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電験1種過去問【2014年電力管理 問3】

2024年10月9日

【送電】対象座標法を用いた送電線の1線断線故障相電圧計算《計算問題》

 図1は1回線送電線を介して同期発電機、昇圧変圧器から三相平衡負荷へ送電している状況を示す。1線断線故障に関して、次の問に答えよ。ただし、送電線の作用静電容量は無視できるものとし、数値は全て 100 MV・A 基準の単位法で表現するものとする。

  1.  図1の送電線の送電端(昇圧変圧器高圧側母線 S)近傍で1線断線が発生した回路の対称分等価回路を導出するために、図2のように元の系統を断線事故発生地点で二分割する。1線断線故障が発生したとき、図2の\(\dot{I}_{1a},\dot{I}_{1b},\dot{I}_{1c},\dot{I}_{2a},\dot{I}_{2b},\dot{I}_{2c},\)\(\dot{V}_{1a},\dot{V}_{1b},\dot{V}_{1c},\dot{V}_{2a},\dot{V}_{2b},\dot{V}_{2c}\)の間に成立する関係式(1線断線条件)を示せ。ただし、断線事故が発生した相を a 相とすること。
  2.  上記 1. で得られた関係式を対象座標変換すると1線断線条件が得られる。これを表現する図3の対称分等価回路の各\(\fbox{$\phantom{四角空所}$}\)に入るべき数値をそれぞれ答えよ。ただし、同じ文字をもつ\(\fbox{$\phantom{四角空所}$}\)には同じ数値が入る。負荷を除く各回路要素のインピーダンスは全て [p.u.] で表現すること。
  3.  事故発生前の送電端(母線 S)電圧を 1.0 p.u. ここからの送電電力を 90 MW +j10 Mvar とする。以下の各問に答えよ。
    a. 事故発生前の発電機内部電圧(図1に示した発電機正相リアクタンス背後電圧)の大きさを計算せよ。
    b. 1線断線直後には発電機内部電圧(正相リアクタンス背後電圧)が変化しないものとして、事故発生直後の系統状態を図4で表現したときの電流\(\dot{I}_{p}\)を計算せよ。ただし、発電機内部電圧の位相を基準にすること。
    c. 1線断線直後の母線 S の事故相電圧の大きさを計算せよ。
解答と解説はこちら

解答

公式標準解答(※太字は補足)

1.  図1の送電線の送電端(昇圧変圧器高圧側母線 S)近傍で1線断線が発生した回路の対称分等価回路を導出するために、図2のように元の系統を断線事故発生地点で二分割する。1線断線故障が発生したとき、図2の\(\dot{I}_{1a},\dot{I}_{1b},\dot{I}_{1c},\dot{I}_{2a},\dot{I}_{2b},\dot{I}_{2c},\)\(\dot{V}_{1a},\dot{V}_{1b},\dot{V}_{1c},\dot{V}_{2a},\dot{V}_{2b},\dot{V}_{2c}\)の間に成立する関係式(1線断線条件)を示せ。ただし、断線事故が発生した相を a 相とすること。

 a 相は断線、それ以外は健全(接続)という条件なので、求める条件は以下のとおりである。

\(\left. \begin{array}{l} \dot{I}_{1a}=\dot{I}_{2a}=0\\ \dot{I}_{1b}=\dot{I}_{2b}\\ \dot{I}_{1c}=\dot{I}_{2c}\\ \dot{V}_{1b}=\dot{V}_{2b}\\ \dot{V}_{1c}=\dot{V}_{2c} \end{array} \right\}\)…(答)
2. 上記 1. で得られた関係式を対象座標変換すると1線断線条件が得られる。これを表現する図3の対称分等価回路の各\(\fbox{$\phantom{四角空所}$}\)に入るべき数値をそれぞれ答えよ。ただし、同じ文字をもつ\(\fbox{$\phantom{四角空所}$}\)には同じ数値が入る。負荷を除く各回路要素のインピーダンスは全て [p.u.] で表現すること。

 1線断線の対称分等価回路を書けば次のようになる。(負荷インピーダンスと電源電圧の値は 3. で与えられるので、ここでは記入しなくてよい。)

