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電験3種過去問【2017年電力 問4】

2022年4月24日

【原子力発電】原子力発電の核燃料消費量の計算《計算問題》

 原子力発電に用いられるM[g]のウラン235を核分裂させたときに発生するエネルギーを考える。ここで想定する原子力発電所では、上記エネルギーの30%を電力量として取り出すことができるものとし、この電力量をすべて使用して、揚水式発電所で揚水できた水量は90000m3であった。このときのMの値[g]として、最も近い値を次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
 ただし、揚水式発電所の揚程は240m、揚水時の電動機とポンプの総合効率は84%とする。また、原子力発電所から揚水式発電所への送電で生じる損失は無視できるものとする。
 なお、計算には必要に応じて次の数値を用いること。
  核分裂時のウラン235の質量欠損0.09%
  ウランの原子番号92
  真空中の光の速度3.0×108m/s

(1)0.9
(2)3.1
(3)7.3
(4)8.7
(5)10.4

解答と解説はこちら

解答

(5)

解説

 ウラン235の燃料質量をM[g]とする。単位を[g]⇒[kg]に変換すると、ウラン235の燃料質量はM×10-3[kg]である。

核分裂時のウラン235の質量欠損は0.09%であったので、欠損した質量m[kg]は

\(\displaystyle m=M\times10^{-3}\times\frac{0.09}{100}\\
=0.9M\times10^{-6}\text{[kg]}\)

m[kg]の質量欠損によって生じるエネルギーE[J]は、真空中の光の速度c=3.0×108m/sとすると

\(\displaystyle E=mc^2\\
=0.9M\times10^{-6}\times(3.0\times10^{8})^2\\
=8.1M\times10^{10}\text{[J]}\)

題意での原子力発電所では、発生エネルギーEのうち30%を電力量WAとして送電できる。

\(\displaystyle W_A=0.3\times E\\
=2.43M\times10^{10}\text{[J]}\)

この電力量をすべて使用して、揚水式発電所で揚水できた水量は90000m3であった。

揚水入力P[kW]は\(\displaystyle P=\frac{9.8QH}{η_Mη_P}\)[kW]で与えられる。ここで、H[m]は揚程、Q[m3/s]は流量、ηMは電動機効率、ηPはポンプ効率。

流量Q[m3/s]は単位時間あたりに、揚水できる水量V[m3]であり、一方で、揚水入力P[kW]=P[kJ/s]は単位時間あたりのエネルギー量である。つまり発電時間における揚水入力電力量WA[kJ]と揚水できる水量V[m3]は、

\(\displaystyle W_A=\frac{9.8VH}{η_Mη_P}\\
\displaystyle =\frac{9.8\times90000\times240}{0.84}\\
\displaystyle =252\times10^6\text{[kJ]}\\
=252\times10^9\text{[J]}\)

つまり、ウラン燃料質量M[g]は

\(\displaystyle W_A=2.43M\times10^{10}=252\times10^9\\
\displaystyle ∴M=\frac{252\times10^9}{2.43\times10^{10}}\\
\displaystyle =10.37\text{[g]}\)