電気材料の学習帳【クイズあり】
材料に関する過去問題
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絶縁材料
絶縁材料には大きく分けて、気体絶縁材料、固体絶縁材料、液体絶縁材料がある。
気体絶縁材料
気体絶縁材料は、液体、固体絶縁材料と比較して、一般に絶縁破壊強度が低いが、気圧を高めるか、真空状態とすることで絶縁破壊強度を高めることができる性質がある。
気体絶縁材料は、液体、固体絶縁材料と比較して、一般に電気抵抗率及び誘電率が低い。
気体絶縁材料は液体絶縁材料と比べて、圧力により絶縁耐力が大きく変化する。
気体絶縁材料としてよく使用される、六ふっ化硫黄(SF6)ガスは、空気と比べて絶縁耐力が高いが、一方で地球温暖化に及ぼす影響が大きいという問題点がある。SF₆ガスは、以下のような特徴がある。
- 大気中に排出されても、オゾン層破壊への影響がない代替フロンとして開発されたものである。
- 地球温暖化に及ぼす影響は、同じ質量の二酸化炭素と比較してはるかに大きい。
- 無色、無臭で、反応性が非常に小さく化学的に安定で不活性、不燃性のガスである。
- 圧力を高めることで絶縁破壊強度を高めることができ、同じ圧力の空気と比較して絶縁破壊強度や消弧能力が高い。
- 液体、固体の絶縁媒体と比較して誘電率及び誘電正接が小さいため、誘電損が小さい。
- 遮断器による電流遮断の際に、電極間で発生するアーク放電の消弧能力に優れ、ガス遮断器の消弧媒体として使用されている。
- ガス絶縁開閉装置やガス絶縁変圧器、ガス遮断器の絶縁媒体として使用され、変電所の小型化の実現に貢献している。
電験3種過去問【2014年電力 問14】(六ふっ化硫黄ガス)
電験3種過去問【2022年(前期)電力 問14】(SF₆ガスに関する記述)
固体絶縁材料
一般に固体絶縁材料には、液体や気体の絶縁材料と比較して、絶縁耐力が高いものが多い。
固体絶縁材料内部にボイド(空隙、空洞)が含まれると、ボイド部でのトリーによる絶縁破壊が生じる。
固体絶縁物内部の微小空げきで高電圧印加時のボイド放電が発生すると、劣化の原因となる。
水分は、CVケーブルの水トリー劣化の主原因である。
CVケーブルの絶縁体内に水分が多く含まれている状態で電圧が印加されると、突起周辺など電界集中部に水分が集まり凝縮し、樹枝状の劣化が進むが、この劣化痕を水トリーと呼ぶ。
多くの絶縁材料は湿度が高いほど、絶縁強度の低下や誘電損の増加が生じる。
絶縁材料中の水分が多いほど、絶縁強度は低くなる傾向がある。
内部にボイドを含んだ固体絶縁材料では、固体絶縁材料の絶縁破壊が生じなくても、ボイド内の気体が絶縁破壊することで部分放電が発生する場合がある。
固体絶縁材料は、熱や電界、機械的応力などが長時間加えられることによって、固体絶縁材料内部に微小なボイドが形成されて、部分放電が発生する場合がある。
固体絶縁材料内部で部分放電が発生すると、短時間に固体絶縁材料の絶縁破壊が生じることはなくても、長時間にわたって部分放電が継続的又は断続的に発生することで、固体絶縁材料の絶縁破壊に至る場合がある。
膨張、収縮による機械的な繰り返しひずみの発生が、劣化の原因となる場合がある。
直射日光により、絶縁物の劣化が生じる場合がある。
電界や熱が長時間加わることで、絶縁強度は低下する傾向がある。
固体絶縁材料は、温度変化による膨張や収縮による機械的ひずみが原因で劣化することがある。
絶縁材料における絶縁劣化では、熱的要因、電気的要因、機械的要因のほかに、化学薬品、放射線、水分などが要因となり得る。
硫黄などの化学物質は、固体絶縁材料の変質を引き起こす。
部分放電劣化は、絶縁体外表面や絶縁体内部に発生する。
部分放電は、絶縁物劣化の一要因である。
がいしに使用される絶縁材料には、一般に、磁気、ガラス、ポリマの3種類がある。我が国では磁器がいしが主流であるが、最近では、軽量性や耐衝撃性などの観点から、ポリマがいしの利用が進んでいる。
酸化亜鉛(ZnO)
絶縁油(液体絶縁材料)
絶縁油は変圧器やOFケーブルなどに使用されており、一般に絶縁破壊電圧は大気圧の空気と比べて高く(同じ圧力の空気と比べて高く)、誘電正接は空気よりも大きい。誘電正接が小さい絶縁油を用いることで絶縁油中の発熱を抑えることができる。
絶縁油の誘電正接は、変圧器、電力ケーブル、コンデンサに使用する場合はいずれも小さいものが適している。
絶縁油には、一般に熱膨張率、粘度が小さく、比熱、熱伝導率が大きいものが適している。
電力用設備の絶縁油には、一般に古くから鉱油系絶縁油が使用されているが、難燃性や低損失性・信頼性など、より優れた特性が要求される場合には合成絶縁油が採用されている。OFケーブルやコンデンサでより優れた低損失性や信頼性が求められる仕様のときには重合炭化水素油が採用される場合もある。また、環境への配慮から植物性絶縁油の採用も進められている。
絶縁油は、電力用設備内を絶縁する役割のほかに、絶縁油の流動性を利用して電力用設備内で生じた熱を対流などによって外部放散することで、放散冷却する役割がある。