したがって、

\(\left. \begin{array}{l} a=j1.2p.u.,b=j0.2p.u.,\\ c=j0.1p.u.,d=j0.2p.u,\\ e=j0.1p.u.,f=j0.25p.u.,\\ g=j0.2p.u. \end{array} \right\}\)…(答)
3. 事故発生前の送電端(母線 S)電圧を 1.0 p.u. ここからの送電電力を 90 MW +j10 Mvar とする。以下の各問に答えよ。
a. 事故発生前の発電機内部電圧(図1に示した発電機正相リアクタンス背後電圧)の大きさを計算せよ。
b. 1線断線直後には発電機内部電圧(正相リアクタンス背後電圧)が変化しないものとして、事故発生直後の系統状態を図4で表現したときの電流\(\dot{I}_{p}\)を計算せよ。ただし、発電機内部電圧の位相を基準にすること。
c. 1線断線直後の母線 S の事故相電圧の大きさを計算せよ。

a. 題意より送電端(電圧\(\dot{V}_1\))から負荷側を見た等価インピーダンス\(\dot{Z}_1\)は、
 \(\dot{Z_1}=\frac{\dot{V_1}}{\dot{I}}=\frac{1}{0.9-j0.1}\)=1.0976+j0.12195 p.u.
である。したがって負荷の等価インピーダンスは、ここから送電線と受電側変圧器の直列インピーダンス j0.3 p.u. を除いた 1.0976-j0.17805 p.u. に等しい。事故前の線路電流\(\dot{I}\)による電源側リアクタンス j1.4 p.u. に生じる電圧降下分を考慮すると、発電機内部電圧の大きさは、

\(|\dot{V_1}+j1.4\dot{I}|=\left|\dot{V_1}+j1.4\left(\frac{\dot{V_1}}{\dot{Z_1}}\right)\right|\\ =|\dot{V_1}|\left|1+\frac{j1.4}{\dot{Z_1}}\right|\\ =|1.0×[1.0+j1.4(0.9-j0.1)]| \)

と得られる。この大きさは、
 \(\sqrt{(1.14^2+1.26^2)}\) ≒ 1.70 → 1.70 p.u. …(答)

b. 以上をもとに前問で求めた等価回路を、発電機内部電圧を位相の基準とし、インピーダンスをまとめた形で書き直すと次のようになる。
(ただし、\(\dot{Z_L}\)=1.0976+j0.17805 p.u.

 上図の\(\dot{I}_p\)を計算すると、

\( \dot{I}_p=\frac{1.7}{j1.7+1.0976-j0.17805+\frac{(1.0976+j0.52195)j0.65}{(1.0976+j0.52195)+j0.65}} \)

 ≒ 0.3912 – j0.6062 p.u. …(答)

c. また、

 \(-\dot{I_n}=\frac{j0.65}{\dot{Z_L}+j1.35}\) = 0.283 335 – j0.070 882 416 p.u.
 \(-\dot{I_z}=-\dot{I_p}-(-\dot{I_n})\) = 0.107 865 – j0.535 317 584 p.u.
である。
 以上より、変圧器高圧側母線電圧の対称分電圧は、
正相分が 1.7 – j1.4(0.391 2 -j0.606 2) = 0.851 32 – j0.547 68 p.u.
正相分が j0.4 × (-\(\dot{I_n}\)) = 0.028 352 966 – j0.113 334 p.u.
また、零相分が j0.2 × (-\(\dot{I_z}\)) = 0.107 063 516 + j0.021 573 p.u.
 したがって、求める電圧は、これらの和をとって、
 (0.851 32 -j0.547 68)+(0.028 353 +j0.113 33)+(0.107 06 +j0.021 573)
 = 0.986 733 – j0.412 777 p.u.
である。
 求める電圧の大きさは、

 |0.986 733 – j0.412 777| ≒ 1.070p.u. → 1.07 p.u. …(答)

解説

 対称座標法を用いての1線断線故障計算に関する問題です。対象座標法を用いた1線断線故障の条件付けのみ求めれられ等価回路も題中で与えられています。対象座標法を理解できていれば及第点を狙える問題です。一種受験者は対称座標法の解法を理解しておいたほうがよいです。問3のb以降は計算が非常に煩雑です。

難易度4(★★★★☆)


追加学習は対称座標法による故障計算送電の学習帳

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