// google adsence用 電験2種過去問【2020年機械 問2】 | 電気主任技術者のいろは

電験2種過去問【2020年機械 問2】

2022年8月2日

【パワーエレクトロニクス】降圧チョッパのスイッチング損失《空所問題》

 次の文章は、降圧チョッパに関する記述である。文中の\(\fbox{空所欄}\)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
 図1は降圧チョッパの回路図である。この回路は直流電圧源\(V_{dc}\)を入力とし、出力電流\(I_{dc}\)が半導体スイッチSとダイオードの間を転流する代表的な電力変換回路である。インダクタンスは十分に大きく、電流\(I_{dc}\)にリプル成分は無いものとする。また、ダイオードの順電圧降下は無視する。
 図1の半導体スイッチSを理想的であると仮定した場合の電流\(i_{s}\)と電圧\(v_{s}\)の波形を図2に示す。スイッチSは定数\(D(0≦D≦1)\)とスイッチング周期Tの積であるDTの期間に導通し、Dを
\(\fbox{(1)}\)と呼ぶ。ダイオード電圧\(v\)の平均値Vは V= \(\fbox{(2)}\)と表され、Dを変化させることによってダイオード電圧\(v\)の平均値を変えることができる。図2のどの時刻でも、理想的な半導体スイッチSの電流\(i_{s}\)と電圧\(v_{s}\)の一方は零であることから、スイッチング損失は発生しない。
 半導体スイッチSのターンオン期間とターンオフ期間を考慮するため、図3に示す電流\(i_{s}\)と電圧\(v_{s}\)のモデル波形を考えてみよう。ターンオフ期間とターンオン期間には、電流\(i_{s}\)と電圧\(v_{s}\)が共に
\(\fbox{(3)}\)期間が存在する。図3において、ターンオフ期間では\(v_{s}=V_{dc}\)となった後に電流\(i_{s}\)は減少し、ターンオン期間では\(i_{s}=I_{dc}\)となった後に電圧\(v_{s}\)は低下する。そのため、半導体スイッチSは損失を発生し、そのエネルギーは電流\(i_{s}\)と電圧\(v_{s}\)の積\(i_sv_{s}\)の面積によって求められる。電流\(i_{s}\)と電圧\(v_{s}\)の変化は直線的と仮定すると、1回のターンオフ期間の損失\(W_{off}\)[J]は\(W_{off}=\fbox{(4)}\)である。1回のターンオン期間の損失\(W_{on}\)[J]も同様に求められる。したがって、半導体スイッチSにおけるスイッチング損失\(P_{s}\)[W]は \(P_s=\fbox{(5)}\)である。

[問2の解答群]

\(\small{\begin{array}{ccc}
(イ)&負である&(ロ)&\displaystyle\left(\frac{1}{1-D}\right)V_{dc}&(ハ)&零である\\
(ニ)&\displaystyle\frac{W_{off}-W_{on}}{T}&(ホ)&\displaystyle\frac{W_{off}+W_{on}}{T}&(ヘ)&\displaystyle\frac{1}{6}V_{dc}I_{dc}T_2\\
(ト)&DV_{dc}&(チ)&\displaystyle\frac{1}{2}V_{dc}I_{dc}T_1&(リ)&\displaystyle\frac{1}{2}V_{dc}I_{dc}T_2\\
(ヌ)&\displaystyle\frac{1}{6}V_{dc}I_{dc}T_1&(ル)&W_{off}+W_{on}&(ヲ)&還流率\\
(ワ)&\displaystyle\left(\frac{D}{1-D}\right)V_{dc}&(カ)&通流率&(ヨ)&正である\\
\end{array}}\)

解答と解説はこちら

解答

\(\small{\begin{array}{cc}
\hline(1)&(カ)&通流率\\
\hline(2)&(ト)&DV_{dc}\\
\hline(3)&(ヨ)&正である\\
\hline(4)&(リ)&\displaystyle\frac{1}{2}V_{dc}I_{dc}T_2\\
\hline(5)&(ホ)&\displaystyle\frac{W_{off}+W_{on}}{T}\\
\hline\end{array}}\)

解説

 図1は降圧チョッパの回路図である。この回路は直流電圧源\(V_{dc}\)を入力とし、出力電流\(I_{dc}\)が半導体スイッチSとダイオードの間を転流する代表的な電力変換回路である。インダクタンスは十分に大きく、電流\(I_{dc}\)にリプル成分は無いものとする。また、ダイオードの順電圧降下は無視する。
 図1の半導体スイッチSを理想的であると仮定した場合の電流\(i_{s}\)と電圧\(v_{s}\)の波形を図2に示す。スイッチSは定数\(D(0≦D≦1)\)とスイッチング周期Tの積であるDTの期間に導通し、Dを
\(\fbox{(カ)通流率}\)と呼ぶ。ダイオード電圧\(v\)の平均値Vは V= \((ト)DV_{dc}\)と表され、Dを変化させることによってダイオード電圧\(v\)の平均値を変えることができる。図2のどの時刻でも、理想的な半導体スイッチSの電流\(i_{s}\)と電圧\(v_{s}\)の一方は零であることから、スイッチング損失は発生しない。
 半導体スイッチSのターンオン期間とターンオフ期間を考慮するため、図3に示す電流\(i_{s}\)と電圧\(v_{s}\)のモデル波形を考えてみよう。ターンオフ期間とターンオン期間には、電流\(i_{s}\)と電圧\(v_{s}\)が共に
\(\fbox{(ヨ)正である}\)期間が存在する。図3において、ターンオフ期間では\(v_{s}=V_{dc}\)となった後に電流\(i_{s}\)は減少し、ターンオン期間では\(i_{s}=I_{dc}\)となった後に電圧\(v_{s}\)は低下する。そのため、半導体スイッチSは損失を発生し、そのエネルギーは電流\(i_{s}\)と電圧\(v_{s}\)の積\(i_sv_{s}\)の面積によって求められる。電流\(i_{s}\)と電圧\(v_{s}\)の変化は直線的と仮定すると、1回のターンオフ期間の損失\(W_{off}\)[J]は\(W_{off}=(リ)\displaystyle\frac{1}{2}V_{dc}I_{dc}T_2\)である。1回のターンオン期間の損失\(W_{on}\)[J]も同様に求められる。したがって、半導体スイッチSにおけるスイッチング損失\(P_{s}\)[W]は \(P_s=(ホ)\displaystyle\frac{W_{off}+W_{on}}{T}\)である。