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電験2種過去問【2019年理論 問3】

2024年6月10日

【電気回路】直流回路のコンデンサ電圧の過渡現象《空所問題》

 次の文章は、電気回路の過渡現象に関する記述である。文中の\fbox{空所欄}に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
 図の回路は、時刻t<0においてスイッチSは開いており、回路は定常状態にある。この回路のスイッチSを時刻t=0で閉じるものとする。
 スイッチSを閉じた後、十分に時間が経過して回路が定常状態になったときのキャパシタCの電圧は、
\fbox{(1)}である。したがって、時刻t=0でスイッチSを閉じた後の過渡状態においては、回路の時定数をT_1とすれば、キャパシタCの電圧は、

 v_C(t)=\fbox{(1)}+\fbox{(2)} e^{-t/T_1},(t≧0)

となる。ここで回路の時定数は、T_1=\fbox{(3)}である。
 スイッチSを閉じた後、十分に時間が経過して回路が定常状態になった時刻t=t_0で、再びスイッチSを開いた。スイッチSを再び開いた後の過渡状態においては、回路の時定数をT_2とすれば、キャパシタCの電圧は、
 v_C(t)=\fbox{(1)}+\fbox{(2)}(\fbox{(4)}) ,(t≧t_0)
となる。ここで回路の時定数は、T_2=\fbox{(5)}である。

[問3の解答群]

\small{\begin{array}{ccc} (イ)&V&(ロ)&\displaystyle\frac{r}{R+r}V&(ハ)&1-e^{-(t-t_0)/T_2}\\ (ニ)&\displaystyle\frac{R}{R+r}V&(ホ)&0&(ヘ)&\displaystyle\frac{R+r}{r}V\\ (ト)&\displaystyle\frac{CRr}{R+r}&(チ)&C(R+r)&(リ)&1+e^{-(t-t_0)/T_2}\\ (ヌ)&\displaystyle\frac{C}{r}&(ル)&\displaystyle\frac{r}{C}&(ヲ)&-1+e^{-(t-t_0)/T_2}\\ (ワ)&\displaystyle -\frac{R}{R+r}V&(カ)&Cr&(ヨ)&\displaystyle\frac{R+r}{CRr}\\ \end{array}}

解答と解説はこちら

解答

\small{\begin{array}{cc} \hline(1)&(ニ)&\displaystyle\frac{R}{R+r}V\\ \hline(2)&(ロ)&\displaystyle\frac{r}{R+r}V\\ \hline(3)&(ト)&\displaystyle\frac{CRr}{R+r}\\ \hline(4)&(ハ)&1-e^{-(t-t_0)/T_2}\\ \hline(5)&(カ)&Cr\\ \hline\end{array}}

解説

 図の回路は、時刻t<0においてスイッチSは開いており、回路は定常状態にある。この回路のスイッチSを時刻t=0で閉じるものとする。
 スイッチSを閉じた後、十分に時間が経過して回路が定常状態になったときのキャパシタCに電流は流れないので、その電圧は抵抗Rにかかる電圧と等しくなり、\displaystyle(ニ)\frac{R}{R+r}Vである。

スイッチSを閉じた後の回路方程式は、rに流れる電流をi_r、Cに蓄えられる電荷をq、Rに流れる電流をi_Rとすると、

Cに流れる電流\displaystyle i_C=\frac{dq}{dt}、Cの電圧\displaystyle v_C=\frac{q}{C}なので、

\displaystyle i_r=\frac{dq}{dt}+i_R …①
\displaystyle V=i_rr+\frac{q}{C} …②
\displaystyle \frac{q}{C}=i_RR …③

①、②より
\displaystyle V=r(\frac{dq}{dt}+i_R)+\frac{q}{C} …④
③、④より
\displaystyle V=r(\frac{dq}{dt}+\frac{q}{CR})+\frac{q}{C}
\displaystyle V=r\frac{dq}{dt}+\frac{r}{CR}q+\frac{1}{C}q
\displaystyle V=r\frac{dq}{dt}+\frac{R+r}{CR}q