絶縁油では、温度や不純物または水分などが含まれることにより絶縁性能が大きく影響を受け、部分放電の発生によって分解ガスが生じる場合がある。このため、電力用設備から採油した絶縁油の水分量測定やガス分析等を行うことにより、絶縁油の劣化状態や電力用設備の異常を検知することができる。
法規からの出題
- 自家用需要家が絶縁油の保守、点検のために行う試験には、\(\fbox{(ア)絶縁耐力}\)試験及び酸価度試験が一般に実施されている。
- 絶縁油、特に変圧器油は、使用中に次第に劣化して酸価が上がり、\(\fbox{(イ)抵抗率}\)や耐圧が下がるなどの諸性能が低下し、ついには泥状のスラッジができるようになる。
- 変圧器油劣化の主原因は、油と接触する\(\fbox{(ウ)空気}\)が油中に溶け込み、その中の酸素による酸化であって、この酸化反応は変圧器の運転による\(\fbox{(エ)温度}\)の上昇によって特に促進される。そのほか、金属、絶縁ワニス、光線なども酸化を促進し、劣化生成物のうちにも反応を促進するものが数多くある。
導電材料(銅)
電線の導電材料の銅は、電気銅を精製したものが用いられる。
CVケーブルの電線の銅導体には、軟銅が一般に用いられる。
軟銅は、硬銅を300~600[℃]で焼きなますことにより得られる。
20[℃]において、最も抵抗率の低い金属は、銀である。安価な銅は銀に続いて低く一般に用いられる。
直流発電機の整流子片には、硬銅が一般に用いられる。
送電線路の導体
CVケーブルの絶縁体に使用される架橋ポリエチレンは、ポリエチレンの優れた絶縁特性に加えて、ポリエチレンの分子構造を架橋反応により立体網目状分子構造とすることによって、耐熱変形性を大幅に改善した絶縁材料である。
導体の材料特性として、一般に導電率は高く引張強さが大きいこと、質量及び線熱膨張率が小さいこと、加工性及び耐食性に優れていることなどが求められる
導体には、一般に銅やアルミニウム又はそれらの合金が用いられ、それらの導体の導電率は、温度や不純物成分、加工条件、熱処理条件などによって異なる。導体の導電率は、温度が高くなるほど小さくなる傾向があり、20℃での標準軟銅の導電率を100%として比較した百分率で表される。
導体の導電率は、不純物成分が少ないほど大きくなる。また、単金属と比較して、同じ金属元素を主成分とする合金の方が、一般に導電率は小さくなるが、引張強さは大きくなる。
地中ケーブルの銅導体には、一般に軟銅が用いられ、硬銅と比べて引張強さは小さいが、伸びや可とう性に優れ、導電率が高い。架空送電線の銅導体には引張強さや耐食性の優れる硬銅より線が用いられている。
鋼心アルミより線は、中心に亜鉛めっき鋼より線を配置し、その周囲に硬アルミより線を配置した構造を有する電線である。この構造は、必要な導体の電気抵抗に対して、アルミ導体を使用する方が、銅導体を使用するよりも断面積が大きくなるものの軽量にできる利点と、必要な引張強さを鋼心で補強して得ることができる利点を活用している。アルミの軽量かつ高い導電性と、鋼の強い引張強さとをもつ代表的な架空送電線である。
純アルミニウムは、純銅と比較して導電率が2/3程度、比重が1/3程度であるため、電気抵抗と長さが同じ電線の場合、アルミニウム線の質量は銅線のおよそ半分である。
変圧器の鉄心材料
鉄心材料は、同じ体積であれば両面を絶縁加工した薄い材料を積層することで、ヒステリシス損はほとんど変わらないが、渦電流損を低減させることができる。
鉄心材料は、保磁力が小さく、飽和磁束密度は大きく、ヒステリシス損が小さい材料が選ばれる。
鉄心材料のヒステリシス損は、ヒステリシス曲線が囲む面積と交番磁界の周波数に比例する。
厚さの薄い鉄心材料を積層した積層鉄心は、積層した鉄心材料間で電流が流れないように鉄心材料の表面に絶縁被膜が施されており、鉄心材料の積層方向(厚さ方向)と磁束方向とが垂直方向となるときに顕著な渦電流損の低減効果が得られる。
鉄は、炭素の含有量を低減させることにより飽和磁束密度及び透磁率が増加し、保磁力が減少する傾向にあるが、純鉄や低炭素鋼は電気抵抗が小さいため、一般に交流用途の鉄心材料には適さない。
けい素鋼板
鉄心材料に使用されるけい素鋼材は、鉄にけい素を含有させて透磁率と抵抗率とを高めた材料である。
鉄は、けい素含有量の増加に伴って飽和磁束密度及び保磁力が減少し、透磁率及び電気抵抗が増加する傾向がある。そのため、けい素鋼板は交流用途の鉄心材料に広く使用されているが、けい素含有量の増加に伴って加工性や機械的強度が低下するという性質もある。
アモルファス磁性材料
鉄心材料に使用されるアモルファス合金材は、けい素鋼材と比較して
- 透磁率と抵抗率はともに高く、鉄損が少ない
- 非結晶構造であり、高硬度である
- 加工性に優れず、高価である。
鉄心材料に用いられるアモルファス磁性材料は、原子配列に規則性がない非結晶構造を有し、結晶構造を有するけい素鋼材と比較して鉄損が少ない。薄帯形状であることから巻鉄心形の鉄心に適しており、柱上変圧器などに使用されている。
アモルファス鉄心材料を使用した柱上変圧器は、けい素鋼帯を使用した同容量の変圧器に比べて、
- 鉄損が大幅に少ない
- 磁束密度が高くできないので、大形になる
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