CVケーブルについて
CVケーブルは、送配電線の構成部品のひとつ。その他の構成部品については配電の学習帳にあります。
CVケーブルとは
CVケーブルは、ポリエチレンを絶縁体としたケーブルにおいて大きな欠点であった耐熱性を改善した架橋ポリエチレンを絶縁体としたケーブルである。乾式架橋方式は、絶縁性能も良く、OFケーブルと比較して tanδ (誘電正接) や比誘電率が小さいため誘電体損失や充電電流が小さくなる。また、三心一括のCVケーブルと比較して、曲げ特性の改善のため、22~77kV で導体断面積 400 mm² までのケーブルは、3条をより合わせてトリプレックス形としている。
CVケーブルの特徴的な現象として、絶縁体の架橋ポリエチレンに水トリーという絶縁劣化現象が生じることがある。水トリーは絶縁体中のボイドとそこに供給される水の相乗効果により、トリー(樹枝)状に絶縁劣化が進展する現象である。
ケーブルの静電容量

Δ回路に全て同じ平衡負荷抵抗RΔ[Ω]が接続されているとき、これをY回路に変換したときの1相の平衡負荷RY[Ω]は、
\(\displaystyle R_Y=\frac{R_Δ}{3}\)[Ω]
Δ回路に平衡インピーダンス\(\frac{1}{\omega C_m}\)[Ω]が接続されているとき、これをY回路に変換したときの1相の平衡インピーダンスは
\(\frac{\frac{1}{\omega C_m}}{3}\)
\(=\frac{1}{\omega 3C_m}\)[Ω]
以上より,Δ接続されている静電容量 Cm [F] は,Y回路に変換すると1相分の静電容量は 3Cm [F] となる。
線間静電容量 Cm [F] を,対地静電容量に置き換えると 3Cm [F]であるので,1相分の対地静電容量は
\(C_e+3C_m\)[F]
ケーブルの誘電体損
交流電圧を印加した電力ケーブルでは、静電容量により、電圧に対して90°進みの電流 IC が流れるが、電圧に対して同位相の電流成分がケーブル絶縁体に流れることにより誘電体損が発生する。
ケーブルの誘電体損 Wd [W] は,静電容量 C [F],周波数 f [Hz],角周波数 ω [rad/s],誘電正接 tanδ ,ケーブルにかかる電圧 V [V] とすると,
ケーブル損失については地中送配電線路についても参照
CVケーブルの絶縁劣化診断法
水トリーの発生要因、特徴
CVケーブルの絶縁体内に水分が多く含まれている状態で電圧が印加されると、突起周辺など電界集中部に水分が集まり凝縮し、樹枝状の劣化が進むが、この劣化痕を水トリーと呼ぶ。水トリー内部は、健全部分に比べて導電率はけた違いに高く電界は低くなるので、水トリーが発生しても、電気トリーとは異なり部分放電は観測されない。このため、水トリーの発生は検知しにくいうえに、水トリー先端の電界が高い部分より電気トリーが発生すると短時間で絶縁体の全路破壊に結びつくことが多い。
CVケーブルの水トリー劣化診断技術
損失電流法
水トリー劣化ケーブルの充電電流の中に、課電電圧と同位相の損失電流成分が含まれることから、この損失分を測定し劣化の状況を把握する手法である。劣化したケーブルの測定波形は高調波歪みが観測される。主に第三高調波電流を劣化信号として用いる。
残留電荷法
最初に直流課電によって水トリー部に電荷を蓄積させ、次に交流課電で蓄積した電荷を放電させる、直流課電と交流課電を組み合わせた手法である。検出された電荷の量は、水トリーの数や長さによって変化するため水トリーの発生状況を検知することができる。
耐電圧法
水トリー劣化ケーブルのスクリーニングを目的とし、常規電圧よりも高い電圧をケーブル線路に課電する。スクリーニングする劣化レベルに応じて試験電圧や、効果的な試験電圧種類(商用周波数、超低周波、可変周波)を選定する。
直流漏れ電流測定
ケーブルの導体ーシース間に一定の直流電圧を印加し、漏れ電流の大きさ・変化・三相不平衡などを時間で整理し、その形状や値から絶縁状態を調査する。
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