一階線形微分方程式\displaystyle \frac{dy}{dx}+py=kの一般解は\displaystyle y=Ae^{-px}+\frac{k}{p}で与えられるので(Aは任意定数)、上式を展開し一般解を求めると

\displaystyle \frac{dq}{dt}+\frac{R+r}{CRr}q=\frac{V}{r}

\displaystyle q=Ae^{-\frac{R+r}{CRr}t}+\frac{\frac{V}{r}}{\frac{R+r}{CRr}}
\displaystyle =Ae^{-\frac{R+r}{CRr}t}+\frac{CR}{R+r}V

キャパシタCの電圧は

\displaystyle v_C(t)=\frac{q}{C}
\displaystyle =\frac{A}{C}e^{-\frac{R+r}{CRr}t}+\frac{R}{R+r}V

t=0のとき、キャパシタCには全電源電圧がかかるので、\displaystyle v_C(0)=Vである。任意定数Aを求めると、

\displaystyle v_C(0)=\frac{A}{C}e^{-\frac{R+r}{CRr}\times0}+\frac{R}{R+r}V
\displaystyle =\frac{A}{C}+\frac{R}{R+r}V=V

\displaystyle \frac{A}{C}=\frac{r}{R+r}V
\displaystyle \frac{A}{C}=\frac{r}{R+r}V
\displaystyle A=\frac{Cr}{R+r}V

したがって、時刻t=0でスイッチSを閉じた後の過渡状態においては、回路の時定数をT_1とすれば、キャパシタCの電圧は、

 \displaystyle v_C(t)=(ニ)\frac{R}{R+r}V+(ロ)\frac{r}{R+r}Ve^{-t/T_1},(t≧0)

となる。ここで回路の時定数は定義より、T_1=(ト)\displaystyle\frac{CRr}{R+r}である。

 スイッチSを閉じた後、十分に時間が経過して回路が定常状態になった時刻t=t_0で、再びスイッチSを開いた。スイッチSを再び開いた後の過渡状態においては、回路に流れる電流をi、Cに蓄えられる電荷をqとすると、

\displaystyle ri+\frac{q}{C}=r\frac{dq}{dt}+\frac{q}{C}=V
\displaystyle \frac{dq}{dt}+\frac{1}{Cr}q=\frac{V}{r}

一般解を求めると、

\displaystyle q=Ae^{-\frac{t}{Cr}}+\frac{\frac{V}{r}}{\frac{1}{Cr}}
\displaystyle =Ae^{-\frac{t}{Cr}}+CV

上式の初期条件はt=0で\displaystyle v_C(t)=\frac{q}{C}=\frac{R}{R+r}Vであるので、

\displaystyle \frac{A}{C}e^{-\frac{0}{Cr}}+V=\frac{R}{R+r}V
\displaystyle \frac{A}{C}+V=\frac{R}{R+r}V
\displaystyle \frac{A}{C}=-\frac{r}{R+r}V

したがって

\displaystyle v_C(t)=\frac{q}{C}=-\frac{r}{R+r}Ve^{-\frac{t}{Cr}}+V
\displaystyle =\frac{R+r}{R+r}V-\frac{r}{R+r}Ve^{-\frac{t}{Cr}}
\displaystyle =\frac{R}{R+r}V+\frac{r}{R+r}V-\frac{r}{R+r}Ve^{-\frac{t}{Cr}}
\displaystyle =\frac{R}{R+r}V+\frac{r}{R+r}V(1-e^{-\frac{t}{Cr}})

回路の時定数をT_2とすれば、キャパシタCの電圧は、
 \displaystyle v_C(t)=(ニ)\frac{R}{R+r}V+(ロ)\frac{r}{R+r}((ハ)1-e^{-(t-t_0)/T_2}) ,(t≧t_0)
となる。ここで回路の時定数は、T_2=(カ)Crである。

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