、電力系統側を電圧源とインピーダンスからなる等価回路で表現して計算するのが一般的である。その際には、故障点に仮想的に設けた端子での三相電圧・電流を対称座標変換し、故障点から見た電力系統を発電機の基本式を用いて表すことにより故障電流を計算することが多い。
 対称座標法では、三相(a, b, c で表す)の電圧・電流を零相、正相、逆相(それぞれ 0, 1, 2 で表す)の電圧・電流に変換する。例えば正相電流\(\dot{I}_1\)は、三相電流を\(\dot{I}_a,\dot{I}_b,\dot{I}_c\)とすれば、\(\displaystyle a=-\frac{1}{2}+j\frac{\sqrt{3}}{2}\)を用いて【(2)】となる。
 故障前における故障点の a 相電圧を\(\dot{E}_a\)、故障点から見た零相、正相、逆相インピーダンスをそれぞれ\(\dot{Z}_0,\dot{Z}_1,\dot{Z}_2\)とするとき、1線地絡故障時(故障相は a 相)及び3線地絡時の故障点電流は次の通りとなる。ただし、故障点抵抗は 0 とする。
・1線故障時:【(3)】
・3線故障時:【(4)】
 上記の計算のためには発電機等の対称分インピーダンスが必要である。発電機、送電線、変圧器の直列インピーダンスは以下の特徴を有する。

  1.  発電機:正相の電機子電流は発電機内に機械的な回転方向と同じ方向に回転する回転磁界を、逆相の電機子電流はそれと反対方向に回転する回転磁界を作るのに対して、零相の電機子電流は発電機内に回転磁界を作らない。これらにより、発電機の零相、正相、逆相インピーダンスは異なる値をとる。図は、単相の外部電源(電圧\(\dot{V}\))に発電機の三相巻線を直列に接続することにより、発電機の零相インピーダンスを測定する回路である。この場合、\(\dot{V}\)は三相電圧の和となるため零相電圧の【(5)】となり、電流\(\dot{I}\)は三相電流が等しいため零相電流だけとなる。このため、\(\dot{V}\)と\(\dot{I}\)より零相インピーダンスが求められる。
  2.  送電線:正相及び逆相電流が作る電線周辺の磁界の大きさはどちらでも同じとなるため、正相及び逆相インピーダンスは同一となる。また、零相インピーダンスは、零相電流が大地を帰路として各相導体に同位相で流れるため、正相、逆相インピーダンス【(6)】
  3.  変圧器:正相、逆相インピーダンスとしては変圧器の漏れリアクタンスを考慮する必要がある。また零相インピーダンスには、変圧器の結線方式とともにその【(7)】が大きく影響する。
[問6の解答群]
解答と解説はこちら

解答

(1):(リ)
(2):(タ)
(3):(ヌ)
(4):(ソ)
(5):(イ)
(6):(ホ)
(7):(ネ)

解説

 電力系統の故障電流は、故障点に【(リ)テブナンの定理】を適用し、電力系統側を電圧源とインピーダンスからなる等価回路で表現して計算するのが一般的である。その際には、故障点に仮想的に設けた端子での三相電圧・電流を対称座標変換し、故障点から見た電力系統を発電機の基本式を用いて表すことにより故障電流を計算することが多い。
 対称座標法では、三相(a, b, c で表す)の電圧・電流を零相、正相、逆相(それぞれ 0, 1, 2 で表す)の電圧・電流に変換する。例えば正相電流\(\dot{I}_1\)は、三相電流を\(\dot{I}_a,\dot{I}_b,\dot{I}_c\)とすれば、\(\displaystyle a=-\frac{1}{2}+j\frac{\sqrt{3}}{2}\)を用いて【(タ)\(\frac{\dot{I}_a+a\dot{I}_b+a^2\dot{I}_c}{3}\)】となる。
 故障前における故障点の a 相電圧を\(\dot{E}_a\)、故障点から見た零相、正相、逆相インピーダンスをそれぞれ\(\dot{Z}_0,\dot{Z}_1,\dot{Z}_2\)とするとき、1線地絡故障時(故障相は a 相)及び3線地絡時の故障点電流は次の通りとなる。ただし、故障点抵抗は 0 とする。
・1線故障時:【(ヌ)\(\frac{3\dot{E}_a}{\dot{Z}_0+\dot{Z}_1+\dot{Z}_2}\)】
 ※1相地絡は対称回路が直列に接続された等価回路となる→詳しく
・3線故障時:【(ソ)\(\frac{\dot{E}_a}{\dot{Z}_1}\)】
 ※三相短絡と同じであるので1相分を考慮すればよい
 上記の計算のためには発電機等の対称分インピーダンスが必要である。発電機、送電線、変圧器の直列インピーダンスは以下の特徴を有する。

  1.  発電機:正相の電機子電流は発電機内に機械的な回転方向と同じ方向に回転する回転磁界を、逆相の電機子電流はそれと反対方向に回転する回転磁界を作るのに対して、零相の電機子電流は発電機内に回転磁界を作らない。これらにより、発電機の零相、正相、逆相インピーダンスは異なる値をとる。図は、単相の外部電源(電圧\(\dot{V}\))に発電機の三相巻線を直列に接続することにより、発電機の零相インピーダンスを測定する回路である。この場合、\(\dot{V}\)は三相電圧の和となるため零相電圧の【(イ)3倍】となり、電流\(\dot{I}\)は三相電流が等しいため零相電流だけとなる。このため、\(\dot{V}\)と\(\dot{I}\)より零相インピーダンスが求められる。
  2.  送電線:正相及び逆相電流が作る電線周辺の磁界の大きさはどちらでも同じとなるため、正相及び逆相インピーダンスは同一となる。また、零相インピーダンスは、零相電流が大地を帰路として各相導体に同位相で流れるため、正相、逆相インピーダンス【(ホ)より大きい】
  3.  変圧器:正相、逆相インピーダンスとしては変圧器の漏れリアクタンスを考慮する必要がある。また零相インピーダンスには、変圧器の結線方式とともにその【(ネ)中性点接地インピーダンス】が大きく影響する。

 対称座標法に関する記述です。対称座標法に関しては、出題が多いわけではないですが、一種合格を目指すのであれば、是非、理解しておきたいところです。


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