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電験2種過去問【2020年機械 問5】

2022年8月2日

【変圧器】変圧器の一次巻線に流れる電流と誘導起電力《空所問題》

 次の文章は、変圧器における誘導起電力と磁束に関する記述である。文中の\(\fbox{空所欄}\)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
 一次及び二次巻線を施した環状鉄心において、一次巻線の巻数を\(N_1\)とする。二次巻線を開放したまま、一次巻線に供給電圧として角周波数\(\omega,実効値V_1\)の交流電圧\(v_1(t)=\sqrt{2}V_1\sin\omega t\)を加えると、この巻線に流れる\(\fbox{(1)}\)電流\(i_0\)は、巻線の抵抗及び鉄損を無視すれば、次式で表される。
 \(\displaystyle i_0(t)=\frac{\sqrt{2}V_1}{Z}\sin\left(\omega t-\frac{\pi}{2}\right)\) …①
 ここで、Zは一次巻線のインピーダンスである。
磁気回路の長さをl、断面積をA、透磁率をμ(一定)と仮定すれば、この電流\(i_0\)によって鉄心中に生じる交番磁界φは
\(\fbox{(2)}\)を磁気抵抗で除すことで求められ、
 \(\displaystyle \phi(t)=\frac{N_1\mu A}{l}i_0(t)\) …②
①及び②式から、
 \(\displaystyle \phi(t)=\Phi_m\sin\left(\omega t-\frac{\pi}{2}\right)\) …③
ここで、\(\Phi_mは\phi(t)\)の最大値であり、
\(\Phi_m=\fbox{(3)}\)である。
 その結果、一次巻線に誘導起電力\(e_1\)が発生するが、\(e_1は\phi\)の変化を妨げる方向に誘導されたとすると、次の関係式が成り立つ。
 \(\displaystyle v_1(t)=-e_1(t)=N_1\frac{d\phi(t)}{dt}\) …④
 ③及び④式から、\(e_1(t)\)は次式となる。
 \(e_1(t)=\sqrt2E_1\sin\omega t\)
ただし、\(E_1はe_1(t)\)の実効値であり、周波数をfとすると次式となる。
 \(E_1=\fbox{(4)}fN_1\Phi_m\)
 実際の電力用変圧器においては、鉄心の\(\fbox{(5)}\)特性とヒステリシス特性が含まれるため、鉄心の磁気特性は非直線性になり、巻線に正弦波電圧を加えたとしても電流\(i_0\)は高調波成分を含んだひずみ波となる。

[問5の解答群]

\(\small{\begin{array}{ccc}
(イ)&起磁力&(ロ)&\displaystyle\frac{\sqrt2}{\pi}&(ハ)&\displaystyle\frac{\sqrt2N_1}{\omega V_1}\\
(ニ)&磁区&(ホ)&\displaystyle\frac{\sqrt2V_1}{\omega N_1}&(ヘ)&磁化力\\
(ト)&\displaystyle\frac{\omega N_1}{\sqrt2V_1}&(チ)&誘導&(リ)&励磁\\
(ヌ)&渦電流&(ル)&飽和&(ヲ)&\sqrt2\pi\\
(ワ)&2\pi&(カ)&負荷&(ヨ)&鎖交磁束\\
\end{array}}\)

解答と解説はこちら

解答

\(\small{\begin{array}{cc}
\hline(1)&(リ)&励磁\\
\hline(2)&(イ)&起磁力\\
\hline(3)&(ホ)&\displaystyle\frac{\sqrt2V_1}{\omega N_1}\\
\hline(4)&(ヲ)&\sqrt2\pi\\
\hline(5)&(ル)&飽和\\
\hline\end{array}}\)

解説

 一次及び二次巻線を施した環状鉄心において、一次巻線の巻数を\(N_1\)とする。二次巻線を開放したまま、一次巻線に供給電圧として角周波数\(\omega,実効値V_1\)の交流電圧\(v_1(t)=\sqrt{2}V_1\sin\omega t\)を加えると、この巻線に流れる\(\fbox{(リ)励磁}\)電流\(i_0\)は、巻線の抵抗及び鉄損を無視すれば、位相が90°遅れるため、次式で表される。
 \(\displaystyle i_0(t)=\frac{\sqrt{2}V_1}{Z}\sin\left(\omega t-\frac{\pi}{2}\right)\) …①
 ここで、Zは一次巻線のインピーダンスである。
磁気回路の長さをl、断面積をA、透磁率をμ(一定)と仮定すれば、この電流\(i_0\)によって鉄心中に生じる交番磁界φは
\(\fbox{(イ)起磁力}\)を磁気抵抗で除すことで求められ、
 \(\displaystyle \phi(t)=\frac{N_1\mu A}{l}i_0(t)\) …②
①及び②式から、

 \(\displaystyle \phi(t)=\frac{N_1\mu A}{l}\frac{\sqrt{2}V_1}{Z}\sin\left(\omega t-\frac{\pi}{2}\right)\)

 \(\displaystyle \phi(t)=\Phi_m\sin\left(\omega t-\frac{\pi}{2}\right)\) …③
ここで、\(\Phi_mは\phi(t)\)の最大値であり、

 \(\displaystyle\Phi_m=\frac{N_1\mu A}{l}\frac{\sqrt{2}V_1}{Z}\)

\(\displaystyle Z=\omega L,L=\frac{\mu AN_1^2}{l}\)であるので、

 \(\displaystyle\Phi_m=\frac{N_1\mu A}{l}\frac{\sqrt{2}V_1}{\omega\frac{\mu AN_1^2}{l}}\)

 \(\displaystyle\Phi_m=(ホ)\frac{\sqrt{2}V_1}{\omega N_1}\)

 その結果、一次巻線に誘導起電力\(e_1\)が発生するが、\(e_1は\phi\)の変化を妨げる方向に誘導されたとすると、次の関係式が成り立つ。
 \(\displaystyle v_1(t)=-e_1(t)=N_1\frac{d\phi(t)}{dt}\) …④
 ③及び④式から、\(e_1(t)\)は次式となる。

\(\displaystyle e_1(t)=-N_1\frac{d\phi(t)}{dt}\)

\(\displaystyle =-N_1\Phi_m\frac{d\sin\left(\omega t-\frac{\pi}{2}\right)}{dt}\)

\(\displaystyle =-N_1\Phi_m\frac{d\cos(\omega t)}{dt}\) …※1

\(\displaystyle =N_1\Phi_m\omega\sin(\omega t)\)

※1:加法定理を用いるか、\(\sin(\theta-90°)=cos\theta\)は覚えておく

 \(e_1(t)=\sqrt2E_1\sin\omega t\)
ただし、\(E_1はe_1(t)\)の実効値であり、周波数をfとすると次式となる。

 \(\displaystyle E_1=\frac{N_1\Phi_m\omega}{\sqrt2}\)

 \(\displaystyle =\frac{2\pi}{\sqrt2}fN_1\Phi_m\)

 \(\displaystyle =(ヲ)\sqrt2\pi fN_1\Phi_m\)

 実際の電力用変圧器においては、鉄心の\(\fbox{(ル)飽和}\)特性とヒステリシス特性が含まれるため、鉄心の磁気特性は非直線性になり、巻線に正弦波電圧を加えたとしても電流\(i_0\)は高調波成分を含んだひずみ波となる。