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中性点接地方式

2025年6月3日

 送配電線路の中性点接地方式について。送電線路については送電の学習帳を参照してください。非接地方式が適用される配電線路については配電の学習帳を参照。

中性点接地方式

 電線の1線地絡時、健全相に現れる過電圧の大きさは、地絡場所や系統の中性点接地方式に依存する。直接接地方式の場合、非接地方式と比較すると健全相の電圧上昇倍率が低く、地絡電流は大きくなる。

 電力系統に1線地絡故障のような不平衡故障が起こると変圧器や回転機の三相巻線のY結線の中性点接地を経由して大地を帰路とする地絡電流が流れる。中性点と大地との接地インピーダンスを小さくすると、地絡電流を検出する保護リレーの動作が確実となり、健全相の電位上昇を抑えることができて、機器の絶縁レベルを軽減できる。その反面、近辺での通信線路に発生する電磁誘導電圧が大きくなる。

 一方で、接地インピーダンスを大きくすると、1線地絡故障の場合には、健全相の対地電圧は相電圧の\( \displaystyle \sqrt3\)倍まで上昇するとともに、長距離線路では対地静電容量が大きいために間欠アーク地絡が発生して機器の絶縁を脅かす過渡的異常電圧が生じることがある。

  1. 中性点接地の主たる目的は以下
    ➀地絡事故が発生したときに健全相の電圧上昇を抑制する。
    ➁地絡事故が発生したときに保護リレーを確実に動作させる。
    ➂地絡事故時の事故電流を抑制して電磁誘導障害を軽減する。
    ➃鉄共振・アーク間欠地絡などの不安定現象を抑制する。

非接地方式

 非接地三相3線式高圧配電方式は回路の中性点を接地しない方式である。

 非接地方式は33kV以下の高圧配電系統に適用される。(※配電系統についての解説は配電の学習帳にあります。)1線地絡時、健全相に高い電圧が現れるため、高電圧(33kV超え)、長距離送電には不向きです。

 6.6kV高圧配電線路や33kV以下の高圧配電系統では、60kV以上の送電線路や送電用変圧器に比べ、電線路や変圧器の絶縁が容易であるため、故障時に健全相の電圧上昇が大きくなっても特に問題にならない。また、通信設備等への電磁誘導障害を低減させるため、1線地絡電流をが小さい非接地方式が採用されている。

特徴

  • 地絡事故時の事故電流が小さく、他の通信線などへの誘導障害はほとんど起こらない
  • 地絡事故時の相電圧が√3倍になり電圧上昇が大きい
  • 低電圧・短距離配電線向き(33kV以下)
  • 高電圧・長距離送電に不向き
  • 地絡事故電流検出が困難で、各種地絡リレーを用いて検出を行う

地絡事故時の健全相電圧

 一線地絡事故が発生したときは事故電流がほとんど流れないため、線間電圧は事故の影響を受けない。このため、事故相が大地電圧となり中性点電圧が事故相の分上昇し、健全相の相電圧は線間電圧がそのまま反映されることになる。すなわち、事故後の健全相の相電圧は電源電圧が対象三相の場合は事故前の√3倍となるが、更に大きな電圧が発生する場合もある。

地絡事故の検出方法

 一線地絡事故が発生した場合、中性点に電流が流れないため、事故電流は健全相と対地間の浮遊容量を介して流れる小さな大地帰路電流となる。一線地絡事故が発生したときは事故電流が小さく、通常の運用電流以下であるため、過電流リレーや方向距離リレーによる事故検出は不可能であり、地絡過電圧リレー、地絡方向リレーにより検出される。
 一般に、多回線配電線路では地絡保護に地絡方向継電器が用いられる。これは、故障時に故障線路と健全線路における地絡電流が逆位相となることを利用し、故障回線を選択するためである。

計器用変圧器による地絡検出

 しかし、通常、配電用変電所において配電線保護として零相電圧検出を行うため、零相電圧検出用の計器用変圧器が設置されており、その二次あるいは三次側Δ結線の開放端に地絡方向リレーの適正動作と異常電圧防止を兼ねて数十[Ω]程度の制限抵抗が接続されるので、一次側に換算すると5 000~10 000[Ω]の高抵抗接地となる。

抵抗接地方式

154kVの送電系統に適用される。

抵抗接地系統では事故点までの線路、中性点接地抵抗、事故点抵抗による閉回路が構成されるため、大きな電流が流れる。接地電流検出は過電流リレーや方向距離リレーを含む各種のリレーが機能する。

一線地絡事故が発生したときは、中性点の電圧上昇は事故電流と中性点接地抵抗の積によって与えられる値となるため、健全相の相電圧上昇は、接地抵抗値を小さくすることで抑えられる。

一線地絡事故が発生したときは、大きな事故電流が大地帰路電流として流れるため、誘導障害が発生する可能性がある。

抵抗接地方式について、直接接地方式と比較した場合の長所、短所

(長所)

  1. 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ、地絡故障時の電流が小さいため、通信線に対する電磁誘導障害が少ない。
  2. 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ、地絡故障時の電流が小さいため、機器や故障点に与える機械的ショックが小さい。
  3. 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ、地絡故障時の過渡安定度が大きい。

(短所)

  1. 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ、地絡時の健全相の電圧上昇が大きく線路や機器の絶縁レベルを高くとる必要がある(低減できない)。
  2. 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ、接地機器の価格が高い。
  3. 抵抗接地方式は事故時の地絡電流を抑制するので、地絡リレーの事故検出機能は直接接地方式に比べ低い。

直接接地方式

1線地絡時、大きな地絡電流が流れるため、通信線への電磁誘導障害の影響が最も大きい。一方で健全相の対地電圧の上昇は少ない。電圧及び送電線地上高が高く、市街地を通ることも少ない基幹送電系統に採用される。

消弧リアクトル接地方式

線路を遮断せず、そのまま電力の供給を続けることができる。
1線地絡時に故障点から大地を通って、対地静電容量に流れ込む電流を打ち消すようなインダクタンスをもつ消弧リアクトルを中性点に設置し並列共振回路とすることで、地絡故障時のアークを早期に消弧し、送電の継続を可能とする。