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電験3種過去問【2017年電力 問16】

2025年6月2日

【配電】ケーブルの静電容量と無負荷充電電流計算《計算問題》

 図に示すように,対地静電容量 Ce [F] ,線間静電容量 Cm [F] からなる定格電圧 E [V] の三相 1 回線のケーブルがある。
 今,受電端を開放した状態で,送電端で三つの心線を一括してこれと大地間に定格電圧 E [V] の\(\frac{1}{\sqrt3}\)倍の交流電圧を加えて充電すると全充電電流は 90 A であった。
 次に,二つの心線の受電端・送電端を接地し,受電端を開放した残りの心線と大地間に定格電圧 E [V] の\(\frac{1}{\sqrt3}\)倍の交流電圧を送電端に加えて充電するとこの心線に流れる充電電流は 45 A であった。
 次の(a)及び(b)の問に答えよ。
 ただし,ケーブルの鉛被は接地されているとする。また,各心線の抵抗とインダクタンスは無視するものとする。なお,定格電圧及び交流電圧の周波数は,一定の商用周波数とする。

(a) 対地静電容量 Ce [F] と線間静電容量 Cm [F] の比\(\frac{C_e}{C_m}\)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)0.5
(2)1.0
(3)1.5
(4)2.0
(5)4.0

(b) このケーブルの受電端を全て開放して定格の三相電圧を送電端に加えたときに 1 線に流れる充電電流の値 [A]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)52.5
(2)75
(3)105
(4)120
(5)135


「出典:平成29年度第三種電気主任技術者試験(電力)」

解答と解説はこちら

解答

(a):(5)が最も近い。
(b):(1)が最も近い。

解説

 ケーブルの静電容量についてしっかり理解しておく必要があります。

(a) 対地静電容量 Ce [F] と線間静電容量 Cm [F] の比\(\frac{C_e}{C_m}\)を求める。

 受電端を開放した状態で,送電端で三つの心線を一括してこれと大地間に\(\frac{E}{\sqrt3}\) [V] の交流電圧を加えたとき,全充電電流は 90 A であった。心線を一括しているので線間静電容量 Cm [F] は短絡されている状態である。つまり,このときの対地静電容量は 3Ce [F] となる。したがって,角周波数を ω [rad/s] とすると,次式が成立する。
 \(\frac{\frac{E}{\sqrt3}}{\frac{1}{\omega 3C_e}}=90\)
 ∴\(\sqrt3E\omega C_e=90\)
 ∴\(C_e=\frac{90}{\sqrt3E\omega}\)…➀

 二つの心線の受電端・送電端を接地し,受電端を開放した残りの心線と大地間に\(\frac{E}{\sqrt3}\) [V] の交流電圧を送電端に加えたとき,心線に流れる充電電流は 45 A であった。二つの心線の受電端・送電端を接地しているので,この二つの心線間の Cm [F] と,二つそれぞれの Ce [F] は短絡されている状態である。このときの,残りの心線と大地間の対地静電容量は 2Cm+Ce [F] となる。したがって,
 \(\frac{\frac{E}{\sqrt3}}{\frac{1}{\omega (2C_m+C_e)}}=45\)
 ∴\(\frac{E\omega (2C_m+C_e)}{\sqrt3}=45\)
 ∴\(2C_m+C_e=\frac{45\sqrt3}{E\omega}\)
 ➀を代入して
 ∴\(2C_m=\frac{45\sqrt3}{E\omega}-\frac{90}{\sqrt3E\omega}\)
 ∴\(2C_m=\frac{3\times45-90}{\sqrt3E\omega}\)
 ∴\(C_m=\frac{22.5}{\sqrt3E\omega}\)…②

 ➀,②より
 \(\frac{C_e}{C_m}=\frac{90}{22.5}=4\)…③

(b) 1 線に流れる充電電流の値 [A]を求める。
 Δ回路に全て同じ平衡負荷抵抗RΔ[Ω]が接続されているとき、これをY回路に変換したときの1相の平衡負荷RY[Ω]は、
 \(\displaystyle R_Y=\frac{R_Δ}{3}\)[Ω]

 Δ回路に平衡インピーダンス\(\frac{1}{\omega C_m}\)[Ω]が接続されているとき、これをY回路に変換したときの1相の平衡インピーダンスは
 \(\frac{\frac{1}{\omega C_m}}{3}\)
 \(=\frac{1}{\omega 3C_m}\)[Ω]
 以上より,Δ接続されている静電容量 Cm [F] は,Y回路に変換すると1相分の静電容量は 3Cm [F] となる。

 線間静電容量 Cm [F] を,対地静電容量に置き換えると 3Cm [F]であるので,1相分の対地静電容量は
  \(C_e+3C_m\)[F]
定格三相電圧では,1 相にかかる電圧は\(\frac{E}{\sqrt3}\) [V]である。つまり,1 線に流れる電流は
 \(I=\frac{\frac{E}{\sqrt3}}{\frac{1}{\omega (C_e+3C_m)}}\)[A]
前問③より Ce=4Cm なので,
 \(I=\frac{7E\omega C_m}{\sqrt3}\)
②を代入して,
 \(I=\frac{7E\omega \frac{22.5}{\sqrt3E\omega}}{\sqrt3}\)
  \(=\frac{7 \times22.5}{3}=52.5\)[A]

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